岡田斗司夫プレミアムブロマガ 2018/11/12

おはよう! 岡田斗司夫です。

今回は、2018/11/04配信「『紅の豚』ポルコはなぜ豚になったのか?最後、ポルコはどうなったのか?」の内容をご紹介します。
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2018/11/04の内容一覧


なぜポルコは、万全の準備をして電話を待っていた?

 では、これから『紅の豚』冒頭の10分を、90分以上かけて徹底解説します。

 さっきも話した通り、この作品は、もともとJALの国際線の中で上映される短編映画として作られる予定だったので、「疲れて脳みそが豆腐になったオジサンを楽しませる」といったものでした。
 なので「そういったオジサンの好きそうな「ちょっとエッチなコント」を見るんだ」という目線で、この冒頭10分を見ると、かなりわかりやすくなると思います。

(中略)

 さて、そんな中、電話が掛かってきます。
(パネルを見せる)
 ジリリリーンと鳴って「ポルコ、大変だ!」という電話が掛かってくるんですけども。

 この電話も不思議なんですよね。
 もちろん、電線で繋がってるんですけど。この時代、海底ケーブルなんか通ってるはずがないし、こんな無人島に無線電話のアンテナがあるというのも変なんです。

 これ、僕がもともと電話屋さんに勤めていたというタクシーの運ちゃんから聞いた話なんですけど。
 ここで描かれているような、昔のクランク式の電話の仕組みがどうなっているのかというと。あのグルグル回すのは「発電機」なんですね。
 では、この発電機の電力がどこに繋がっているのかというと、自分の電話じゃないんですよ。発電機は「交換手」に繋がっているんですよね。自分の電話をグルグル回すと、その電力によって、遠く離れた場所にいる交換手のベルがチリンと鳴って、ランプがパッと点くそうなんですよ。
 すると、交換手が出て「はい、何ですか?」と言うと、掛けた本人が「〇〇番にお願いします」と言う。そうすると交換手は「じゃあ繋ぎます」と言って、次に呼び出しボタンというのを交換手が押すんです。
 すると今度は、交換手の押したボタンから電気が流れて、その電力によって、電話を受ける相手の家の電話機の中にベルがチリリンと鳴る。
 これ、どういう意味かというと、この時代の電話機の中には、電話機自体を動かす動力源は1つも入っていないんですよね。「自分で発電機を回して「相手のベル」を鳴らす」か、または「相手の電力で自分の電話のベルがジリリンと鳴る」かのどっちかなんですよ。

 ということは、ですよ?
 ポルコの隠れ家の電話機がジリリンと鳴るということは「遠く離れた交換手の元から電気が流れてきた」ということなんですよ。なので「やっぱり、海底ケーブルなの?」という話になるんですけども。
 これね、まったくわからないんですよ。だから、説明できる人がいたら、是非、僕に教えてください(笑)。ちなみに、僕が話を聞いた元・電話局で働いていたタクシーの運転手さんは、もう70を超えてたんですけど。
 ジーナのいる「ホテル・アドリアーノ」にも電話あるんですけど、たぶん、あれは無線基地局があの島にあるので、問題ないと思うんですけど。ポルコの隠れ家の電話だけは、謎なんですね。

 さて、電話に出ると「ポルコ・ロッソ、すぐ飛んでくれ! 「マンマユート団」が出たんだ!」と言われます。
 すると、受話器を取ったポルコは、それを寝たまま聞きながら、足で机をズズッと近くへ持ってくるという、なかなか良いシーンなんですけど。
(パネルを見せる)
 注目して欲しいのは「ポルコは手袋までしている」というところなんですよね。ネクタイだけじゃなく手袋までしてる。ちょっと変だと思いませんか?

 これについても、最初は「ポルコ・ロッソというのは、僕らが思ってるより仕事熱心なのかな?」って思ったんですよ。
 なぜかというと、ポルコは「マンマユート? 安い仕事はやらないぜ」なんて答えながら、足で机を近くに引きずり寄せて、ラジオを切るんです。もう、「待ってました」とばかりに、この仕事にやる気満々なんですよ。
 おまけに、キッチリ航空服を着込んで、シャツにネクタイまで締めて、手袋までして、フル装備。
 「いや、単にいつもこういう格好をしているだけなんじゃないか?」と思うかもしれません。でも、ポルコは果たして普段からこんな戦闘服を着て、用意バッチリで昼寝しているような男なのかといったら、全然そうじゃないんですよね。
(パネルを見せる)
 これが、後に出てくるポルコの普段着なんですよ。タンクトップにショートパンツというだらしない格好なんですよね(笑)。

 つまり、この冒頭の隠れ家でのシーンで、ポルコは「もうすぐ出撃要請の電話が掛かってくる」ということがわかっていたということなんですね。
 それを知っていたから、戦闘服を着て、ネクタイを締めて、手袋までして、そして、なぜか浜辺にバスタオルを敷き、シャンパンまで用意して、電話を待っていたんです。
 「しかし、ポルコの予想よりずいぶんと電話が掛かってるのが遅かったから、いつの間にか寝てしまった」というのが、このシーンの真相なんだと思います。

 電話の主から「ベニスからのチャーター船が狙われている。鉱山銀行の給料を積んでるんだ」と言うと、ポルコは「それだけか?」と聞き返します。
 すると、相手は「いや、その……」と言いにくそうに「バカンスツアーの女学校の生徒達が乗ってるんだ」と言うんです。
 その言葉を聞くと、ポルコすごく嬉しそうに「そいつはチト高くつくぜ」と、ニヤッと笑うんですね。もう、実に嬉しそう。「その知らせを待っていた!」という感じなんですね。

 なぜポルコは、すでに出撃用の戦闘服を着込んでいて、シャンパンまで用意して、ネクタイと手袋までしていたのかというと、この段階ではいくつか可能性があるんですよ。
 例えば、1番。「マンマユート団にスパイがいる」。チャーター船を襲ったマンマユート団の中に内通者がいて、ポルコに予め知らせてた。
 2番は「SOSの無線を傍受してた」。だから、ベニスからのチャーター船がSOSを打った時点で、ポルコは無線を聞いて事件を知っていた。
 3番は「出撃を要請してくる組織自体にポルコの味方がいて、先に情報をくれた」。
 4番は「あいつらマンマユート団は貧乏でバカだから、そろそろ誰か襲うだろう」と思ってた。
 まあ、普通に考えたら、これくらいの選択肢になると思うんですけども。

 僕が思うに、一番可能性が高いのは「ベニスからのチャーター船に、鉱山会社の給料である大量の金貨が載ってることと、女子大生が乗っているという情報を知っていたから」なんですよ。
 そして、「バカンスツアーの女学生」と言われたもんだから、たぶんポルコは反射的に「女子大生」と考えてるんですね。

(続きはアーカイブサイトでご覧ください)

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