岡田斗司夫プレミアムブロマガ 2019/01/29

おはよう! 岡田斗司夫です。

今回は、2019/01/06配信「【風の谷のナウシカ】巨神兵の強さの秘密、風使いとは何かなど、風の谷の歴史や地理をふまえて大考察!」の内容をご紹介します。
岡田斗司夫アーカイブチャンネルの会員は、限定放送を含むニコ生ゼミの動画およびテキスト、Webコラムやインタビュー記事、過去のイベント動画などのコンテンツをアーカイブサイトで自由にご覧いただけます。
サイトにアクセスするためのパスワードは、メール末尾に記載しています(2018年12月1日より新サイトに移行しURLが変更されました。これに伴い、ログイン画面も変更されています。詳しくはメール末尾の注意事項をご覧ください)
(※ご注意:アーカイブサイトにアクセスするためには、この「メルマガ専用 岡田斗司夫アーカイブ」、「岡田斗司夫 独演・講義チャンネル」、DMMオンラインサロン「岡田斗司夫ゼミ室」のいずれかの会員である必要があります。チャンネルに入会せずに過去のメルマガを単品購入されてもアーカイブサイトはご利用いただけませんのでご注意ください)

2019/01/06の内容一覧


石器時代にまで退化してしまった文明

 さっきも言った通り、この世界には、もう鉄は存在していないんです。
 なぜかというと、すべての素材は大昔にセラミックに置き換えられているからなんですね。鉄とかそういう素材は既に堀り尽くされていて、すべてセラミックに焼き替えられているんです。

 ここで言うセラミックというのは「スーパーセラミック」という、宮崎駿が設定した架空の素材なんですけど。
 このスーパーセラミックというのは、僕らが今、考えているような陶器ではなくて「どんな薄さであろうとも、どんな強さであろうとも、どんな柔らかさであろうとも自由自在に再現できる夢の素材」なんです。
 だから、これが発見された未来の世界では、誰も代わりになる材質を探したり使ったりすることを考えなくなってしまったんですね。
 宮崎駿は、これを指して「セラミック文明」と言っています。本当に、着てるものから何からすべてがセラミックで作られるようになってしまったんです。

 これ、何かというと、僕らの「石油文明」の置き換えなんですね。
 かつて150年くらい前まではまったく存在しなかったプラスチックとか石油製品というものが僕らの生活の中に入るようになり、今や、僕らは木綿の服を着てるような気がしてても、その中には印刷素材として石油製のインクというものが使われていたりと、とにかく、生活のありとあらゆるところに石油が使われるようになっています。
 これが僕らの文明なんですけど、宮崎駿が考えた未来というのは、それがさらに進化していて、すべてのものがセラミックで作られるようになり、それがあまりにも便利だから、もう柔らかさであろうと、硬さであろうと、色であろうと、耐久性であろうと、あらゆる点においてセラミックが最高なものだから、「他の素材なんかもう使わなくていい」となってしまっているんです。
 そして、このスーパーセラミックを作る過程において、現実のセラミックのように「粘土から焼く」というだけではなく、いろんな素材からもセラミックが作られるようになったもんだから、それまでにあった普通の木材とか鉄という当たり前のものも、すべてセラミックに焼き替えられてしまった。
 なので、この世界には、実はセラミック以外の資源というのはまったくなくなってしまっているんです。ただ、セラミックだけがいっぱいあるだけで。
 もちろん、その破片から、もう一度セラミックを作る技術があれば、それでも構わないんですけど。一旦、セラミックを再生する技術が崩壊してしまった後なので、「リサイクル不可能なセラミックしかない世界」というのが生まれてしまったんですね。
 その砂漠が延々と広がっているという、もう、まったく引き返しがつかない世界が来てしまっているわけです。

 なので、風の谷にある金属の金具に見える部品、例えば、風車とかに使われている金具に見える部品も、だいたいすべて、かつてセラミックだった塊から削り出して作ったものが多いんです。
 『ナウシカ』の世界では、新たに作ったものというのが、すごい無骨な形をしてるんです。それはなぜかというと、鉄とか真鍮のような扱いやすい金属というのが、もうまったくなくなってしまっているからなんですね。
 そうではなくて、掘り出したもの、例えば風の谷の「ガンシップ」とか、後に出てくるペジテやトルメキアの大型の船をそのまま使うことはあるんですけど。そういうものでも、一度修理することになったら、そのための部品は、もう一からセラミックの塊を似たような形に削り出すしかない。それ以外に、素材なんてないからですね。

 この蟲除けの塔というのは、産業文明が崩時する前には存在していなかったものなんですよ。当時は蟲もいなかったので。
 なので、ゼロから作り出さなきゃいけなかった。
 そうすると、もう風の谷は、ぶっちゃけ、一度、石器時代に戻るしかなかったわけですね。もう、小石を積み上げて、この塔を作っているんですよ。
 たしかに、風車の部品とかそういうものは、なんとか残っていたものとか、もしくは風の谷に生えている木とかで、ある程度は作れたりするし、あとはセラミックの破片を削ったりできるんですけど。土台の部分はすべて、砕け散ったセラミックの小石を積み上げて、石器時代に戻って塔を作っているわけですね。
 風の谷の建物が、レンガや土とか石で出来ているのはそのためなんですね。一度、石器時代に戻ってしまったから。

 これは大袈裟な話ではなくて、ヨーロッパを科学文明で支配したローマ帝国が崩壊した後、ヨーロッパ全体が一気に石器時代まで退化してしまったという歴史的事実がモデルになっているんです。
 すみません、ちょっと面倒くさい話になっちゃうんですけど。ローマ水道とか大理石の建物で有名なローマ文明というのが、かつてヨーロッパにあったんです。しかし、このローマ文明の維持には膨大な森林資源が必要だったんですね。
 そして、このローマ帝国は、ヨーロッパ中の森林、森の木を500年あまりで切り尽くしてしまいました。
 もちろん、ローマ帝国というのは異民族の侵入で滅んだんですけども、一旦、文明が滅んでしまうと、その後、誰も水道とか大理石の建物を修理することができなくなったんですよ。もう、どうやってやって作ったのかわからないし、基礎となる森林もなければ材木もなくなっちゃったので。こうなると、木で建物を作っていた時代にすら戻れないんですね。
 だから、ローマ文明が崩壊した後、およそ千年近く、ヨーロッパ全体はほとんど石器時代に近い段階まで戻されたところもあれば、なんとか騙し騙しながら、かつての水準を保とうとしているところもあったんですけども。再び森が復活して、ルネッサンスが始まるまで「暗黒の中世」と呼ばれるような時代が続きました。

 風の谷も同じなんですよ。
 現代を生きる僕らは、スマホがないと何もできなくなっちゃってますよね? 同じように、セラミック技術とか遺伝子工学で作られた生物の助けなしには、もう、今から800年後の人間は生きていけなくなったわけですね。
 その文明崩壊から千年経って、ようやっと風の谷の人達は、ポスト・セラミック時代を終えて、石器時代よりはちょっとマシな時代に移行している。
 『風の谷のナウシカ』というのは、そういう時代を描いているんです。それが、この蟲除けの塔の石造りの構造からわかるわけですね。

(続きはアーカイブサイトでご覧ください)

アーカイブサイトへのアクセス方法

限定放送を含むニコ生ゼミの動画およびテキスト、Webコラムやインタビュー記事、過去のイベント動画など、岡田斗司夫のコンテンツを下記のアーカイブサイトからご覧いただけます。