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岡田斗司夫プレミアムブロマガ「『未来のミライ』がジブリになり損ねた理由教えます」
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岡田斗司夫プレミアムブロマガ「『未来のミライ』がジブリになり損ねた理由教えます」

2019-07-31 07:00

    岡田斗司夫プレミアムブロマガ 2019/07/31

     今日は、2019/07/14配信の岡田斗司夫ゼミ「『進撃の巨人』特集〜実在した巨人・考古学スキャンダルと「ウォール・ローゼから外を見ると何が見えるのか問題」」からハイライトをお届けします。


     岡田斗司夫ゼミ・プレミアムでは、毎週火曜は夜8時から「アニメ・マンガ夜話」生放送+講義動画を配信します。毎週日曜は夜8時から「岡田斗司夫ゼミ」を生放送。ゼミ後の放課後雑談は「岡田斗司夫ゼミ・プレミアム」のみの配信になります。またプレミアム会員は、限定放送を含むニコ生ゼミの動画およびテキスト、Webコラムやインタビュー記事、過去のイベント動画などのコンテンツをアーカイブサイトで自由にご覧いただけます。
     サイトにアクセスするためのパスワードは、メール末尾に記載しています。
    (※ご注意:アーカイブサイトにアクセスするためには、この「岡田斗司夫ゼミ・プレミアム」、「岡田斗司夫の個人教授」、DMMオンラインサロン「岡田斗司夫ゼミ室」のいずれかの会員である必要があります。チャンネルに入会せずに過去のメルマガを単品購入されてもアーカイブサイトはご利用いただけませんのでご注意ください)


    (録画映像開始)

    nico_190714_02259.jpg【画像】スタジオから

     『未来のミライ』って金持ちの家庭が舞台なんですよ。
     「あれは細田監督の生活だ」と思っている人がわりといるんですけど、とんでもない! 細田監督の程度の収入では、あんな生活は無理なんですよ。……細田監督、すみません(笑)。

    (オモチャを見せながら)

    nico_190714_02326.jpg【画像】ネフスピール

     例えば、これはスイスのネフ社が作っているネフスピールという積み木です。
     こんなカラフルな積み木なんですよ。独特な形をしていて、どんな組み合わせ方をしても積めるという積み木なんです。このネフスピールが、主人公のくんちゃんの家にあるんですけど。
     これ、実は1箱で2万円もするんですよ。積み木なのに。
     僕、映画館で見ていてビックリしたんですけど、主人公のくんちゃんという4歳児の家に、この積木がトミカとかプラレールと一緒に平然と置いてあるんですよね。つまり「そういう家」だということがわかるんですよ。
     こんな生活、世帯収入1千万円でも、たぶん無理です。

    (別のオモチャを見せながら)

    nico_190714_02417.jpg【画像】キュボロ

     ここにもう1つあるのが、同じくスイスのキュボロ社のキュボロっていうオモチャです。
     これ、デパートとかで見たことがある人もいるかと思うんですけど、四角いブロックに溝が掘ってあって、その中を玉がコロコロ転がるというオモチャです。藤井聡太君という天才将棋指しがいますよね。彼が子供の頃に遊んでいたということで有名になったという知育玩具なんですけど。
     これなんて、色も着いていない、本当に白木の塊なんですよね。ただ、メチャクチャ精密に作ってあるんです。
     これ、1箱3万5千円もするんですよ。
     その上、パッケージを見たらわかる通り、これはあくまでもベーシックキットなんですよね。基本が出来るだけなんです。僕、一応、これの拡張版を持ってるんですけども。楽しく遊ぼうと思ったら、このベーシックに、さらに拡張版を買って、他にも、色の着いている積み木なんかを買わないと、なかなか楽しめないんです。
     これで楽しく遊ぶためには、だいたい10万円くらい掛かるんですよ。

     くんちゃんの家のおもちゃ箱には、こういうオモチャが山のように入ってるんですよね。
     「ちょっと待てよ! これは世帯収入が2千万円を超えてないと無理だぞ!」って思ったんですけど(笑)。

    「父親が斗司夫じゃないの?」(コメント)

     僕は自分の子供には、こんな高いオモチャは買いません! ディスカバリー号と同じく自分のためにしか買いませんから!(笑)

     だけど、「じゃあ、それがダメなのか?」というと。
     日本のアニメって、これまで散々「貧乏な家」を舞台にしてたんですよ。宮崎さんのアニメにしても、高畑さんのアニメにしても、貧乏な家か、もしくは庶民の家が多くて、金持ちの家を舞台にするアニメって珍しいんですよ。
     だから、「これはこれで面白いな」って思ったんですよね。
     トミカとかプラレールの他に、こんなオモチャをふんだんに与えられた4歳児のくんちゃんというのは、実はかなり賢い子供なんですね。そういった特徴は、実は、映画の中でも出てくるんです。

     『未来のミライ』というのは、実はかなり戦略的に作られた作品です。
     内容の戦略性は前回、「これは『千と千尋』のリメイクなんじゃないか?」という話をしました。この内容の戦略についての掘り下げに関しては、ちょっと後半で話します。
     ここで語るのはマーケティング戦略です。この『未来のミライ』って、マーケティング戦略に沿って作られているんですね。

