千葉県は、都内にもつくばエクスプレスでアクセスがしやすく、再開発の進んでいる流山市。

最寄り駅から車で走ること10分ほど、落ち着きのある住宅街の中に、今回お伺いする鹿熊さんご夫妻の住まいはありました。

お名前(職業):鹿熊さん(UIデザイナー)、ご主人(映像制作)
場所:千葉県流山市
広さ:5LDK/110.13㎡
リノベーション費用:約100万円
築年数:20年
住宅の形態:一戸建て

ご主人の親族から受け継ぐことになった住まいを、水回り以外は全てDIYでリノベーション。暮らしの様子をYouTubeチャンネル「シカクマ生活」として発信されています。

鹿熊さんがつくりたかったイメージを、ご主人が独学で技術面を学びながらサポートしてつくられたこだわりの住まいで、そのコンセプトとDIYのポイントについてお話を伺ってきました。





お気に入りの場所

ふたりで過ごす時間の長いダイニングルーム

おふたりとも在宅で仕事をされることもあるそうで、平日はそれぞれのワークスペースで作業。古民家カフェを意識してDIYされたダイニングルームで、食事や仕事に集うのだそう。

「元々はよくある綺麗な和室でした。DIYの構想をする中で、和室を洋室にするのはよく見かけますが、私は和室のよさを生かしてさらに落ち着きのある雰囲気にしたいと思ったんです」(鹿熊さん)

いまではダイニングスペースとして使われていますが、元はお祖父さんの寝室兼クローゼットだった空間。

仕切りを取り払い、壁や格子の色を塗り直すことで全く印象の異なるダイニングスペースに変えられたのだそう。

天井をからは、おふたりがヘルメットを被りながら塗られたという、塗料の風合いが感じられます。

「実際に自分たちで手を加える中で、より住まいへの愛着も湧いてきましたね」(鹿熊さん)

「小京都の街並みが好きで、カフェに足を運んだり、SNSで見たりして同じようなイメージの空間をストックして構想を固めていきました。

ここでは夫婦で毎日の食事、お茶の時間を堪能しています」(鹿熊さん)

いるだけで気分が上がる台所

台所は、黒を基調としたクールな空間。システムキッチンの対面にある壁面収納は、元あった大型の食器棚をなくして、鹿熊さんが使いやすいようにDIYされたのだとか。

「理想を言えば対面式にしたいなど台所スペースもいろいろと希望があったのですが、DIYをする中で“今ある空間をよりよくしよう”という気持ちに変わっていきました。

実際につくっていく中では、毎日立つ場所なため、使いやすく気分の上がる空間にするように心がけています」(鹿熊さん)

「一番のお気に入りは、白から黒に塗装した壁に設置した三段の棚とバックカウンターです。そこに無彩色×茶のカラーで統一感を持たせたお気に入りの器や、調理道具、スパイスなどの調味料を並べています。

これまで賃貸の住まいでは収納スペースもうまく確保できずにいましたが、今の住まいになって見せる収納ができたことで、器類も増えてきましたね」(鹿熊さん)

いまでは三段の棚も、つくった当初は二段だったとのこと。実際に使ってみる中で三段の方がいいと思い、ご主人が一緒につくり直してくれたのだそう。

こんなふうに、使いやすさに合わせて柔軟に変更できるところがDIYの魅力ですね。 

念願だったペットを迎えた部屋

ダイニングルームの隣にあるのが、ペットの文鳥の部屋。住み始めて1年が経った頃、念願だったペットを迎え入れるタイミングで化粧室だった空間を変えられたのだそう。

「四畳半ほどの小さな和室に2羽の文鳥を飼っています。仁平古家具屋で購入した古道具の長机(寺子屋机)の上に、鳥かごとお手製のアスレチックを置いて遊ばせていますね」(鹿熊さん)


こちらのアスレチックも既製品ではなく、DIYで作成。ご主人の創作意欲で完成されたものなのだそうですが、ツリーハウスの世界観の完成度に驚かされました。これは文鳥も喜びそう。

「基本のパーツは庭の木を切って熱湯消毒してつくりました。つくると言った時は妻も半信半疑でしたが、完成したものを見て喜んでくれたので、よかったですね」(ご主人)

小さめのソファーやミニテーブルを文鳥のカゴのすぐ前に配置し、お茶を楽しみながら文鳥を観察したり触れ合って遊んだりして癒されているというおふたり。

在宅での仕事が増える中で、おうち時間を豊かにする大切な家族の一員との憩いの空間になっていました。

それぞれの仕事に集中できるワークスペース

住み始めの頃は、おふたりともダイニングスペースで仕事をされていたそうですが、住みながら2階を綺麗にする中で、それぞれの作業場を別々に設けるようになったそう。

1階はご主人の作業スペース。

元は押入れスペースだった部分を、他と同様に黒く壁を塗り直し、コンセントの配線を整理することで広々と活用できるように。

「仕切りとなっていた板には、壁紙を貼ることで明るめの木の色からトーンを落とし、バランスがよくなるようにしました。

配線周りはもう少し改善できるのではと思っているので、電気周りの資格をとったら着手していみたいですね」(ご主人)

