中央林間から渋谷まで走る東急田園都市線は、近年人気のベッドタウンを抱える路線です。渋谷から約30分の宮前平は、緑ゆたかで安心して子育てできる環境にありながら、通勤にも便利な立地。
そんな宮前平駅から徒歩数分の場所に、一級建築士事務所.8 / TENHACHIを主宰する佐藤圭さん・佐々木倫子さんが暮らすマンションがあります。
築37年の中古マンションをフルリノベーションした空間は、家族の存在をいつも感じられる、開放感に満ちた場所でした。
名前:佐藤圭さん、佐々木倫子さん、7歳のお子さん職業:一級建築士事務所.8 / TENHACHI
場所:神奈川県川崎市宮前区
面積:67㎡(ロフトを入れた実面積75㎡) 1K
リノベーション価格:1,660万円
築年数:築37年
お気に入りの場所
開放感のあるバスルーム「バスタイムって1日の中で一番くつろげる時間だから、できるかぎり解放的な空間にしたかったんです」と倫子さんが話すお気に入りの場所、バスルーム。
扉はなくカーテンで仕切られ、奥にはシャワーとランドリースペース、手前には洗面所があり、お見事! としか言いようがないほどコンパクトに、水まわりがとめられています。
シャワーはスタルク、水栓はVitra(ヴィトラ)、可動式のバスタブはセラトレーディングのものと、こだわり尽くしたアイテムをチョイス。
「バスルームにいてもリビングでくつろぐ家族とおしゃべりができたり、テレビを観ることもできて、最高の空間ですね」(倫子さん)
食卓兼ワークスペースのキッチンカウンター「リノベをする際、一番こだわったのがキッチンカウンター。家族や友人が集まり、生活の中心になる場所なので、導線や使いやすさ、機能性を重視しました。
4,500×1,150mmのカウンターは大工さんにつくっていただいたもの。IHクッキングヒーターは既存のものを使って、キッチン台の表面だけ木材を貼ってコストダウンしています」
大きなカウンターは食卓とワークスペースを兼ねており、まさに暮らしの中心。
レンジフードはこだわりのaccaのもの、S字フックはイケアにするなど、コストを抑える部分のメリハリを大切に。
この部屋に決めた理由玄関
「夫婦ともにワンルームで暮らしたいと思って、家を設計しました。
もともとリノベーションありきで物件を探していたので、新築である必要はなくて。低層RC(鉄筋コンクリート)造で、建物が正方形に近いこの物件は、地震の際にも揺れの『ねじれ』が少ないと思ったんです。内部も正方形に近く、かつPS(パイプスペース)を動かしやすい構造だとわかったので、ここに決めました。
暮らして3年が経つ今でも、ここに帰ってくると『気持ちいい』と感じるんです」(圭さん)
ベッドスペース
その上はキッズスペース
「子どもを育てるにもいい環境だと思います。近くには小学校や、公園もたくさんあります。都心まで30分ほどで行くことができるし、暮らすにも仕事をするにもぴったりですね」(倫子さん)
リノベーションの秘訣やポイントは「リノベーションストーリー」で!
残念なところ
窓や備え付けのエアコンが古くて寒いアボカドの木
佐藤夫妻が自分たちで設計してリノベーションしたこの部屋。もともと3LDKだった間取りを、壁を取り払うことで大きなワンルームにしています。
「家族の気配があり、いつでもゆるやかにつながる間取りにしたかったんです。
ただ、仕切りがない分、冷暖房の効率が悪いのは否めません。窓ガラスとエアコンは予算の関係上、既存のものを使用していますが、ペアガラスではないのでやっぱり冬は寒さを感じますね……」(圭さん)
お気に入りのアイテム
倫子さんのお父さんが手づくりした器「手前味噌で恐縮なんですが……父が趣味でつくっている食器なんです」(倫子さん)
宮城県出身の倫子さん、ご実家ではお父さまが趣味で器をつくっているのだそう。手づくりのぬくもりと味わいが感じられる器は、毎日の料理に彩りをもたらしてくれそうです。
夫婦ともに好きな、椅子のコレクション「僕は以前家具メーカーで働いていたし、夫婦ともに椅子が好きなので、いつの間にか増えてしまって。中でも気に入っているのは、個人輸入で少し安価に購入したアーコールのベンチ。
木の家具を置く場合は、床材との色合いの相性も考えて選んでいますね」(圭さん)
暮らしのアイデア
ものにそれぞれの居場所をつくって整理整頓「見せる、見せないにかかわらず、ものの居場所、置き場所をつくってあげるようにしています。そうすれば、雑多なんだけれど雑多すぎない、あるべき場所に戻すという決まりごとが生まれると思うんです」(倫子さん)
「キッチンカウンターは常にきれいにしておくというのも暮らしのルールですね。
いちばん人が集まる場所だし、目にもつきやすい。そこが整理整頓されていれば、あとは多少散らかっていても気にならないかも(笑)」(圭さん)
これからの暮らし
「仕事柄、同じ場所にずっと住み続けるのではなく、もっと実験していきたい気持ちはあります。今のこの家にとても満足していますが、いずれは住居とオフィスを分けたいとも考えていますね」(圭さん)
「その分け方も、建物をすっかり分けるのではなく、居住空間で仕切るイメージです。オフィスは大きく、居住空間は狭くてもよくて。オフィスをリビングのように使うことができたらいいなって思っています」(倫子さん)
お子さんの勉強机
ゆるやかに居住空間とオフィスを仕切ることで、家族のほどよい距離感を大切にしていきたいとお話してくださった圭さんと倫子さん。
おふたりが手がける「暮らし」には、“いくつかのルールはあっても扉はない”。家族の距離感によく似ています。
部屋の仕切りを可能なかぎり排除した風とおしのよさこそ、おふたりらしい「ちょうどいい距離感」なのかも。
リノベーションの詳細は「リノベストーリー」で!
Photographed by Kenya Chiba