岡田斗司夫プレミアムブロマガ 2019/04/25
おはよう! 岡田斗司夫です。
今回は、2019/04/14配信「『風立ちぬ』作品内で宮崎駿がカミングアウト!「自分は、きれいな女の子がいたら必ずチラチラ見てしまうような男だ!」」の内容をご紹介します。
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2019/04/14の内容一覧
- 『風立ちぬ』完全解説
- 風が起きた
- ファーストシーン・失われるもの
- 太陽の表現
- 客観的なファンタジー
- 手が届く女の子
- 『リトル・ニモ』
- 眼鏡差別
- 二郎の上から目線
- 丘の向こうは地獄
- 自分が加害者の側に立つ事実
- 主人公を誘う悪魔、『ファウスト』の世界
- 菜穂子との出会い
- 質問:なぜ『風立ちぬ』で汽車が多く描かれているのか?
- 放課後・アーカイブの使い方
- 放課後雑談
風が起きた
それでは、『風立ちぬ』完全解説その1ですね。
これは「風立ちぬ」というタイトルが出てくるところなんですけど。この「風立ちぬ」という言葉の意味は、言うまでもなく、次に画面に表れるポール・ヴァレリーの詩の引用です。
(パネルを見せる)
「風立ちぬ いざ生きめやも」と出てきます。ここで、宮崎駿は「ヴァレリーの詩の引用」というだけではなく、「堀辰雄という小説家の翻訳だ」ということを、わざわざ載せているんですね。
「風立ちぬ いざ生きめやも」というのは、「風が起きた。それでも生きなければいけない」という意味なんですけど。これと同じ詩は、堀辰雄の小説『風立ちぬ』の「序曲」という部分に出てくるんです。
「風立ちぬ いざ生きめやも」という言葉が含める全体の文章というのがあります。やや長いので、僕流にキュッと縮めて紹介します。
風が起きて、描きかけの絵を載せたイーゼル(絵を立てる台)が倒れてしまった。
私はお前に「離れるな。離れてくれるな」と言ってしがみついた。
お前は私の好きにさせた。
「風立ちぬそれでも生きなければ」ふと、そんな言葉が私の口から出てしまった。
この序曲というのは、言うまでもなく、『風立ちぬ』という映画の全体像になっているんですね。
堀辰雄の小説において、この「イーゼルが風で倒れる」というのは「やがて恋人である彼女が死んでしまう」という前兆なんです。そんな死んでしまう女の子に対して、「俺の元から離れないでくれ」と、腕を掴んで行かせないようにする男。女はそれをやりたいようにさせている。
そして、そこで口から出てきたのが「そういうことがあっても、私はまだ生きなければいけない」という言葉だったという、そういう話なんですよ。
つまり、この部分がわかっていると、映画の中盤、軽井沢の高原で風がビューっと吹いて、菜穂子が描いている絵のイーゼルがバタンと倒れるところで「ああ、この子は死ぬ運命にあるんだ」とわかる。
そんなふうに、宮崎駿は作っているわけですね。
これを、一番最初の数秒間で「はい、わかる人にはわかるでしょ?」というふうに出しているわけですよ。
「風立ちぬ いざ生きめやも」という言葉だけ伝えたいんだったら「作詞:ポール・ヴァレリー」って書くだけでいいんですね。それをわざわざ「訳:堀辰雄」と書いているのは「これから始まるお話は、堀辰雄の『風立ちぬ』に沿って展開します」というサインだからなんです。
まあ「そんなこと言われてもわからない」って思うよね? いつものことだよ。わからないと思うのが普通です。
ところが、この『続・風の帰る場所』という本の234ページで、宮崎駿はついに本音でエゲツないことを言い出しているんです(笑)。
通じない人には何も通じない。もう本当に無教養ですからね! 歴史感覚なし! 何も知らない! 「ダメだ、こいつら」って。
もう本当に無知蒙昧、覚悟も教養もない!
なんでしょうねぇ、この教養のなさは。
宇宙戦艦とか怪獣ならわかりますみたいな。自分の頃はもっと努力したと思ったんだけどな。
……とかって言いながら、この後、思わずすぐに反省に入って、「いやしかし、よく考えたら僕の頃もみんな勉強してなかった。やってたのは高畑さんくらいでした」っていう変なオチが入るんですけども(笑)。
(続きはアーカイブサイトでご覧ください)
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