一方、鹿熊さんの作業場は2階に。1階と同様に古民家風インテリアを意識されたとのことで、落ち着いた雰囲気の中で仕事も捗りそう。

「長机にデスクトップPCを配置し、隣には押入れを改造してつくったソファーを置きました。疲れたらそこでちょっとひと休み。押入れ部分を活用したことで、空間を有効に使うことができました」(ご主人)

ソファーの座面の下には収納スペースも設けられたとのことで、利便性もバッチリです。

デスクワークに疲れたら、ロッキングチェアに揺られながらリラックス。チェアでオンオフが切り替えられるのもいいなぁ。仕事が捗りそうですね。

この部屋に決めた理由

親族の住まいとDIYへの思い

長らく都内に住んでいたというおふたりは、ご家族の住まいに移り住むことをきっかけに、それまでやったことのなかったDIYに挑戦して部屋づくりをしてみようと思ったのだそう。

「主人の祖母の家だったんですが、しばらく空き家になってたんです。住み手のいないまま売る計画がではじめた頃に、コストが抑えられるメリットから、譲り受けて住んでしまおうという考えになりました」(鹿熊さん)

「和室をうまく使えば、自分の好きなスタイルにできそうだと可能性を感じたこと。夫婦揃ってクリテイティブな業種だった分、これを機会に住まいをDIYしてみようという気持ちになったんです。

最寄駅周辺が開発地域で利便性を感じられたことも、入居の後押しになりましたね」(鹿熊さん)

残念なところ

湿気の多さ

住まいをつくり上げられる中で気になったと話すのが、湿気の多さ。ここでもおふたりはご自身の手で対策を練られていました。

「湿気がとにかく気になったので、DIYでできることを、と考えました。吸水性のある珪藻土を壁に塗り、除湿機を購入するなどの対策を行ったんです」(鹿熊さん)

「最初は除湿目的だったのですが、珪藻土を塗ったことで消臭効果も生まれ、手作業感が残る見た目も気に入っています」(鹿熊さん)

断熱効果が低く少し寒い

「住み始めの頃気になったのが、冬場の寒さでした。

ただ逆に寒さを楽しもうという思考になり、念願の火鉢を導入。少し肌寒い部屋で火鉢にあたるのも趣があっていいですよ」(鹿熊さん)

合わせて冬場の寒さを乗り過ごせている理由には、ご主人が陰ながら行っている日頃のメンテナンスの成果もありました。

「生活する中で隙間風を感じた部分は、都度その穴を塞いできました。築年数も経ってきているので、こうしたメンテナンスも行うことが大切だと改めて実感しましたね」(ご主人)

お気に入りのアイテム

思い入れのある古道具たち

家を譲り受けた際に同じく引き継がれたのが、桐ダンス。住まいづくりはこのタンスに似合ったものにしたいという思いからスタートされたそうで、現在の暮らしのルーツになる大切なアイテムのひとつです。

「気付いたら古道具集めが私の趣味のようになっていました。古道具に目覚めてから、行きつけのお店に行くために栃木県に月一で通ったりと、活動エリアも大きく変わったと思います」(鹿熊さん)

どれも思い入れのある古道具ばかりだと話す鹿熊さん。同じものがふたつとない見た目はもちろん、ストーリーが感じられるところもハマる要因になったそう。

hystで購入したライティングビューローは、持ち帰っていざ使おうとした時に、昔の伝票とお札が挟まっていてテンションが上がりました。実際に書いてある住所を検索してルーツを調べたりもしましたね」(鹿熊さん)

ライフスタイルにあったスマートロック

空間としては古民家カフェのような落ち着く空間を目指しつつ、生活面ではおふたりともガジェット好きで生活を豊かにしたいという思いから利便性も追求されています。

象徴的なのが、玄関にあるスマートロックのQrio Lock

「主人の希望が強く、玄関の鍵にスマートロックを取り入れました。

鍵を家に忘れてもスマホを持って近づくだけで鍵が開きますし、誰が開けたかも分かってお互いの行動が共有できるので私にとっては安心材料ですね」(鹿熊さん)

時短の必需品、洗濯機

生活家電として同じく挙げられたのがパナソニックの洗濯機「Cuble」。機能性もさることながら、ポイントはそのデザイン。

「洗濯機ひとつで部屋の雰囲気も変わると思っているのですが、『Cuble』は見つけた時からおしゃれで、すぐに使いたいと思える家電でした。

機能性も高く、やはり乾燥機がついていると天気を気にせず洗濯ができるので、時間の削減にもなって便利です。昨年購入したもので、1番買ってよかったものになっています」(鹿熊さん)

長く使えて所作まで変えてしまう掃除道具


最新家電を有効活用される一方で、アナログさを大切にされていたのが掃除道具。

部屋の掃除にイリス・ハントバークのちり取りブラシセット、キッチンではテーブルブラシセットを活用。飾れる掃除道具としてインテリアとしても美しく、掃除するのも楽しくなるとのことで、日々の生活の所作までも変えてしまったようです。

