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本業は投資教育家でもあるFP山崎(@yam_syun)です。今回はFP的見地からみてもおもしろい、お金に関するコミックをご紹介します。タイトルは「ビリオネアガール」です。


■ かわいい彼女は資産170億のデイトレーダー!

平凡な大学生である主人公がとあるきっかけで知り合ったのは、かわいい女の子。しかし彼女は凄腕のデイトレーダーで資産170億円の持ち主だった、という驚きの展開から物語は始まります。

デイトレーダーとはインターネット(と高速回線)の普及と、金融ビッグバンに伴う規制緩和で誕生した投資スタイルのことです。かつては金融機関に所属したファンドマネージャー(とブローカー)でしかできなかった頻繁な売買を個人でも行うことができるようになりました。これにより、高額の株式売買を短期的な売買で繰り返すような資産運用を行う個人が増えています。同日に「売り」と「買い」の取引(デイトレード)を行うのでデイトレーダーというわけです。

大成功を収めたデイトレーダーの何人かはブログ等でその手口を公開したり、雑誌や書籍で自分の運用術指南をしたことで、その投資手法は有名になりました。またその資産額が大きいことも特徴で、平均的会社員の生涯賃金をはるかに上回る額をただの個人が数年で得た例もあり、21世紀のゴールドラッシュ的憧れの対象でもあります。

しかし、「お金だけが人生のすべてではない」わけで、巨額の富があれば人は幸せになれるわけではありません。私はファイナンシャルプランナーとして「人生において、何度かお金の問題と直面せざるを得ない」ことと、その準備方法を教育する仕事をしていますが、お金との距離感を取るのはなかなか難しいことです。それが10代のかわいい女の子が170億円を手にしてしまったとしたら!



■ 凄腕デイトレーダーは世間知らずのお嬢さん?

ヒロインは170億円の資産を持ち、夜景のきれいな高層マンションに住んでいますが、お金の使い方も、社会との距離の取り方も分からない、とまどう10代の女の子に過ぎません。バーベキューもしたことがなければ、友達とライブに行く経験もありません(そもそも、そんな友達が東京にいなかったりする)。あまりあるお金もその使い方が分からず、時にはとんでもない消費をしてしまったりします。

ヒロインが「たとえお金で望むものが買えたとしても、お金で買ったものはお金がなくなれば終わりな気がする」とつぶやく寂しさとその恐怖が、桂明日香氏のかわいい絵柄とのギャップでうまく伝わってきます。(桂明日香氏が週刊アスキーで連載している「ハニカム」「わくらばん」もおもしろかわいいのでオススメします!)

実際にデイトレーダーの中には数億円の資産を持ってはみたものの、社会との接点がない自分にぞっとして、普通に就職活動をする人もいます(そういう人が、就職氷河期の洗礼を受けて就職は諦め、デイトレーダーに戻ってまた数億円稼いだりするから面白い)。

コミックは2巻が発売されたばかり。主人公と彼女の間で少しずつココロの距離が詰まってきている感もありつつ、一方でなかなか埋まらないギャップの大きさも明らかになってきています。今後の展開が楽しみです。


■ 原作者は「狼と香辛料」の支倉凍砂氏

ところで、「ビリオネアガール」の原作者は小説「狼と香辛料」で有名な支倉凍砂氏。「狼と香辛料」といえば狼少女ホロのかわいさにノックダウンされ、「ホロかわいいよホロ」とつぶやく人が続出したことで有名ですが、その実は行商人の主人公を通じた「ファンタジー経済ライトノベル」でもあります。

信用取引の相場をクライマックスに取り込んだエピソードなど、株式投資経験者ならずとも手に汗握る展開でしたが、このコミックでは、舞台を現代にして真っ正面から資産運用を扱っています。お金と幸せの問題に、氏がどのようなストーリーを提供してくれるか楽しみです。


なお、このコミックを読んで興味本位でデイトレードにチャレンジしても、お金を溶かしてしまうことになり得るので、やめておきましょう。これは、コミックレビュワーではなく、ファイナンシャルプランナーとしての私からのアドバイスです!

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