今回は特別版として、音楽を中心にポストデジタル時代のカルチャーを届ける全方位型メディアレーベル「lute」とのコラボで「快速東京」ギタリスト・一ノ瀬裕太さんにインタビュー。
暮らし方、働き方のまつわる選択肢は、多様性を増すばかり。どのように暮らすか/働くかは、いま生きていく上で避けて通れないテーマだ。そんななか、等身大で持続可能なかたちを作り上げるために、新たな働き方を実践するのが、所属や肩書きの垣根をこえてゆるやかにつながるクリエイティブチーム「CEKAI」。
所属メンバーでリノベーションを施したという池尻大橋の「CEKAI」オフィスには、人の出入りも流動的に、プロジェクトごとに人が集まる。
この場所で仕事をしているのが、グラフィックデザイナーでパンクロックバンド「快速東京」のギタリストでもある一ノ瀬裕太さん。オフィスを訪れ、仕事のこと、暮らしのことについて話を聞いた。
名前:一ノ瀬雄太さん(快速東京)職業:ギタリスト、グラフィックデザイナー
場所:東京都世田谷区池尻大橋
面積:約140㎡
家賃:約30万円
築年数:約30年
お気に入りの場所
フロアの端から端まで。9mのオリジナルデスク
印象的なのは、2Fの作業フロアの端から端まで9mにわたって長くのびるデスク。
「オフィスのなかで特に気に入っているのは、部屋に合わせてオリジナルでつくってもらった机ですね。9mどかーんとあって、人が大勢いるときにもつめれば座れるし、作業する人数の増減がフレキシブルです」
使いやすいキッチン3Fはミーティングルーム兼リビング、そしてキッチン。2Fと同様に、フロアを遮る壁や仕切りはなく、いろんな意味で風通しのよい環境だ。業務用のようなDIYっぽさがオフィスの世界感になじむキッチンのレンジフードは、オフィスの改装で新たに付けられたものかと思いきや、リノベ前からあったもの。
「入居にあたって、キッチンはパネルを張ったくらいですね。仕事中にお茶とかコーヒーをけっこう飲むんですが、飲みものを淹れるときの使いやすさが気に入っています」
人が集まるミーティングルーム兼リビング3Fのキッチンの向かいのスペースは、打ち合わせを行うミーティングルーム兼、人が集まる、いわばリビングスペース。
「秋田市出身のインターンの子が『汁(つゆ)つくりますか…』とか言ってけんちん汁をつくり出したり、誰かが『そうめん茹でるよ』って言って、ここでみんなと食べたりとか。けっこうワイワイしますね」
大型テレビでは、毎夜のようにウイニングイレブン大会が繰り広げられているのだそう。
「4人で同じチームでコンピュータと対戦して、お互いに高め合っています。名誉のために言っておきますが、いつも遊んでいる訳じゃなくて、みんなけっこう大きな仕事をしていたりするんですよ(笑)」
作業スペースに、こだわりのサウンドシステム「机の下にウーファーがあって、事務所みんな聞こえるので良い感じです。デザイナーってPCにずっと向かっている仕事なので、音楽がずっと聴けて、なのでそのへんのミュージシャンより音楽を聴いているんじゃないかっていう。そういう意味ではすごく良い事務所ですね」
この場所に決めた理由
2Fには、9mのデスクを中心に、雑談まじりに仕事の話をするようなフラットな空間が広がる。インタビューの様子を、背後からスマホのカメラで執拗に連写していた「CEKAI」メンバーでクラフィックデザイナーの安田昂弘さんに、この場所を「CEKAI」のオフィスにしようと決めた理由を伺った。
「僕らが退去したら取り壊す前提で、なんでも好きにしていいよ、って契約でした。良い話も悪い話も全部筒抜け、という壁のない事務所をつくりたかったんです。最初の頃は、3Fで打ち合わせ中に下でうっかり下ネタを話して引かれたり……。最近は、さすがに女性が来たら気をつけよう、だとかできるようになったんですけど。あとは、やっぱり立地ですね。どこへもアクセスしやすい」(安田さん)
残念なところ
夏は気持ち良いけど、冬は寒い吹き抜けで風通しが良いぶん、温かい空気は上に行きがちだ。
「残念なところといえば、冬はすごい寒いことでしょうか。暖房をいくらつけても、3Fに熱気が集中して、1Fはずっと寒いままだとか。夏は、3Fでクーラーつけると下まですごく涼しいし、風通しがよくて気持ち良いんですけどね」
”原液かけこぼし”みたいな(笑)
「あとは、床の失敗したところもちょっと残念かな。みんなで床にウレタンを塗ったんだけど、ここだけちょっとくぼんでいて完全に固まってなかったのに気がつかないで、乾く前に荷物を入れ込んでニチャニチャになってしまったところを、さらに踏み固めて……」
お気に入りのアイテム
「オフィスは、全体的に気に入ってますよ。特に机周り。おもちゃだらけなんですけど」
オフィスの至るところに、「CEKAI」に集まるさまざまな人が持ち寄ったおもちゃや思い思いに並んでいる。
家内安全を願って花園神社で購入した熊手。ベイマックスなどの人形はあとから乗せた。
ヘリオスのポット&野田琺瑯のケトル最近、お茶を煮出すことにこだわっているという一ノ瀬さんが使うのは、ドイツの老舗魔法瓶ブランド・ヘリオスのポットと野田琺瑯のブルーのケトル。
「ペンギンのかたちがすっごいかわいい。自宅でも、同じシリーズの猫のかたちをしたポットを使っています。保温性能抜群で、朝入れると1日温かいんです」
聴く音楽自宅やオフィスで聴く音楽は?
「自宅では朝、NRQとか聴いてますね。劇団四季のミュージカル「ノートルダムの鐘」のサントラも、朝来てフローリングモップかけながら聞いてますね。歌上手い人の録音って、単純に聴いていて楽しい(笑)」
¥2,333 詳細はこちら
「ここでは仕事してるときは、さすがにメタルなんかは聴かないようにしています。リズムが一定のものだったり、最近はヒップホップが多いですね。ケンドリック・ラマーの新しいアルバムとか。夜中に明日までにやらなきゃいけない仕事があって自分しかいないときにはフレーミング・リップス、来日アーティストが武道館でやっているなんて日は、想いを馳せながらストーン・ローゼスだとか。その時々です」
¥1,150 詳細はこちら
暮らしのこだわり
「僕いま30歳なんですけど、食べもので体調が左右されるのを感じ出して。インスタントのコーヒーやコーラばっかりをがばがば飲んでいると体調を崩しがちなので、最近は、さっき紹介したお気に入りのケトルでお茶煮出して飲むようにしてます」
これからの暮らし
「いま住んでる部屋は、駅から近くてキッチンが広いのは良いんですが、部屋が狭くてベッドルームはベッド、リビングはダイニングテーブルとソファ、テレビを置いたらそれだけでいっぱい。奥さんもフリーランスで時間の制約があまりない生活をしているし、自転車もあるしで、駅から近い必要もないので、もうちょっと喧騒から離れた、広い部屋で穏やかに暮らしたいです」
「デザインにしても音楽にしても、もの書きでも企画でも営業でも、なんでも。環境が仕事や暮らしに及ぼす影響って大きいと思うんです。「CEKAI」は、そういうことを働く場所からと考えようとしている会社なので、仕事も住まいも、もっと突き進めていきたいですね」
photo by Tatsuya Hirota