そんなリビタで、100件以上のお宅のコンサルティングを担当してきた大嶋亮さんは、昨年、三鷹と吉祥寺の間にある中古マンションを購入&フルリノベーションし、家族3人で暮らしている。いずれ故郷のある関西に帰るつもりだと話す彼は、なぜこのタイミングで東京のマンションを購入するに至ったのか? リノベのプロが、自身のリノベストーリーから見えたものとは。
これまではどこに住んでいたんですか?
前はここから歩いて10分ほどの団地に住んでいました。夫婦ふたりとも関西出身で、ぼくは東京に出てきて8年ぐらいですが、2年ごとに新しい場所に移り住んでいます。四谷や高円寺、赤羽などを経由して、今の三鷹に落ち着きました。
特に引っ越し好きというわけではなく、仕事柄、東京のいろんな場所を知り、おもしろい物件に住みたかったんです。それまでは賃貸でしたが、ここはリノベーションする目的で購入しました。ゆくゆくは関西に戻るつもりなので、この家はそのあとも資産として運用できることを条件にピックアップしました。
衝動買いではないのですが、購入するときに内見した建物はここだけ。いつも仕事でお客様と一緒に物件探しをしているので、空き情報を知った時に「自分が買うならここしかない」と思いましたね。
購入に至った決め手と、この物件のいいところは?
簡単に言えば、価格が安くて、マンションの戸数が多く、外観に少しレトロ感があって中古好きに好まれやすいこと。それから場所の良さ。主にこの4つのポイントをすべて満たしていたので、「あ、これは買いだな」と。
特に場所がすごく良くて、吉祥寺まで歩いて行ける距離だし、まわりには公共施設がたくさん集中しています。子育て世帯に人気がある地域なので、借り手や買い手も多い。そういった需要は、このエリアに関してはこれからも変わらないと思います。
資産目的とはいっても、もちろんそれだけではありません。子どもが生まれたので、自分たちにフィットする家をつくりたいという気持ちがありました。リビタのお客様の中にもぼくたちと同じように、将来的には資産として運用する目的でリノベの相談に来られる方は多いですね。
どういう物件のほうが売却のときに資産価値が高いかなど、リノベを複合的に考える人が増えているんだと思います。
物件契約後、どのようにしてリノベを進めましたか?
内装は竣工当時のままで、まったくの手つかず状態だったので、購入後、内部をスケルトンに解体してイチからつくり直しました。工事費はおおよそ1,200万ぐらいですかね。床や壁に断熱材をしっかり入れて、建具や造作家具をつくって、設備機器は長期で使えるスペックのいいものを導入しています。
予算に関してはもう少し抑えることもできたのですが、将来的に長く運用したいこともあったので、そういうところのコストは惜しみなくかけています。長い目でみれば、そのほうがメリットが多いと考えました。
「リノベのコンサルティング」とは、どんな仕事なんですか?
中古物件を買ってリノベしたい人を対象に、戸建て・マンション問わず、どういう物件を探せばいいかというコンサルから、物件の仲介、その先の工事費のローンや資金調達を含めてリノベに関するあらゆるお手伝いをします。サービスとしては、設計事務所や工務店を紹介したり、相見積りを取ったり、トラブル回避のために目を光らせたり、お客様に寄り添ったアドバイスを意識しながら、お客様にとってベストな道筋をつくっていきます。
以前、ROOMIEで取り上げてもらった「自宅兼カフェ」の物件も、ぼくが担当したプロジェクトです。あのプロジェクトは、難易度がめちゃくちゃ高かった(笑)。かなり苦労しましたが、それだけに完成したときの喜びも大きかったですね。そんな仕事に日々関わり、ノウハウを蓄積しているので、ここを購入するまでの判断はかなり早かったと思います。
自分の家をリノベして、改めて気づいたことは?
実際のところ、工事費はもっと抑えられると思っていました。でも、自分たちの要望が多すぎて、最終的に予定の1.2~1.3倍になりました。そのときはじめて「ああ、お客さんもこういう心境なのか」としみじみ思いましたね。欲が出ると、それに比例してどんどん予算が膨らむ。そのジレンマみたいなものをあらためて実感しました。
あと、スケジュール管理が、プロながらあまりうまくいかなかった(苦笑)。普段の仕事をしながらだったので、なかなか思うように仕切れなかったですね。基本設計、スケジュール管理は自分たちでやって、図面作成やデザインに関しては知り合いの建築家さんに手伝ってもらいました。それでも通常より3か月ほど長い、9か月ほどかかってしまいました。
今回のリノベでこだわったところは?
夫婦ともにクラシックホテルが好きで、よく泊まりにいったりするくらいなので、家具や小物などでアンティークやクラシックの要素を各部屋にひとつは入れるようにしています。全体のコンセプトとしては、子育てがしやすい間取りで、それでいて心落ち着く空間も確保することです。
この家のリノベでは、子育て世帯・共働き世帯が惹かれる家にすることが大前提でした。なので、収納はいわゆる「見せる収納」ではなく「見せない収納」を意識しています。子どものおもちゃってどんどん散らかるので、とりあえず全部を片づけられる「収納兼ベンチ」をリビングに設置しました。このベンチは置き家具なので、必要なければ移動できるし、ホームパーティではみんなで座れて、けっこう便利なんです。
最後に、リノベ物件の魅力とは?
リノベは新築よりも予算が抑えられるので、気持ち的に少し楽だと思います。それに、自分たちの暮らし方や生活動線にフィットした家づくりが可能です。なので、暮らしていてストレスが少ないですね。あと、いい場所に住めるというところ。東京で新築となると、このエリアではちょっと無理ですから……。
中古マンションとなると、耐震を気にする人も多いと思います。新しい耐震基準は1981年6月に改正されたので、だいたい竣工年が82年の7月以降の建物なら、新基準の可能性が高いです。ただし、築40年ぐらいの旧耐震基準の場合でも、壁式構造の建物などは耐震に強いこともありますよ。そういった予備知識を得るために、リビタの「リノベ塾」という学びの場を用意していますので、参考にしてみてください。
あと、リノベ費用を安くしたいなら、この家みたいにフルスケルトンにしないで、なるべく既存のものを利用すること。それがなによりも安く仕上げるコツだと思います。
編集部ノートいずれは誰かに貸すという選択肢があれば、家づくりのあり方も、ハードルの高さも変わる。リビタへ相談に来る人は20代後半〜30代の人が多いそうで、人とは違うものを好み、自分ならではの選択をしたい人たちが、中古物件のリノベーションに注目しているという。
リビタではリノベーションにまつわるセミナーやイベントを随時開催している。いますぐ家を買う気はなくても、リノベに興味がある人は一度参加してみてもいいかも。
Photographed by Daisuke Ishizaka