岡田斗司夫プレミアムブロマガ 2019/02/19

おはよう! 岡田斗司夫です。

今回は、2019/01/20配信「『攻殻機動隊』講義~マンガ版第0-1話を徹底的に語る」の内容をご紹介します。
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2019/01/20の内容一覧


『攻殻機動隊』講義 第2回 第1話「PROLOGUE」前半3ページ

 (『攻殻機動隊』を)ヤングマガジンに連載した時は、「政府の洗脳施設に忍び込む」という話から始めるんですけど。単行本ではその前に「なんでそんなことをすることになったのか?」という話を描き足したんですね。
 実は、そういう政府の洗脳施設以外にも、日本国は貧乏な国に対して、そういった奴隷労働施設をいっぱい作ろうとしている。そのために、それらの国に、ニューロチップではなく、シリコンチップの普通のコンピューターをばら撒いて、低賃金労働者として、ネット接続させずに、民主主義運動なんかをさせないように操ろうとしている。
 そんな日本人たちと、「これに協力することで、そういう国が分離独立しようと思わなくなれば、貴族の国としては都合がよくなるな」と考えるソ連のやり取りというのが、この短いセリフの中にギューっと入ってるんですね(笑)。

 これを、荒巻部長は「悪巧みをしているな」と聞いている。「どうも、こいつらは前の首相の暗殺にも関わっているようだ」ということで、突入しようとしている。
 そして、さらに、また別のルートから出てきた「少佐」と呼ばれるヤツらは、そんな荒巻部長たちを盗聴しています。

 なぜ、荒牧たちを盗聴しているとわかるのかと言うと、「少佐、公安が準備完了したぜ」というセリフに対して、草薙素子は「うるさいな。わかってるって」と答えている。
 なんで「わかってるって」なのかというと、このコマの草薙素子のバイザーに注目してください。青いバイザーの中に、ちょっとだけオレンジの色が見えます。
 このオレンジ色は何かと言うと、実はさっきのページの「窓を透過して覗いているコマ」なんです。
 つまり、ここでの草薙素子は、荒巻部長が見ている映像を、そのまま見ているんですね。
 それに対して、草薙素子の部下は、公安の無線を傍受しているだけ。すでに、この部下と草薙素子の間には、情報収集能力において圧倒的な差があるというのが、ここからわかります。

 それを指し示しているのが、この「わかってるって」というセリフと、バイザーにチラリと映っている絵なんですけど。
 いいでしょ? 『攻殻機動隊』。いじわるで(笑)。

 こういった一連のセリフ、「分離独立を許さない~」とか、「貴族の国、奴隷の国~」というのを、なんとなく悪者っぽいセリフとして描いているようにみえるんですよ。
 だけど、実は作者は、この『攻殻機動隊』の後のエピソードで「貧乏な人達をどのように支配するのか?」とか、もしくは「首相が殺されてしまったことに対して、なぜ日本の政府は一致団結して戦わないのかというと、ただ単に政権争いに破れただけだからだ」という視点を持って語っています。

 そして、そんな中で「正義が何かわからない」ということに対する、荒巻の怒りと草薙素子の怒りというのを、それぞれ別物として捉えているんですね。
 「こういったヤツらに対して、どのようにオトシマエをつけようか?」という、草薙素子と荒巻、それぞれの差が、初期の『攻殻機動隊』の荒巻と草薙、この2人の対立を生んでます。
 この2人は、お話の前半ではまったく信頼せずに、お互いを疑っているんですね。
 それはなぜかというと、荒巻にしてみれば、この草薙素子というのは「テロリストとそんなに変わらないヤツ」なんです。草薙素子からしてみれば、この荒巻というのは「所詮は腐った政治家達の一味」であって、「自分達はテロリストかもしれないけど、正義のために動こうとしている。そんな人間を権力で操ろうとしている悪いヤツ」なんですね。
 これは後のエピソードで出てくることなんですけど、この「PROLOGUE」では、あえて対立する存在としてそれを強調しています。
 と、同時に、草薙素子とその部下との関係についても「情報収集能力や、戦闘力に関して、ものすごく差がある」ということを見せています。

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