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イラストレーターたかくらかずきさんが「10年後も手放さないモノ」
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イラストレーターたかくらかずきさんが「10年後も手放さないモノ」

2017-07-10 06:00
    10年という月日が経つと、いま住んでいる部屋も、立場や環境も大きく変わってくる。ただ、たとえ環境が変わっても「これだけはずっと持っていたい」というモノが、ひとつはある。

    そこで、さまざまなジャンルで活躍する方々に「10年後も手放さない」思い入れのあるモノを、31×34.5cmという限りのある『ROOMIE BOX』の中に詰め込んでもらった。なぜ、10年後も持っていると考えるのか。大切に持ち続けるモノについて語る姿から、その人の暮らしが徐々に見えてくる。

    Illustrator/Artist/Gamecreator たかくらかずき

    1987年生まれ。ドット絵やデジタル表現をベースとしたイラストで、音楽、CM、書籍、WEBなどのイラストや動画を制作。劇団『範宙遊泳』ではアートディレクターを担当。『宇宙冒険記6D』で初の脚本を担当した。pixiv zingaroにてグループ展『ピクセルアウト』を企画/主催。2016年より『スタジオ常世』の名でゲーム開発を開始、『摩尼遊戯TOKOYO』を開発中。2017年7月11日(火)よりRECRUIT Guardian Gardenにて個展『有無ヴェルト』開催予定。
    Web www.takakurakazuki.com

    10年後も手放さないモノ

    刺繍の絵でチョイスした『スカジャン』

    渋谷と原宿の間にあるビンテージショップで購入したもので、ビンテージの生地を使ったスカジャンです。次の展示会に向けて作品を刺繍したTシャツをつくろうとしていて、刺繍モノが気になって手に取りました。

    その日は服を買おうと新宿の某デパートに行ったんですが、気に入ったものがなくて。もともと僕の場合、服でもお皿でもCDでも絵を見て選ぶことが多いんです。そのデパートに売っていたシャツは、そもそも絵がないものばかりで(笑)。「ここには僕の買う服はないな」と撃沈した後に入ったのが、そのビンテージショップでした。

    60年代、70年代などの柄や絵が入った服がたくさん売っていて。これまであまりビンテージショップに入ったことがなかったんですが、そこで「そうか、こういう“古くて良い服”を買えばいんだ」と気付きました。

    職業柄、毎日のように使っている「デジタル製品」って、“最新の商品が一番”じゃないですか。でも「服」は、むしろ何十年も経過したモノが価値を持ったりしている。そんなところに惹かれました。

    このスカジャンを選んだ決め手も“絵”ですね。ビールとドラッグをちゃんぽんして気持ち悪くなっているエイリアン。ブラックユーモアが効いていて、絵も単純にかわいい。いつかはスカジャンもつくってみたいと思っています。

    全895ページ。人類のあらゆるものをイラスト化した本『ワーズ・ワード』

    大学生の頃、古書店で見つけて購入した本です。図鑑系の本が好きでたくさん持っているのですが、この『ワーズ・ワード』は本当にすごいですよ。全895ページの中に、人類のすべてが詰まっていると言ってもいいくらい。


    あらゆるジャンルのモノや事象の名称と英単語を、イラストから調べることができる辞典なんですが、英語で話す機会なんてないだろうっていうマニアックな部品の名称まで載っているから、見ていて飽きません。個人的には「耕作の手順」や「工業機械の解体図」ページが、好きですね。

    写真ではなく“図面のようなイラスト”を用いている、というところもポイント。僕が普段制作しているドット絵にも言えることですが、記号化して抽象化することで必要な情報だけが残り、誰にでも分かりやすい内容になっているんです。写真だと、余計な情報も入ってしまいますからね。

    たかくらさんの部屋は「暗闇で光る石」が撒かれている

    あらゆることをネットで調べることができる時代ですが、必要な情報なんてこのくらいで十分なのかもしれないです。この895ページが人間の生活なんだ……と。

    あと関連事項が隣り合っているので、ひとつのことを調べるうちにその周辺の情報も分かりますからね。仕事の資料というよりはネットサーフィン感覚で、永遠に眺めていられます。

    この『ワーズ・ワード』は、“本という形”であることに価値がある。ソフトウェアとハードウェアが分かれていないところも良いんですよね。この一冊にすべてが入っているということが、目で見て・持った重みで実感できるので。


    数年前から意識していることですが、そもそもデジタルデータって、ちょっと不安なところがあって。データってすぐに消えてしまうじゃないですか。作品づくりでも、作業している時はまだいいんですけど、それが過去になった時に「消えてしまうのでは……」って思うことがあります。

    だから最近は、作品を物理化したいと思うんです。ただ出力するのではなくて、例えば“刺繍”という手法を選んでみたりして、別の表現を組み合わせることで新しい価値が付けられるのではないかと思ってます。

    もっと言うと、「庭」をつくりたいんですよね。RPGのプログラムを組むように庭をつくれないかな、なんてことも考えています。

    スカジャンのビンテージ話にも通じますが、10年後に今使っているデジタル製品は持っていないけれど、スカジャンや本だったら持っている。それと同じで、デジタルでつくったものも「物理化」「空間化」することができたらずっと残していけるかもな、と思ったりします。

    イラストレーター たかくらかずきさんの10年後

    未来を予想しながら生きているタイプではないので、難しいですね……。でも強いて言えば、いろいろなところへ行っていたいかな。物理的な「場所」という意味でも、「仕事を行うステージ」という意味でも。あとスカジャンもつくっていたいし、庭もつくっていたい。今やっていることも続けながら、違ったこともできていたらいいですね。

    それと、遊ぶのはやめたくないです。というか今でも仕事と遊びを分けるという認識はないのですが、10年後もそうありたいと思います。

    「10年後も手放さないモノ」バックナンバー

    vol.1 BEAMSバイヤー鈴木修司さん
    vol.2 グラフィックデザイナー金田遼平さん

    Photographed by Yutaro Yamaguchi

    RSSブログ情報:https://www.roomie.jp/2017/07/389282/
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