岡田斗司夫プレミアムブロマガ 2019/03/14

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 この記事は、SBクリエイティブから発売された岡田斗司夫の『スター・ウォーズに学ぶ「国家・正義・民主主義」 岡田斗司夫の空想政治教室』から、一部抜粋してお届けします。

銀河帝国で文明は衰退していった

 今度は、エピソード1、2、3に続く歴史としてエピソード4を見てみましょう。
 エピソード4から見始めると気づきにくいのですが、エピソード1~3を見たあとでエピソード4を見ると何か感じないでしょうか?
 あらゆるモノがショボくなっているんですよ。
 エピソード1から3に登場した宇宙船はみんなピカピカしていましたが、エピソード4だと民間や反乱軍の宇宙船はどれも薄汚れていてボロボロです。辺境にある砂漠の惑星タトゥイーンにしても、エピソード1ではポッドレースが開催されてたくさんの人がやって来ていたのに、エピソード4ではそういうイベントもなく、ルークはもっと都会に行きたくてしょうがない。
 これは、エピソード4の製作時期が古いからとか、エピソード4の頃はCG技術が未熟だったからとかそういうことではなく、エピソード3からエピソード4の間に文明が衰退したことを示唆しています。
 銀河帝国の運営がうまく行っていないことを一番端的に表しているのは、デス・スターでしょう。
 デス・スターは帝国が持つ力の象徴のように描かれていますが、冷静に考えればあれは究極のダメ兵器です。銀河帝国内の惑星や、資源、そこに暮らしている人々などはすべて帝国にとって貴重なリソースのはずです。そんな貴重なリソースを、一発で根こそぎ破壊するような兵器を作っている。ゴキブリが出たときの駆除剤があまりに強力で自分の家を燃やしてしまうようなもので、デス・スターは何の問題解決にもなっていないんですね。
 エピソード3で、パルパティーンは意のままに操れる膨大な数のクローン兵団を手に入れ、さらにジェダイもほとんど皆殺しにし、元老院からは実権を奪いました。パルパティーンの邪魔をするものはほとんど何もありません。
 それなのに、銀河帝国は反乱軍とのはてしない内戦状態に入ってしまいました。内戦が続いているということは、もう銀河帝国の負け。戦っている相手は自分の支配下にある国民なわけですから、勝っても負けても損。デス・スターなんかを使わないといけない時点で、銀河皇帝の負けは確定していたんです。
 だけど、パルパティーンのやろうとしていたことが悪かったのかといえば、そんなことはないと思います。パルパティーンは私利私欲から銀河皇帝になったわけではありません。先にも述べたように、彼は銀河共和国の非効率さに我慢ならなかったんでしょう。
 銀河共和国の元老院は、銀河中から惑星などの代表が集まって議論を行うけれど、議員が多すぎていっこうに物事が進まない。
 ジェダイたちの評議会は公正・中立な諮問機関という建前になっているけれど、仲間内で物事を決めていて、外からは何をやっているのかよくわからない。彼らが従っているフォースの教えは、古代中国でいう「徳」みたいなものでしょう。徳のある人間が困っている人たちのところに赴いて正義を全うするというのが、銀河共和国時代におけるジェダイのありようですが、エピソード1から3のあたりではもうそれがうまく行かなくなっています。フォースの強いジェダイを育てて惑星の運営を手助けするというやり方は、惑星の数が少ないうちはよかったのでしょうが、全銀河の平和を守るには無理があります。だからこそ、意のままになる強力なクローン兵団が登場した時、ヨーダもこれを使う誘惑に逆らえなかったわけです。
 パルパティーンは権力を一手に集中させることで政治の効率を高め、欲望を肯定して自由競争の世界を作ろうとしました。有能な者はどんどん抜擢し、スピード優先で帝国を運営しようとしたんです。これはアメリカの仕組みと似ていますよね。能力の優れた者を大統領にして権力を集中させ、国政を任せます。パルパティーンもダースベイダーを後継者と見なしていて、血の継承には拘っていなかったようですし。
 ジェダイたちは、フォースのダークサイドだと言ってパルパティーンを批判します。確かにパルパティーンは権力を奪取するためにフォースのダークサイドを利用しましたが、それで銀河を支配しようとしたわけではありません。彼がやったのは、人間の欲望の肯定です。人々が強い欲望を持って互いに競争し、能力のある者が勝つ。貿易などについても、共和国が行っていたような余計な規制は取っ払って、自由に競争させる。そうやって経済も活性化させてようとしたんでしょう。


 この記事は、SBクリエイティブから発売された岡田斗司夫の『スター・ウォーズに学ぶ「国家・正義・民主主義」 岡田斗司夫の空想政治教室』からお届けしました。

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