なんかもう色々と規格外です。

ベルリン国際映画祭で銀熊賞(監督賞)を受賞したことでも話題になったウェス・アンダーソン監督の『犬ヶ島』。

公開に先んじて見せていただいたその映像は予想を遥かに超える迫力。

そして何より最高のボイスキャストだったのです。

ゴージャスすぎる声優陣

まず、オノ・ヨーコ。しかも、役もオノ・ヨーコ。

「デヴィ夫人じゃないんだから…」なんて思いつつも、並ぶ日本人は”世界のワタナベ”こと渡辺謙や、RADWIMPSの野田洋次郎、野村訓市。

しかもこの映画、日本語と英語が入り乱れて登場します。

そのため、字幕版を選ばずとも、日本のキャストの横には、あのスカーレット・ヨハンソンや、『ブレイキング・バッド』のウォルター役、ブライアン・クランストンらが登場してしまうんです。

彼ら彼女らが言語を超えて入りみだれる様子は豪華にしてトリッキー。

こんな声の世界は中々楽しめるものじゃありません!

ちょっとヘンな日本が面白い

さて、今作の舞台は未来の日本。

ですが、A.IやVRなんかが登場するのかと思いきや、違うのです。

浮世絵や相撲、寿司など、その世界観はちょっと伝統的すぎるほどの日本。

そう、例えるなら、さび抜きならぬ、『ブレード・ランナー』サイバーパンク抜きのような世界観なのです。

それでも、ド迫力に奏でられる圧倒的な太鼓サウンドが、打ち上げ花火のように腹に響き、監督の独特な日本へと観客を引き込んでくれます。

忠誠心に泣ける


おっと、ここまでだとどうしても色物的な映画に思えてしまいそう。

でも、この映画はストーリーまでとにかくいいんです!

30人も入らないような小さな試写室には、グスっと鼻をすする大人たちが多数!

「少年と犬」という、定番でありながらも、涙腺ド真ん中を時速200kmの豪速球で攻めてくる組み合わせ。

そこに、人間から追いやられた犬たちを助けにいく少年と、苦楽を超え、彼に忠誠を近っていく犬たちがいるのだから、ダメ、もうダメ……。

時には、彼を想って犬たちが感情を露わにするシーンもあり、あぁ……涙なしには見られません……。

手間が迫力を生む

ここまで幾つかの魅力を伝えてきましたが、もし実写映画ならここまでのパワーは持たなかったでしょう。

この映画は人形を使ったコマ撮りのアニメーション。

そして、100分の映像のために実に約14万枚もの写真を撮影したからこそ、映像には実写映画にはない迫力があるのです。

もっとも長いあるシーンの撮影には、実にそのためだけに約3ヶ月もかかったそう。

だからこそ、監督やスタッフたちの執念が画面を超え伝わってくるようなのです。

もちろん子供と見に行っても楽しめる作品でしょうが、大人の方が刺さるパワーを持っていそう。

AかBかの選択を迫り、それを選べない人を排外してしまうような息苦しい現代だからこそ、それを越える本作は価値を持つように思えるのです。


映画、『犬ヶ島』
5月25日(金)全国ロードショー
配給:20世紀FOX映画

image:©2018 Twentieth Century Fox Film Corporation

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