今から約150年以上前に暮らしていた人びとは、1年の季節を24分割にした「二十四節気」と呼ばれる区分けと、そこからさらに細分化された「七十二候」を暮らしに取り入れていた。72個の季節というと、だいたい5日に1つのペース。そのときの旬の食材を食べ、旬の花木を愛でる生活をし、自然の移り変わりとともに今よりずっと細分化された季節の移ろいを感じていたのだ。
七十二候の「意味」や旬の食材を知ることで、普段よりも敏感に季節の変化を意識できる。季節の移ろいを感じ、取り入れてみて、暮らしに深みをもたせよう。
前回の七十二候:「梅子黄」夏にしっとり飲みたい梅酒を仕込む季節
七十二候:乃東枯(なつかれくさかれる)
6月21日~6月25日ごろ
四季:夏 二十四節気:夏至(げし)
「乃東」とは「夏枯草(かごそう)」という漢方薬を指しており、現在の名称では「ウツボグサ」。この季節にウツボグサの花が暗褐色に変化するため、枯れているように見える。そこから「乃東枯」と呼ばれるようになった。
また、二十四節気の「夏至」にあたり、一年のうちで一番日の出ている時間が長い。
旬の食材
夏みかん主に山口県で作られている、別名「ナツダイダイ」のみかん。この別名は、実ったみかんを収穫せずにそのまま付けておくと1年後もそのまま残り、すぐ横に今年度のみかんが実るからという説と、山口県萩市の士族が代々続くように、という願いが込められていたとの説もある。
鮎日本の代表的な川魚として知られる。炭火に煽られ、パチパチと音を立てながら焼ける鮎の姿は、夏の風物詩だ。
北大路魯山人著書「魯山人味道」では鮎の魅力が存分に語られており、合わせてフライにするのは“愚の骨頂”とまで表現する。
本日の一句
夏至今日と思ひつつ書を閉ぢにけり高浜虚子
夏至は毎年、この梅雨の時期にやってくる。どうしても「夏の始まり=夏至」という認識が薄くなってしまうのは、雨模様の中ではしょうがないことといえる。むしろ梅雨明けを機に、夏がようやくやってきたと感じられる。
作者も「おっと、夏至は今日か。読書をやめて外に出ようかな」くらいの認識だったことがうかがえる。
次回は「菖蒲華(あやめはなさく)」。
illustrated by Kimiaki Yaegashi参考文献:白井明大(2012)『日本の七十二候を楽しむ ―旧暦のある暮らし―』東邦出版.
Orange fruit sliced on white background via Shutterstock
Fish Ayu with Salt being Charcoal Broiled, Local Foods of Tochigi Prefecture in Japan via Shutterstock