全体相場波乱の中で先週目を引いた銘柄がアクセル(6730)である。

 同社は設立は1996年2月でその6年後の2002年にIPO。パチンコパチスロ機器向けグラフィックLSIや音源用LSIで現在も高い市場シェア(50%)を有しており、その優れた技術力が同社の収益力の源泉となっている。

 パチンコ産業は衰退産業のようにも言われるが、ホールの運営まで含めた市場規模は現在も約14兆円と最大のレジャー産業となっている。
 確かにホールの軒数は昨年度8458店舗と4年前の1万596軒(ピークは1995年の1万8244軒)から減少しており、連れてパチンコ・パチスロ遊技機の販売台数も減少傾向にあるが、2021年度は新規則移行で増加。今年度も拡大基調にあり店舗数は減少傾向にあっても大型化も背景にあって一定の市場規模を擁していると言える。

 そこでは来場者を楽しませるための新台の設置が絶えず行われており、遊技機メーカーも様々な工夫をこらしてホールに供給しながらビジネス展開を図っている。
 同社はそうした遊技機メーカーに画面や音での演出を行う半導体を提供してきた。シェア50%であることから来場者の2人に1人が同社の製品で楽しんでいる計算になる。

 これまでは衰退傾向にあるパチンコ・パチスロ業界相手にしたビジネスということもありネガティブな評価が続いてきたが、同社は一方では研究開発型の企業という面を兼ね備えている。

 前期の業績は売上高106.66億円に対して粗利益は35.16億円。つまり33%の粗利率だった。これに対して販管費は26.77億円。25%を占めている。この中には研究開発費15.2億円が含まれており、売上に対
して14%という水準。年間14%の研究開発比率である点は注目に値する。

 パチンコパチスロ機器向けに販売する半導体で高い利益率を確保し、その中で研究開発費を賄っているのが現状である。

 こうしたビジネスとともに、一方で同社は新規事業として機械学習/AIやブロックチェーン等へのビジネス展開を推進。まだその規模は5.22億円と少ないものの、今後の拡大に期待が寄せられている。

 今期は期初段階では売上高113億円(うち新規事業は7億円)、営業利益4.6億円と小幅増収ながら営業減益を見込んでいたが、9月21日に上方修正を発表。売上高134億円、営業利益12.2億円でEPSは46.17円から93.94円へと大幅に修正を行った。

 同社は配当性向50%を株主に約束しており、今期は減益見通しの中で上場記念配当16円を入れて40円配当を予定していたが、今回の上方修正を受けて記念配当16円を含む63円配当を実施することになった。

 通常は創薬ベンチャーなど研究開発型企業というのは赤字で無配として投資家に負担を強いるケースが多いのだが、同社は高い配当利回りを得ながら将来の新規事業でのリターンを得ることができる点で魅力が感じられる。


(炎)


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