「市販で使い捨ての掃除道具は、黄色や青といった派手なものが多くて、今の部屋には合わないと思ったんです。

ちょっと高くても繰り返し使えるような木などでできた掃除道具だったら素材もよくて飾れるし、長く使えると思って、購入するようにしてます」(鹿熊さん)

「道具ひとつ変えるだけで、掃除の意識も変わりましたね。安価な使い捨てのものだと使い方も雑に使ってしまっていたのが、長く使うことを考えると道具への愛着が湧き、所作も丁寧になったと思います」(鹿熊さん)

映像をつくるからこそ大切にしたプロジェクター

ご主人の仕事が動画制作であることをはじめ、プライベートでも「鹿熊生活」として動画制作をされているおふたりだからこそ、映像の視聴環境はしっかり整備されていました。

LGのプロジェクターは画質がいいことはもちろん、短焦点でスペースを取らないことが決め手になりました。YAMAHAの5.1chのステレオも設置して、家で動画鑑賞を楽しんでいます」(ご主人)

「プロジクターを投影する大きな壁がないことが、ひとつ住まいの欠点だったのですが、テレビ用の出窓があったスペースを覆う形で最大限使えるように、120インチのスクリーンをオーダーメイドして購入しました。

プロジェクターの投影が100インチなので、十分余裕を持って見ることができます」(鹿熊さん)

暮らしのアイデア

部屋のテーマとカラーを決めて統一感を持たせる

ここまでの話にもあったように、鹿熊さんが大切にされたのは元ある“和”の空間を活かした住まいづくり。このテーマ設定が空間をつくり上げるのに重要だと話します。

「我が家のテーマは『古民家風インテリア』としてDIYを進めていきました。そのため、全ての部屋をDIYで古い雰囲気へ。

基本的には、どの部屋も無彩色×差し色ワンカラー(ブラウン)で構成し、木の色をなるべくダークカラーで統一させることで、古民家のような風合いを出しています」(鹿熊さん)

また、色合いと合わせて意識されているのが、素材感だそう。

「主な素材は木などの天然素材。家具や小物は木や藤の素材のものが多いです。

そこに、アクセントとしてインダストリアルな家具(ダイニングテーブルの足やライトなど)を配置。古さと新しさの融合で、和風モダンな雰囲気を出しています」(鹿熊さん)

住まいに対しての明確なテーマ設定が、アイテムを購入する際の選定ポイントにも繋がっているとのこと。最初にしっかりテーマを決めておくことが、空間づくりにおいて大切なことなのだと改めて実感しました。

古さの中にスマートさを加える

「お気に入りのアイテム」でも複数出てきたように、暮らしの中にIoTを取り入れることも夫婦の住まいのポイントのひとつ。古いものに囲まれた家でありながら、利便性にもこだわられています。

「アレクサやQrio Lockなど、スマホひとつで家電を操作しています。『古くて味わいのある家具と落ち着きがあり癒される空間×新しいテクノロジーで暮らしは快適』というのが理想のスタイルです。

デジタル製品は好きで、ステレオやプロジェクターなどもこだわって選んでいます」(鹿熊さん)

これからの暮らし

住みながらブラッシュアップしていきたい

住む前からはじまったDIYは、今やすべての部屋に手を加えるまでに。ただしおふたりの理想の空間への探求は、これで終わりではないそう。

「改善部分は住みながら常に出てきているので、これからも過ごしやすい家を求めて修繕していきたいです。

また、今後は2階の洗面所や水回り、庭についてもDIYで使いやすさとこだわりをプラスしていきたいと思っています」(鹿熊さん)

「1階のダイニングスペースも、今は畳にクッションフロアで色合いを揃えていますが、今後は木材に張り替えてみたいなと思っています。

自分自身でもYouTubeなどをみながら勉強しているので、実際に住まいを使ってスキルアップしながら、妻と一緒によりよい空間をつくっていけたらと思います」(ご主人)

築100年の家で二拠点生活

いまの住まいをよりよくしつつ、実は新たな物件も手掛ける機会が生まれているとのこと。

「地方にある私の父の実家が現在空き家になっており、その家をDIYでリノベーションし、有効活用しようという計画があります。

いまの住まいとはまた違う書院造の自分好みの空間でもあるため、セルフリノベーションした経験を生かしたいですね。素材を生かしながら、また自分の好きな空間をつくり、別邸として活用していきたいです」(鹿熊さん)

いまの住まいは、当時目黒に住みながら週末に電車で移動して少しずつDIYされたそうですが、次の物件はそれよりも数倍時間のかかる距離とのことで、業者の方の協力も得ながら進められるそう。

コンセプトをしっかり持って住まいづくりを進められる鹿熊さんと、その構想を技術面でサポートしてくれる優しいご主人。

今後、今の住まいをどのように磨かれていくのかはもちろん、新しい物件でも、今あるよさを活かしつつ鹿熊さんらしさをどう織り交ぜていくのか。

どちらもその全貌を動画で見られることを、楽しみにしたいと思います。

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