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赤トンボ、赤エビスビール、秋服のチラシ・・・カレンダーをめくった途端
秋まっさかりですね。
露木行政書士事務所・露木幸彦と申します。
「養育費さえ約束してくれれば、他には何もいらない」
本当なら請求できる慰謝料や財産分与、そして生活費を放棄してでも
とにかく養育費を確保したい・・・
そんな謙虚で健気で控えめな希望すら
当たり前のことを当たり前のやっても上手くいかないことが多いですが
ごくごく最低限の条件を実現するにはどうすれば良いのか。
具体的な流れ、手順、対処方法を紹介してきました。
前回は家財道具の話ですが、今回は家の話を取り上げてみましょう。
<今回の登場人物>
夫(34歳、会社員、年収600万円)
妻(32歳、専業主婦)
子(1歳)
このメールのバックナンバーは「ブログ」で読むことができます。
http://ameblo.jp/yukihiko55/
夫婦が婚姻期間中に築いた財産ですが、
一目では夫の財産は夫のもの、妻の財産は妻のもののようですが、
いったん法律というフィルタを通せば、ものの見方は全く変わります。
現実的にはどうあれ、法律的には
夫婦の共有財産として扱われます。
もちろん、夫婦が何事もなく、つつがなく人生を
終えれば良いのですが、途中で関係がこじれて離婚に至った場合、
「財産をどうするのか」という問題に直面します。
それらの財産が夫名義であろう妻名義であろうと
「財産をどうするのか」に影響を与えません。
名目上、どちらの名義であっても夫が2分の1、
妻が2分の1の権利を有しているのです。
だから、婚姻期間中に築いた財産は右から左まで、
すべて丸ごとくっつけて、全部の合計を割り出し、
その合計額を折半するというのが原則です。
ですから、財産分与の場面で大事なのは
「どちらの名義なのか」というタグではなく、
「いつの財産なのか」というタイムなのです。
ただし、独身時代の財産、両親等からの贈与、
相続財産については法律上、特有財産(民法762条)と
して扱われるので夫婦の共有財産ではなく、
財産分与にならないのは、すでにお話しした通りです。
そのことを踏まえた上で結婚から離婚までの間、
家を買ったり、建てたり、もらったりした場合、
「家」をどうすれば良いのでしょか?
一緒に考えていきましょう。
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すでにバブル崩壊から20年超。
最寄の駅まで徒歩圏内の好立地に、
我が家を建てるだけでも、めいいっぱい背伸びを
している感じですから、
さらに土地まで購入するなんてバブリーな話ですが、
今のご時勢で「上物」だけでなく「下物」まで自力で
手に入れるのは相当に難しい世の中です。
一戸建ての物件を自分のものにするとしても、
せいぜい建物だけの住宅ローンを返済するので
精一杯。
土地までゼロから入手するのは厳しいので、
実際のところ、持ち家に住んでいる人の大半は、
先祖代々の土地だったり、両親がお金を出して
いるのではないでしょうか?
今回のケースでも土地は実家の場所にあり、
4,100万円で建物だけを建てたようです。
結婚の途中で子供が産まれ家族が増えて
手狭になったという、よくある話ですが、
夫名義で住宅ローンを組んだのなら、
家の名義は夫が10割、権利を持っているでしょう。
とはいえ前述の通り、登記上は夫名義であっても、法律上は
「夫婦の共有財産」なのだから、夫は「一国一城の主」と
いう感じで我が物顔で振る舞っているかもしれませんが、
結婚生活に失敗して離婚せざるを得なくなった場合、
せっかくの一国一城の「家」も財産分与の対象に
加えられてしまうのです。
ところで今回のケースでは4,100万円のうち
1,800万円は夫の両親がお金を出しているそうで、
これは夫婦の共有財産ではなく、「夫の特有財産」
として扱うのは仕方がありません。
だから、自宅の評価額4,100万円から
父からの贈与1,800万円を差し引き、
残りの2,300万円が夫婦の共有財産です。
そして夫は1,150万円、妻も1,150万円の権利を
持っているのですが、家を折半すべく、
真ん中で一刀両断することができるでしょうか?
雨漏りするから、風が吹き抜けるから、工事代が高くつくから・・・
いやいや、常識で考えてください。
他の財産は銀行の口座であれ、貯蓄型の保険であれ、
タンス預金であれ、ちょうど半分のところで
ちょん切ることが可能なのですが、家に限っては
不可能なのです。
では、どうすれば良いのでしょうか?
新しく建物を建てた場合、法務局に対して登記申請をし、
権利証をもらうのですが、家の権利というのは、
登記上は「所有権」といいます。
この所有権は自由に譲渡することが可能なので
「所有権をもらう」というのが1つの手でしょう。
ただ、今回のケースでは妻子が出て行き、
夫が住み続けるので、妻が夫の住む家の
「所有権の半分」をもらっても仕方がありません。
あとは自宅の評価額の2分の1に相当する金額を
「現金」で支払うという方法もあります。
具体的には夫は妻に対して1,150万円を支払うと
いうことですが、一般ピープルにとって1,000万円超
という金額はとてつもなく大きく、現金即金で
用意するのは、まさしく至難の業です。
また職場や実家、銀行からお金を借りようとしても、
職場の協力、実家の説得、そして銀行の審査には
かなりの時間を要するのは確実ですが、
そもそも協力を得たり、説得に成功したり、
審査を通すことができるかどうかは不確実です。
しかし、今回の場合、妻は子供のことを何より
最優先に考えています。
「法律で決まっているのだから。
誰のおかげで毎月、住宅ローンを
返済できたと思っているの?
家をあげるんだから、お金をくれるのは当然でしょ!」
そんなふうに正論を正しく振りかざしたところで、
夫は「はい、そうですか」と二つ返事で答えるとは思えないので、
「家をどうするのか」という話をまとめるのに
膨大な時間を要するのは目に見えています。
このように家の権利にこだわることで
長期化するのを必ずしも望んでいないので、
そのせいで長引いたら、養育費を減らされるようでは
本末転倒でしょう。
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ですから、妻の希望条件を受け入れた上で今すぐ
協議離婚に応じてくれるのなら、家の権利はさっさと
放棄してあげるという具合に駆け引きをするのですが、
夫は夫で「俺の財産には指一本、触れさせない」と
いうジャイアン的な条件なのだから決して悪い話ではないでしょう。
特に家の権利については1,000万円の現金を
用意できないという絶体絶命のピンチから脱出
することができるのだから大きいです。
このように相手の立場をわきまえた上で
自分の希望をのませるという、簡単そうだけれど、
なかなか出来ないテクニックの1つです。
(次回に続く)
現在私が執筆しているダイヤモンドオンラインの連載
『実例で知る! 他人事ではない「男の離婚」』ですが
おかげ様で8回目が公開されました。
今回は『「夫と一緒は嫌!」熟年離婚のお墓問題』です。
ぜひぜひご覧いただければ嬉しいです。
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