岡田斗司夫プレミアムブロマガ 2019/10/04

 今日は、2019/09/15配信の岡田斗司夫ゼミ「『Dr.STONE』の元ネタ『この世界が消えたあとの科学文明のつくりかた』徹底解説!」からハイライトをお届けします。


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 ここからは「人類消滅後の世界あるある」ですね。
 「人類が消滅して自分しか残らなかったら、一体どうなるのか?」に関するあるあるを、ちょっと考えてみたいと思います。
 ある日、自分以外の人間が街からいなくなってしまった。「自分しかいなくなったのか? それとも他の生き残りがいるのか?」ということも、わからないような状況になった。だとすると、どうするのか?
 消滅後のあるあるとしては、よく僕が昔、妄想したのは「豪邸とかホテルとか、すごく良いところを探して豊かな暮らしをする」ということ。今だったら、例えば、自己発電設備のあるような場所で、冷蔵の食品とか冷凍食品なんかを探して。まあ、1人だったら、一生住むのに困らないんじゃないかと考えていました。
 上手く行けば、ネットで自分以外の人間との連絡もつくだろうけど、しかし、何日かしたら、すぐにネット接続も切れちゃうと思うんですね。電気がなくなっちゃうと。
 そんな時、「他の人を探して会いに行く」という方法もあるし、逆に「誰かに会うとリスクがあるから会わない」という人もいる。
 あとは「食料とかを集めるんじゃなく、まず文明の結晶である本を集めよう」という人もいますね。「本を集めて知識を溜めておいたら後で強いだろう」と考える人もいる。
 対応はいろいろあると思うんですけど、まあ「誰かと会うのは嫌だし、持っている食料奪われたら嫌だ」と。そうじゃなくて、全部自分が持っていたら……この本『この世界が消えたあとの科学文明のつくりかた』(ルイス・ダートネル著 東郷えりか訳 河出書房新社 2015年)の中にもエデンの園と書いてあるんですけど。誰もいなくなった世界で文明の残りを集めるだけで、十分、エデンの園で生きていける、と。
 例えば、大きめのスーパーマーケットをたった1人で占領すると、1人あたり1日3000キロカロリーが必要だとしたら、大きめのスーパーマーケットがあれば、人間1人は55年間くらい生きて行ける。ペットフードまで含めれば63年間くらいは大丈夫。
 つまり、すぐに食べられなくなってしまう生鮮食品とかは置いといて、まあ、注意して暮らせば、自家発電設備もあれば、冷凍食品の保存もきけば、缶詰とかもあるので、だいたい普通の人間だったら55年、ペットフードまで手を出せば63年間は生きていける。エデンの園なわけですね。

・・・

 さあ、では、こう言う場合、どうしましょう? 2つ目のアンケートです。
 「世界で皆が消えてしまった。でも、他にも生き残りがいるかもしれない」という時に「1.連絡を取る・会いに行く」「2.連絡を取らない・孤立を選ぶ」。
 みんな、どういうふうに生きたいのかな? これね、僕もわからないんですよね。

「孤独を選ぶに決まってる」(コメント)
「1一択」(コメント)

 じゃあ、結果を出してください。……おお、半分半分くらいですね。面白いな。
 「連絡を取る・会いに行く」の人が、無料の方は55%。「連絡を取らない」が44%。プレミアムの方は「連絡を取る」のが43%で「孤立」を選ぶのが57%。ちょっとの差はあるんだけど、やっぱりこれもほぼ半分半分くらいになりましたね。

・・・

 じゃあ、どっちがいいのかというと。
 僕の好みというよりは、必然的なことを話しますけども、やっぱり1人では生きていけないというのがあるんですね。
 それは、この本『この世界が消えたあとの科学文明のつくりかた』の序章にも書いてあるんですけど。まず、豊かな暮らしというのは、やっているつもりでも終わりがあると。


