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建築と自然の関係性を取り戻す、建築家・藤森照信氏の個展が開催
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建築と自然の関係性を取り戻す、建築家・藤森照信氏の個展が開催

2017-02-28 10:30
    国内外問わず様々な建築賞を受賞し、「新進気鋭の建築家」といったコピーのもと華々しくデビューする若手建築家がここ数十年、次々と登場している。それはモダニズム以降に日本で活躍し、現在巨匠とよばれるような有名建築家たちが、大学や自身が主催する事務所において、後進の育成に尽力した成果ともいえるだろう。

    実際、建築系雑誌や書籍上で名前が掲載されている建築家の多くは、有名建築家が教える大学の研究室や主催するアトリエ系事務所出身者が多い。ある意味このルートでデビューすることは、有名建築家になるエリートコースなのだ。

    《銅屋根》ラ コリーナ近江八幡(たねや本社屋) ©Nacása & Partners Inc.
    《銅屋根》内観、ラ コリーナ近江八幡(たねや本社屋) ©Nacása & Partners Inc.

    このエリートコースとは無縁のルートを経て、1991年に45歳でデビューした建築家がいる。

    藤森照信(ふじもりてるのぶ)氏は、91年に長野県茅野市にある「神長官守矢史料館」の設計に携わって以降、25年の間に約40の独創的な建築を設計してきた。「屋根にタンポポやニラを植えた住宅」や「樹木をそのまま柱にしたような、鳥の巣箱に似た茶室」など、既成概念を超えた新しさと、過去を想起させる懐かしさを合わせ持つ、きわめて独創的な建築をいくつも生み出している。

    《栗百本》ラ コリーナ近江八幡(カステラショップ) © Nacása & Partners Inc.
    《栗百本》内観、ラ コリーナ近江八幡(カステラショップ) © Nacása & Partners Inc.

    45歳まで近代建築史・都市史研究といった研究分野で第一人者として走り抜けてきた藤森氏だからこそ、研究のなかで培った実績や知見が、建築に数多く取り込まれている。

    そんな藤森氏の展覧会「藤森照信展―自然を生かした建築と路上観察」が、今年3月より水戸芸術館現代美術ギャラリーにて開催される。

    《高過庵》 ©増田彰久

    展覧会では、「自然素材をどう現代建築に生かすか」「植物をどう建築に取り込むか」と、藤森氏が建築と自然の関係を取り戻すべく取り組むテーマを伝えるための展示がされている。

    代表作品のスケッチ、模型、写真や、自然素材を大事にする藤森氏らしく、これまで手掛けた建築の屋根・壁・左官などの素材見本、家具なども展示されるという。

    展示会場では各週末ごとに、路上の物件のおもしろさをあるがままに観察・採集・鑑賞する「水戸路上観察学会総会」の講演会や、藤森照信氏設計の新作茶室「せん茶」での茶会など、藤森氏の建築にまつわるさまざまなイベントが開催される。4月9日(日)には藤森氏自身の講演会も開催。

    プレーンな空間やインダストリアルなマテリアルではなく、自然素材を生かした現代建築の魅力を味わいたい人は、ぜひ訪れてほしい。

    モザイクタイルミュージアム ©増田彰久

    藤森照信展―自然を生かした建築と路上観察
    会場:水戸芸術館現代美術ギャラリー
    開催日:2017年3月11日(土)~5月14日(日)9:30~18:00(入場時間は17:30まで)
    休館日:月曜日 ※ただし3月20日(月・祝)開館、3月21日(火)休館
    入場料:一般800円

    藤森照信(ふじもりてるのぶ)略歴
    建築家、建築史家。昭和21年長野県生まれ。東北大学建築学科卒業後、東京大学大学院博士課程修了。東京大学生産技術研究所教授、工学院大学教授を経て、現在は、東京大学名誉教授、工学院大学特任教授、江戸東京博物館館長。専門分野は建築史、45才より設計を始め今に至る。近作に「多治見市モザイクタイルミュージアム」「草屋根》」「銅屋根」(近江八幡市、たねや総合販売場・本社屋)、史料館・美術館・住宅・茶室など建築作品多数。


    藤森照信展―自然を生かした建築と路上観察[水戸芸術館]

    トップ写真:《草屋根》ラ コリーナ近江八幡 © Nacása & Partners Inc.

    RSSブログ情報:https://www.roomie.jp/2017/02/370557/
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