今から約150年以上前に暮らしていた人びとは、1年の季節を24分割にした「二十四節気」と呼ばれる区分けと、そこからさらに細分化された「七十二候」を暮らしに取り入れていた。72個の季節というと、だいたい5日に1つのペース。そのときの旬の食材を食べ、旬の花木を愛でる生活をし、自然の移り変わりとともに今よりずっと細分化された季節の移ろいを感じていたのだ。
七十二候の「意味」や旬の食材を知ることで、普段よりも敏感に季節の変化を意識できる。季節の移ろいを感じ、取り入れてみて、暮らしに深みをもたせよう。
前回の七十二候:本格的な夏の始まりは、ゴーヤを食卓に|七十二候ダイアリー「温風至」
七十二候:蓮始開(はすはじめてひらく)
7月12日~7月16日ごろ
四季:夏 二十四節気:小暑(しょうしょ)
池一面に花をつける姿が清らかで神々しい、蓮が咲きはじめる頃。
蓮の実はとても長い歳月泥の中で眠っていることがあり、ある時ふと水上に現れて夜明けとともに花を咲かせる。1951年に千葉県の遺跡で発見され弥生時代のものと鑑定された蓮の実が、約2000年の時を経て花を咲かせたという事例もある。
旬の食材
トウモロコシ米、麦と並ぶ主要穀物のひとつ。日本の最大の産地は千葉で、北海道、群馬、茨城、山梨などが続く。
「鍋を火にかけてから採りに行け」といわれるくらい、収穫直後から糖度が激減していく。あのプチっと弾ける食感と甘みを楽しむなら、採れたてを買い求めてなるべく早く食べたい。
かれい「左ひらめ、右かれい」といわれるように、右側に両目が集まっているほうがかれい。水平に泳ぐ姿が特徴的だが、孵化後は他の魚と同様に目が左右にあり、体も平たくなく、背びれを上にして泳ぐ。体長が10ミリくらいになると少しずつ左目が移動し、体も平たくなり、やがてよく知るあの姿になる。
夏が旬の魚だが、冬の子持ちがれいもおいしい。
本日の一句
草市のあとかたもなき月夜かな渡辺水巴
旧暦で7月13日はお盆の初日にあたるため、昔は12日の夜から朝にかけて各地に「草市」というお盆用品が並ぶ市が立った。燈籠や土器などの仏具、迎え火送り火にたく苧殻(おがら)、精霊の乗り物とされる茄子、盆花として供える溝萩(みぞはぎ)、鬼灯(ほおずき)などが売られていた。
渡辺水巴は浅草出身の俳人。一晩限りの草市の翌日、昨晩の賑わいが幻だったかのように静かになった町の様子を詠んでいる。ちなみに浅草近くの月島では、今日でも草市が立つ。こちらは2日間の開催。
illustrated by Kimiaki Yaegashi参考文献:白井明大(2012)『日本の七十二候を楽しむ ―旧暦のある暮らし―』東邦出版.
ear of Corn on background. via Shutterstock
flatfish via Shutterstock