     実は『未来のミライ』って、『クレヨンしんちゃん』の上位作品なんですよ。
     『クレヨンしんちゃん』がコンビニだとすると、『未来のミライ』っていうのは無印良品なんですね。
     「子供が無邪気な感じで周りの大人を巻き込んでいるように見えて、実は周りの大人たちが癒やされたり、トラウマが解決していく」という構造は、『クレヨンしんちゃん』の劇場版と全く同じなんです。
     それを上位変換して、いわゆるコンビニの商品から無印良品に高級化させたのが、『未来のミライ』なんですよ。
     これ、狙い目としては、メチャクチャいいんですよね。安くて、下品で、「子供はおバカなものです」という『クレヨンしんちゃん』に対して、『未来のミライ』というのは、高級で知的なんですよね。
     映像にも高級感が漂っているし、主人公のくんちゃんも、すごいワガママで嫌な子供に見えるんだけど、実は理屈はすごく通じてる。理屈がわかるからこそ、「やだやだ!」って言うわけですね。普通の4歳児だったら、あんなふうに大人に説得されても、何もわからないだけですから。

     4歳児のくんちゃんというのは、5歳のしんのすけを知的にした感じなんですよ。
     例えば、しんのすけは自立してて、親の言うことを聞かなくて、一人でどんどん行っちゃうんだけど。くんちゃんは、甘えん坊で、なかなか外に行かない。ずっとお母さんの近くにいる。
     しんちゃんはおバカでエッチなんだけども、くんちゃんというのは、どちらかというと知的で恥ずかしがりである。
     こんなふうに、対照的な性格に作られているんですね。

     劇場版クレヨンしんちゃんとの共通点でいうと、例えば『モーレツオトナ帝国』も、『あっぱれ戦国大合戦』もそうなんですけども、「無垢な存在としての子供が、大人に対して救いを与える」という構造になっているんですよ。
     前回は『千と千尋』に例えて話したんですけど、『クレヨンしんちゃん』と比較するともっとわかりやすいと思います。
     『クレヨンしんちゃん』の劇場版では、「しんのすけが無邪気に振る舞った結果、周囲の大人たちも、癒やされたり、本来の居場所に戻っていく」というような構造になってるんですけど、『未来のミライ』に出てくるくんちゃんも同じなんです。

     この映画では、飼い犬が人間化して「お前(くんちゃん)が生まれてきたおかげで、それまで家の中で、ずっと可愛がられていた犬の俺が、その座から引きずり降ろされた。次はお前の番だぜ」と言われるところから、くんちゃんに不思議な出来事が始まるんですけど。
     この出来事についても「飼い犬が言いたかったことを言ってスッとする」という構造になってるんですね。そうやって、それまで拗ねて生きていた飼い犬が、もう一度、家族の一員に戻ってくるんです。

     その次は、くんちゃんの妹のミライちゃんが、成長した高校生として「好きな人が出来たんだけど、雛祭りの人形をしまってくれないから、いつまでも自分が結婚できないかもしれない」という悩みを持って、未来からやって来るんです。
     で、くんちゃん達がこれを解決してあげることで、妹のどうにもならない思いというのも解決する。
     くんちゃんというのは、実は、物語の中で「いやいや!」って暴れているように見えて、周りの人間の拘りとか悩みを溶かしてあげているんです。

     例えば、母親は「弟と遊べなかった」という思いを持っていますし、曾祖父さんは「戦争で受けた傷によって、自分は結婚できないんじゃないか?」と悩んでいる。
     高校生になった未来の自分自身というのも出てくるんです。未来のくんちゃんは自分探しの旅という、わかりやすい家出の仕方をしようとしてたんですよ。
     そんな中で、子供のくんちゃんが代わりに電車に乗ってしまう。ところが、4歳児だから自分探しというのがわからないので、東京駅で不思議な存在から「あなたの存在を説明するものは何だ?」みたいなことを聞かれた時も「それは私の家族」みたいなことを言う。すると、急に繋がっていって、高校生の自分の悩みも解決される。
     父親も父親で、ベストを尽くせなかったという後悔があったのが、くんちゃんが一所懸命自転車に乗っているところを見て、過去のトラウマを解決する。
     こんなふうに、構造自体は、すごく上手く出来ているんですよ。

     こういった構造だけで言えば、明らかに『未来のミライ』は成功作なんですけど。
     ところが、それが上手く作動しないんですよね。

     なぜかというと、この映画を見る普通の人が期待するのは「くんちゃんの成長譚」なんですよ。
     でも、実際はそうじゃない。くんちゃんは、ただ単に触媒であって、「触媒としてのくんちゃんを通じて、バラバラになりかけていた家族が繋がりを取り戻す」というトリッキーな話なんです。
     だけど、前回も言った通り、1つ1つのエピソードが弱すぎて、この構造がわかりにくいんですよね。
     この、わかりにくい理由というのは、実はもう1つあるんですけど、それは後半で話します。

     細田監督のいる陣営が狙ったマーケットは、『ドラえもん』とか『クレヨンしんちゃん』であって、ジブリじゃないんですよね。
     だから、ジブリを期待して見に行くと、やっぱり、かなり違うことになります。


     はい、というわけで『未来のミライ』の話でした。
     やっぱり、金曜ロードショーで改めて見て思ったんですけど、『未来のミライ』って、本当に、紙一重ですごく面白くなりそうな作品だったのに、いろんな人の思惑を取り入れたのか、その辺の理由はわからないんですけど、アニメファンの心にはあんまり当たらなくなってるんですよ。
     じゃあ、その代わり、ファミリー層に当たるようなものになっているのかというと、たぶん、もうちょっとファンタジー的な要素が強くないとシンドかったんじゃないかなと思いました。

     あと、さっきのオモチャの件なんですけど。
     「岡田斗司夫は数万もするブロックを持ってるということは、年収2千万以上か」と聞かれたんですけど、こんな商売で2千万もあるはずないじゃないですか!(笑)
     僕は、本当はベーシックキットしか持っていません。そのベーシックを買う時にも、「流石にこれはどうかな?」と悩んだくらいで、大切に大切に遊んでおります。

     ということで、以上で『未来のミライ』の話は終わります。


    記事全文は、アーカイブサイトでお読みいただけます。

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