そのあとには莫大な資源がまだ残されているに違いない。スーパーマーケットには充分な食品が貯蔵されたままになっているだろうし、人気のなくなったデパートの店舗からデザイナーズブランドの新しい上等な服をもちだすことも、これまでずっと夢に見ていたスポーツカーをショールームから失敬することも可能かもしれない。
放置された豪邸を見つけて、少しばかり家捜しをすれば、さほど苦労せずにもち運びのできるディーゼル発電機を何台か見つけて、照明、暖房、および家電を動かすために利用できるだろう。ガソリンスタンドの地下タンクには燃料が残っていて、かなりの期間、新たに手に入れた家や車を動かしつづけられるだろう。
それどころか、大破局の直後にはおそらく生き延びた小集団はかなり快適に暮らせるかもしれない。しばらくのあいだは、文明はみずからの勢いに乗って惰性で進みうるのだ。生存者は自由に手に入る資源の山に囲まれていることに気づくだろう。豊かなエデンの園だ。
だが、その楽園は腐りかけている。
食糧、衣服、医薬品、機械など技術から生まれた産物は、時とともに容赦なく腐食し、分解し、劣化し、退化する。生存者には猶予期間が与えられているに過ぎない。文明が崩壊し、主要なプロセス─原材料の収集、製錬、製造、輸送、流通─が突然停止したら、砂時計はひっくり返されたのであり、砂は着実に落ちてゆく。


 つまり、さっき言ったみたいに、スーパーマーケットの中で55年間とか63年間生きていたとしても、他のものがですね、徐々に徐々に失われていくわけですね。
 そして、もう1つの理由です。
 これ「どんなに情報を集めて、どんなに本があっても、自分自身に外科手術が出来るのかどうか?」という話なんですけど。


本棚から医学の教科書を引っ張りだして、専門用語や薬剤名だらけのページをめくったとしたら、何が理解できるだろうか? 大学の医学の教科書は、莫大な予備知識を前提としており、定評のある専門家による講義や実習と並行して使用することを意図して書かれている。
生存者の最初の世代に医師がいたとしても、使い方を訓練されてきた現代の大量の医薬品や試験結果なしには、なし遂げられることは大幅に限定される。薬は薬局の棚や、廃墟となった病院の冷蔵貯蔵室で劣化してしまうだろう。
こうした学術書の大半は、それ自体がおそらくは無人の都市で火事が無制限に広がることで失われるだろう。さらに悪いことに、毎年、生みだされる新しい知識の宝庫の大半は、僕ら科学者がつくりだし、研究のなかで利用されるものを含め、耐久性のある媒体にはまったく記録されていない。人間が理解していることの最先端は、主として一時的なデータとして存在する。専門誌のウェブサイトのサーバーに保管された学術「論文」として。
そして一般の読者向けの本などはほとんど役に立たないだろう。平均的な書店に並んでいるような類の本しかもはや手に入らない、生存者の一団を想像できるだろうか? 自己啓発本のページに書かれているような知恵から再建を試みたところで、文明はどこまでそれを実現できるのか? 経営の成功術とか、瘦せた自分をイメージするとか、あるいは異性のボディランゲージを読みとるためのハウツー本などで?


 その通りなんですね。
 「本は役に立つ」と思いがちなんですけども、実は、今、本屋に並んでいる本の大半、9割までが「今の文明が平和に続いている限り、ちょっと役に立ったり、ちょっと楽しくなったりするような本」なので、ゼロから生き残るための本というのは、サバイバル術みたいな本しかない。
 そのサバイバル術も、所詮は「今の社会をちょっと離れて野山で1人で生き残る」というような前提で書かれているので、やっぱり、20年、30年、40年という時間の流れを前提にしてないんですね。
 だから、生き残っている者達が集まって、お互いに知っていることを組み合わせて文明を守るしかないんですよ。

