Rice(ライス)、すなわち米は、日本の主食。弥生時代以降、稲の栽培と米食が暮らしの中心に定着している日本では、最も日常的な食料だ。それゆえ、そのありがたさを実感したり、背景にある風土や文化を深く掘り下げて味わう機会は、意外と少ないかもしれない。

米を日本における食のアイデンティティーととらえ、米を中心としてつながる日本の風土や食文化を様々な視点で取り上げるフードカルチャーマガジン『RiCE(ライス)』が、2016年秋に創刊した。記念すべき創刊号の特集は、ずばり「ごはんの味」だ。


長年、“一汁三菜”を基本とする和食の主役であった米飯は、明治以降、西洋料理などの外国の料理が日本に伝わるにつれて、カレーライス、オムライス、ピラフと多様に進化し、安くて庶民的な“B級グルメ”としても親しまれるようになった。米飯メニューの多様化は、外国からもたらされたものを柔軟に取り入れながら、独自のものを生み出す日本らしい特性がいかんなく発揮された成果ともいえるだろう。

『RiCE』では、B級グルメの代表ともいえるラーメンとカレーを若いアイドルと一緒に探究する連載『アラレー』をスタートさせ、サブカルチャーの視点でこれらの料理を採り上げている。

また、米は時代ごとの文化に影響を受けやすい一方、“おふくろの味”という言葉でも表現されるように、親から子へ、子から孫へと、脈々と受け継がれてきた“先人の知恵”の結晶でもある。

『RiCE』では、受け継がれる味という視点から、女優の二階堂ふみさんがお母さん直伝の料理を子どもたちに振る舞う『ふみ、母の味。』の連載も。レシピも掲載されており、読者はふみさんの『母の味』を学び、家庭で楽しむことができる。

海、川、山、野と自然が豊かで、四季の移り変わりがはっきりしている日本では、地域の風土に根付いた郷土料理が数多く存在する。そこで、これらを47都道府県別に採り上げる連載コーナーが『四十七味』。この連載を通じて、日本各地の食をめぐることができそうだ。

米が日本の主食となった背景のひとつとして、稲の栽培が日本の気候に適していたことが挙げられる。『RiCE』では、日本の原風景でもある水田の風景が映し出されたフォトエッセイも掲載。どこか懐かしい風景を眺めているうちに、レンゲを摘んだり、カエルを探したり、凧揚げをした、幼い頃の記憶が自然と蘇ってくるようだ。

たかが米、されど米。農林水産省によると、日本では、約300品種もの稲が作付けされており、栽培法や保管法によっても、味や品質は異なる。かつては、魚沼産コシヒカリなどのブランド米がもてはやされることもあったが、消費者の嗜好やニーズは多様化している。それゆえ、ワインにおけるソムリエのように、それぞれに合った品種や銘柄を的確に選んでくれる“米のプロの目”が担う役割は、ますます大きくなるだろう。

『RiCE』では、おいしい米を生産者から消費者へと届ける“お米屋さん”にもスポットを当て、ワインや日本酒、クラフトビールの呑みくらべように、品種や産地、栽培法などから、自分の好みに合った米を探したり、食べ比べたり、新しい米の楽しみ方を伝えている。


新米が出回る秋は、一年中で最も米がおいしいシーズン。『RiCE』を通じて米の奥深さを改めて学びつつ、炊きあがったばかりのつやつやした白いごはんを口いっぱいに頬張り、ほんのり甘くひろがる温かさや、もちもちとした食感を、こころゆくまで楽しもう。

RiCE(ライス)No.1 AUTUMN 2016[Amazon]

Photographed by Yukiko Matsuoka、ROOMIE編集部

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