今から約150年以上前に暮らしていた人びとは、1年の季節を24分割にした「二十四節気」と呼ばれる区分けと、そこからさらに細分化された「七十二候」を暮らしに取り入れていた。72個の季節というと、だいたい5日に1つのペース。そのときの旬の食材を食べ、旬の花木を愛でる生活をし、自然の移り変わりとともに今よりずっと細分化された季節の移ろいを感じていたのだ。
七十二候の「意味」や旬の食材を知ることで、普段よりも敏感に季節の変化を意識できる。季節の移ろいを感じ、取り入れてみて、暮らしに深みをもたせよう。
前回の七十二候:酷暑の中で、みずみずしいきゅうりをパリッと|七十二候ダイアリー「桐始花結」
七十二候:土潤溽暑(つちうるおいてむしあつし)
7月28日~8月1日ごろ
四季:夏 二十四節気:大暑(たいしょ)
土が湿り気をもち、地面からむわっと熱気が上がってくるような蒸し暑い時期。エアコンの室外機の熱風やアスファルトの照り返しなど、現代の蒸し暑さは昔以上に複雑だ。
まとわりつくような暑さをしのごうと、打ち水、風鈴、夕涼み、浴衣など、人々は昔からさまざまな工夫をして過ごしてきた。
旬の食材
枝豆縁側でビールと枝豆……これも暑さを快適にしのぐ日本らしい夕方の風景だ。現代ではバルコニーもしくはオープンテラスになるだろうか。
枝豆は大豆の未熟な種子。そのため栄養素的には、たんぱく質、ビタミンE、食物繊維などの大豆の成分と、カロテン、ビタミンC、カリウムなどの緑黄色野菜の成分、両方を併せ持つ。
アルコールの分解を助けたり、肝臓を守る働きもあるという。ビールとの組み合わせは理にかなっているというわけだ。
あなご関東では煮あなご、関西では焼きあなごが定番だが、刺身でも食べることができる。その味はフグにも似ていて、コリコリとした食感も特徴。
とくに長崎県対馬の「黄金あなご」は、脂がのり、身は締まり、刺身にすると格別とのウワサ。ぜひ一度食してみたい。
本日の一句
炎天を来て燦然と美人たり久米三汀
三汀は、小説家・劇作家としても活躍していた久米正雄の俳号。
溶けてしまうのではないかと思うくらい蒸し暑い夏の日。なぜかいるのだ。その人の周りだけ気温が違うのではないかと疑うくらい、メイクくずれもなく、汗もかかず、颯爽と歩く美しい女性。すれ違う人にひとときの涼をもたらしてくれる、これもまた夏ならではの風情。
illustrated by Kimiaki Yaegashi参考文献:白井明大(2012)『日本の七十二候を楽しむ ―旧暦のある暮らし―』東邦出版.
Green Soybean on table wooden table. via Shutterstock
Conger eel sushi via Shutterstock