コロナ禍により日米欧の金融政策(ゼロ金利政策)が揃いました。
 欧州では復興基金の創設により(平たく言えば)ドイツ政府が南欧諸国の財政を支える構図が出来ました。EU諸国の財政統一が一歩前進したことになり、南欧諸国の財政が安定することにもなろうかと思います。

 これら主要国が執るゼロ金利政策と無制限とも言えるQEにより先進国の金融市場に資金が流れ込んでいますが、日本の課題としては、米国にはインフレ期待があり日本には無いことです。欧州はその中間にあると思われます。米国ではFRB主導でインフレ目標を設定していますが、日銀は既に数年前にインフレ目標達成を諦めています。


 以前は日本にもインフレ期待があり、21世紀に入っても日銀は継続的にインフレ目標を定めていましたし、2013年からの黒田日銀総裁による大胆な金融政策とともに株式市場はインフレ期待によるデフレ脱却を期待しました。
 当初、黒田総裁は2年でのインフレ目標達成を目指したものの現実には物価が上がらず、インフレ期待は徐々に消えて行くことになります。
 日銀は結果として2016年9月にはインフレ目標を曖昧にし、そしてゼロ金利から抜け出すための出口戦略を放棄して?イールドカーブコントロールを採用せざるを得なくなりました。

 一方の米国ではインフレ期待があるからこそ金価格を押し上げ、株式市場にも資金が流れ込んでいますが、日本など他の株式市場はそこから溢れ出た資金によって少しだけ押し上げられていると考えるのが妥当かと思われます。


 このままでは米国市場も日本と同じ道を辿る懸念が出てきています。
 ゼロ金利(実質金利マイナス)になると金融政策だけでは物価押し上げ効果が乏しく、時間の経過と共に効果が剥落してくるからです。資金供給だけでは貸出増加への寄与が僅かであることは日銀の政策によっても明らかであり、株価にばかり影響する事も分かってきました。
 資産価格の上昇は景気押し上げに寄与しますが、一般消費者の購買力(可処分所得)が増えないことには中々正常なインフレには繋がりません。

 金融政策が限界を迎える中で、「景気低迷=歳入の減少」により財政政策までも行き詰ることは避けねばなりません。そのためにも経済を動かさねばならず、いつまでもコロナを理由に縮こまっている訳には行きません。これが各国政府の一番の悩みです。


 米国株式市場は9月3日から連日で下げましたが、今後はトレンドが出るにしても振れ幅が大きくなりそうです。いよいよ博打相場の仕上げが近いのか?
 考え方の一つとして、米国でのインフレへの期待が失われたとき、または失われる前後に米国株式相場も天井を打つのではないかと予想することも出来ます。


(街のコンサルタント)


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