人気連載「みんなの部屋」vol.60。部屋づくりのアイデア、お気に入りの家具やアイテムなどの紹介を通して、リアルでさまざまな「暮らしの在り方」にフォーカスする。

三鷹と吉祥寺の間にある閑静な住宅街。このエリアに、中古物件のリノベーション事業を行うReBITA(リビタ)の社員、大嶋亮さん一家が暮らすマンションがある。亮さんはリビタのリノサポのコンサルタントとして、過去に100件以上のリノベーションをサポートしてきた強者。そんなリノベのプロが手がけた自邸となれば、いやが応でも期待は高まる。はたして、どんなアイデアが詰まった部屋なのだろうか。

名前:大嶋亮さん 大嶋和美さん
職業:リノベーション会社リビタのコンサルタント(亮さん) 編集・ライター(和美さん)
場所:武蔵野市三鷹
面積:約67㎡
家賃:非公開
築年数:築33年(分譲)

お気に入りの場所

ガラス窓で仕切られた仕事部屋


ガラス窓で仕切られた仕事部屋は、妻の和美さんが普段仕事をする場所。亮さんが10年前にDIYした棚を再利用した本棚など、4畳半ほどのスペースながら居心地のいいワークスペースをつくりあげている。

「壁ではなくガラス窓で仕切られているので、あまり狭さは感じないです。夜にどうしてもやらなければいけない仕事があるとき、リビングの様子が部屋から見れるし、子どもとコミュニケーションが取りやすいところも気にいってます」(和美さん)

ハンモックや北欧家具が印象的なリビング


ヘリンボーン柄の床に、優しい雰囲気の北欧家具。天井からは大人でも余裕でぶら下がれるハンモックを設置している。

「ハンモックは、天井を吊り下げていたアンカーの穴があったので、それをそのまま利用して吊るしました。ときどき、ハンモックに揺られながら瞑想してます(笑)」(亮さん)

リビングのベンチは実は置き家具。ゴチャゴチャしがちな子どものおもちゃを、まとめて収納している。家に人を招いた際には、この家具が簡易ベンチやサイドテーブルに早変わりするので便利だという。

広々した土間がある玄関


玄関を入ると、こだわりの大谷石を使用した土間スペースが。ベビーカーがそのまま置けるように、少し余裕を持ったつくりだ。脇に置かれたベンチは、靴を履くときの腰かけを想定して造作したもの。「子どもの友だちが大勢で来ても、ベンチに座ってみんなで靴が履けますからね。いまは買い物した袋をとりあえず置いたりできて便利です」と和美さん。

壁面はちょっとしたギャラリースペースとして活用。天井に設置したピクチャーレールは、竣工後に夫婦で取り付けたものだ。

この部屋(家)に決めた理由

仕事柄、これまで数百件以上の中古物件を見てきた亮さん。ここを購入した決め手は、家を資産として考えたときのスペックの高さだったとか。

「値段の手頃さや、建物内の戸数が多く少しレトロ感がある外観、あとは立地も良いです。この4つのポイントがそろっていたので、『これは買いだな』と判断して、購入に至りました。特に立地がすごく良くて、子育て世帯にとってはかなり住みやすく、人気が持続しやすいエリアというのが決め手ですね」(亮さん)

詳しいリノベのエピソードは「リノベストーリー」にて。

残念なところ

多くのプロジェクトに関わってきた亮さんだけに、あまり大きな失敗はなかったという。それでも「コンセントの取り付け位置」にちょっとした伝達ミスがあったそうで、その言葉通り、キッチンカウンターの側面には不自然に並んだコンセントを発見。

「あとはスイッチ経路かな。残念というか、実際に住んでみると『ここであの電気を消せたらもっと便利なのに』というのはありますね」(亮さん)

さらに玄関で使用している大谷石にも、意外な事実が判明。

「益子のカフェ『スターネット』が好きで、その空間をイメージして、大谷石を床に使いました。住宅の中で床に使う人はあまりいないと思いますが……。ただ『ミソ』と呼ばれる茶色の部分がボロボロ取れてくるというか、子どもがほじっちゃうのは、想定外でしたね(笑)」(和美さん)

お気に入りのアイテム

ハンス・J・ウェグナーのデイベッド

リビングに置かれたソファは、インテリアショップ・halutaで購入した、ハンス・J・ウェグナーの「デイベッド」。賃貸暮らしのときから、いつかはリビングに置きたいと亮さんが心に決めていた憧れの家具。足のデザインは丸と角があるそうで、北欧好きの2人は迷わず希少性のある丸脚をチョイスしたそう。

「家糸プロジェクト」で引き継いだ、築90年の洋館の建具



家糸プロジェクト」とは、田園調布にある築90年の洋館を取り壊す際、使えるものを少しでも後世に残したいというオーナーの想いから、建具や窓枠などを新しい場所で再利用しようというプロジェクト。

大嶋さんの家では、仕事部屋の窓や廊下とリビングを仕切るドアに、家糸プロジェクトで受け継いだものが使われていた。そのときの様子はリビタのサイトで詳しくレポートされている。

オリジナルの取っ手

家のあちこちで使われているスチール製の取っ手は、設計を手伝ってくれたPUDDLEのデザイナー・佐藤佑樹さんによるもの。取っ手によって、部屋の雰囲気がグッとアンティーク調になる。

暮らしのアイデア

部屋のテーマを決めてリノベーションする


リノベーションに統一感を持たせるため、部屋のコンセプトを「クラシック」に設定。「夫婦ふたりともクラシックホテルが好きなので、ちょっと古い時代を感じさせるようなパーツを、各部屋に1か所は入れるようにしています。洗面所には50年代の額装を使ったり、リビングの床をヘリンボーンにしたり」と亮さん。

造作キッチンを安く抑える方法

「造作キッチンが欲しいけど、予算を少しでも抑えたい」人にオススメなのが、大嶋家でも実践している、イケアの家具を利用した半造作キッチン。

「天板と側板だけを造作にして、なかのキャビネット部分はイケアの既成品を使っています。予算が抑えられるうえに、見た目は造作なのでかなりオススメの方法です。取っ手をオリジナルに付け替えていることもあって、これがイケアのキッチンと気づく人はほとんどいないです」(和美さん)

室内の温度を快適に保つ2重サッシ

「もともとのサッシの内側にもう1重、サッシを作っています。寒かったり暑かったりは、中古マンションで気になるところですが、2重サッシにしているのでかなり快適ですね」(亮さん)

ベッドはオーダーでサイズをきっちり


部屋にぴったり収まるベッドは、2つ奥には幅が足りず、サイズオーダーしたもの。転げ落ちる心配がなく、家族三人で川の字になって眠れる。

これからの暮らし

夫婦ともに関西出身ということで、いずれは関西へ戻るつもりだという大嶋さんご夫婦。それなのに、なぜ東京の中古マンションを購入することにしたのか?

「実は、ずっと東京にいるという気持ちは夫婦ともになくて、いつかは関西へ帰りたいねなんて話をしています。なので、この物件を購入するときも、いずれ誰かに貸したり、売ったりすることを前提に選んでいます。いまのわたしたちのような、子育て世帯をターゲットにしているので、そういう家族が好みそうな間取りや雰囲気を考えながらリノベーションしています」(亮さん)

Photographed by Daisuke Ishizaka
RSS情報:https://www.roomie.jp/2017/03/375165/