・・・

 もし、自分が人類の中で孤立して生き残ってしまって、他に生きているものもいるかもしれないとなったら、中学生や高校生くらいの時の僕だったら、絶対に人を探さなかったはずなんですね。
 自分の父親がそうだったように「核シェルターみたいなものを作って、食料を保存して、自分1人が暮らしていければいいや」と思ってたんですけど。
 やっぱりね、この本の中の後半の方にも書いてあるんですけど、そういう状況で1年2年生きられる人間は、すごく珍しいんですね。どんどん無気力になっていって、だいたい、最初の冬が来る頃に自殺してしまうというような心理実験結果も出ているんです。
 そんな環境の中で、たくましく生き伸びられないんですよ。特に「誰もいなくなったんだったら、俺一人で生きていこう」と思うような人であればあるほど、自殺みたいな方向に行っちゃうという感じが、僕にもやっぱりわかるんですよね。
 なので、やっぱり「集まって、自分達が知っていることを繋ぎ合わせる」というのが、一番良いと思うんですけど。
 まあ、そんな中で女の人と男の人が出会えたら、ひょっとしたら子孫を残せるかもわからない。
 じゃあ、そうやって、何十人かの集団が出来れば、やがてそれは数百人、数千人になって、文明は保存できるのか? いや、これが安心は出来ないんですよ。
 あのね、人類の大半がいなくなって、生き残りが集まってなんとか暮らして行ったとしても、50年くらい経ったら、それまでの文明の遺産は少なくなってくるんですね。
 消滅以前の文明社会を覚えている人間は、生き残り世代にしかいないんですよ。そして、おそらく、生き残りの世代が作った子供達の世代というのは、親が言うところのかつての文明には興味がないんですね。
 なので、「かつての文明を取り戻そう」ではなくて「いかに美味しいものを再発見するか?」とか「いかに冷凍されたものを再発見するのか?」という、かつての文明を見つけることばっかりに興味を持ってしまう。
 そんな状態が50年くらい続いた後、つまり、生産を全く考えず、消費のみの世代が50年間続いた後、そんな第2世代しか生きていない時に、僕らみたいな文明社会を知っている第1世代がバラバラと死んで行く。
 そんな中で、保存食料や石油がなくなってきたらどうなるのか? たぶん、100年後には、生き残り世代は全部死んでしまって、おそらく文字を読める人もほとんどいなくなる。つまり、溜めていた本も無駄になるんですね。
 こうなると、文明は完全に失われてしまいます。

・・・

 だったら、どうすればいいのか?
 ……いや、もうね、こんなことを考えてもしょうがないんですよ。「生き残った人間はどういうふうにすればいいのか?」って、別に、人類はまだ滅びてないから、そんなこと考えてもしょうがないんですけど。
 まあ、科学文明の第2シーズンを作るしかないと思うんですね。
 すでにあったものを集めて、それでなんとか食っていくことしか考えてなかったら、自分たちが死んだ後に残った世代が完全に消費しか覚えない。なので、なんとか生産という方法を教えなきゃいけない。
 これを、僕は「人類文明の第2シーズン」と呼んでいるんですけど。
 第2シーズンという言い方をすると、「いや、第3シーズンじゃないのか?」と「実は人類は一度、文明が頂点に達して滅びてしまって、今の文明は第3シーズン、第4シーズンじゃないか?」と言う人もいるんですけど。
 これは違うんですよね。今の地球には化石燃料がちゃんとあるから。
 化石燃料というのは、数億年前に作られたものを、産業革命以後にガーッと使い始めたんです。だから、もし、今から1万年前に科学文明があったとしたら、その時に化石燃料を使い尽くしてるはずなんですよ。
 「かつて、ローマ帝国が滅びた」ということも、中世の人たちにとっては言い伝えでしかなかったわけです。でも、ローマの存在には、見てわかる証拠があったんです。
 それが何かと言うと「自分では作らない石で出来た建造物」。もう1つは「原生林がヨーロッパに全く残ってない」ということなんですね。
 かつて、ヨーロッパには原生林の暗い森があったんですけど、ローマ時代にそれらを全て伐採して、植林した。その結果、綺麗な雑木林や里山しか、今のヨーロッパには残ってないんですね。
 ローマ人が原生林を全て切ってしまったから、今、雑木林になっている。これがローマ文明が存在した証拠なんですよ。
 同じように、僕らの文明より前に先史文明があったとしたら、そいつらが絶対に石油とか石炭を使い尽くしているはずなんですね。今の僕らが、ほぼ使い尽くしているのと同じように。
 でも、産業革命の時、石炭なんて、ちょっと掘ったら浅いところでいくらでも掘れたし、石油も少し掘ったらゴボゴボ出てきた。地球の文明で1万年くらい前に科学文明がなかったということが、これで反証的に証明できるんですけども。
 というわけで、この世界で自分以外の人間がいなくなったらどうなるのか? どうやったら人類文明の第2シーズンというのを作り出すことが出来るのか?
 残念ながら、無料放送はここまでです。ここから先は、人類が消滅しちゃったその瞬間から、その日の夜、次の日、1週間後、1ヶ月後、半年後に何が起きるのかということを、かなりリアルに予想して、そんな人類崩壊後の世界を、ちょっとブラタモリしてみようと思います。


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