島根県は自然と歴史が豊かな出雲市。出雲駅から車で15分ほどの通りに面しながらも、周囲に建物は多くない落ち着いた土地に、naoさん、shogoさんご家族の住まいはありました。

お名前(職業):naoさん(美容師)、shogoさん(デザイナー)、お子さん3人
場所:島根県出雲市
広さ:3LDK+店舗
住宅の形態:築1年 戸建て
間取り図:編集部作成

お子さんの成長によるライフスタイルの変化と、naoさんが働き方を考える岐路に立ったことを機に建てられたのが、現在の店舗兼住居の一戸建て。

そこには、長年戸建てを夢見ていたshogoさんのこだわりと、ご夫妻のセンスが溢れていました。生活がスタートしてなお、住みながらご夫妻で完成を目指す家づくりについて、お話を伺っていきます。

■目次
1. お気に入りの場所
2. この部屋に決めた理由
3. 残念なところ
4. お気に入りのアイテム
5. 暮らしのアイデア
6. これからの暮らし

お気に入りの場所

自ら設計したキッチン

住まいに入ってすぐ、土間玄関の隣にあったのがキッチン。美しい外観のカウンターは、shogoさんが図面を書き、ワークトップやIHなどの素材や機材も発注してつくった、こだわり溢れるものになっていました。

「架台は家具屋さんにつくってもらい、天板は自分で設計して設備などを取り付けたものです」(shogoさん)

「作業がしやすい広さや、部屋全体が見渡せるレイアウトはもちろん、スピーカーが天井に付けてあるので作業が楽しくなるキッチンにできたと思います」(shogoさん)

IHや食洗機は海外製のものを導入。導入に際して当初、naoさんには故障した時の不安があったそうですが、その点はshogoさんが修理できることが安心材料になっていたそう。

食洗機も大容量で汚れをしっかり落としてくれることから、家事の負担も少なくなったといいます。

「主人が毎日、夜遅くまで設計士のように考えている姿が印象的でした。使うものは自分で決めて発注をかけていて、素材のサンプルも山のようにありましたね。設計会社の方からも、ほぼ任せてもらう関係で進められたので、上手くいったんだと思います」(naoさん)

自分でできる部分は、積極的に住まいづくりに関わっていくことでコストの大幅カットにも成功。何よりご自身で生活をしていく上で住み心地のいい住まいづくりに繋がっていました。

並んで使える洗面スペース

5人家族で、小さなお子さんが3人いるとなると朝から準備も大変そう。洗面スペースは準備が被っても使いやすいように、洗面台を2つ並べたスタイルになっていました。

「キッチン同様に洗面ボウル、水栓は主人がオーダーしたものを使っています。子どもが3人いても朝の混む時間にストレスなく使えるのがいいですね」(naoさん)

洗面台下の収納スペースは、naoさんのご実家で使われていた家具を活用して作成されていました。

「木材が中心となった空間に、プラスチックの収納アイテムが合わなかったんです。昔の家具は素材もいいものが多くて、実家で使われなくなっていたものから収納部分だけ、今の住まいのスペースに合わせて活用しています」(naoさん)

憧れを叶えたバスルーム

洗面台の隣にある浴室も、理想のイメージが明確にあった空間の1つ。デザインも機能性も兼ね備えたモノ選びをされていました。

「海外のバスルームに憧れてオーバーシャワーヘッドをつけました。真上からのシャワーはかなり快適です。日本の銭湯にもあるような通し目地のタイル貼りも、お気に入りのポイントです」(shogoさん)

この部屋に決めた理由

仕事と子育てを両立できる広い土地

ご夫婦と3人のお子さんとの暮らしを通して、それまで以上に考えるようになったという住環境のこと。お仕事との兼ね合いで住まいを考える中で、広い土地を探されたそう。

「集合住宅の環境で3人の子どもを育てる勇気が、私にはなかったですね。朝のゴミ出しなどにちょっと外に出る時の格好や、子どもたちの声が隣に聞こえないかとか、気疲れしそうだったんです」(naoさん)

「そうした日々の生活を楽にしたいことに加えて、お店が欲しいという思いもあり、マイホームの購入を決意しました。それまでも主人が1人で土地探しをしていたのですが、私の決心と合わせるように、今の十分な広さのある土地が見つかったのでタイミングもよく。そこからはとんとん拍子に話が進んでいきましたね」(naoさん)

集合住宅で暮らした経験もあり、特に玄関は広い空間にしたいという思いがあったそう。お子さんが並んで支度ができ、待ち時間が重なっても大丈夫なように広い土間玄関にされていました。

残念なところ

視界に入ってしまう2つの柱

吹き抜けなど開放感ある1階スペースで、気になってしまうというのが玄関土間とリビングの間にある2つの柱でした。

「視界を遮ってしまう柱はなくしたかったのですが、家の構造上、どうしてもここだけは外せなくって。せめて角を綺麗に取った円柱にしたかったのですがそれも間に合わず。家に来た方が靴を履く時に支えになることに最近気づいて、その点はよかったのですが、生活を通して必ず目に入る場所なので、気になってはしまいますね」(naoさん)

存在感が強いエアコンの位置

同じく1階のスペースから、家が完成してから気づいたと話すのがエアコンの位置。キッチンからの視界に入り、どうしてもその存在が気になってしまうのだそう。

「家が完成する直前まで、白でスッキリとした空間が気に入っていた壁面に、突如として現れたエアコンに最初は驚きました。エアコンが表に出ない窪みや、せめて視界に入りづらい方向の壁面につけることを提案してもらえたらよかったのですが……。自分たちで決めていくスペースが多かった分、盲点でしたね」(naoさん)

お気に入りのアイテム

デザインが可愛いHans Roerichtのマグ

shogoさんが、ついつい気に入ったものを見つけては購入してしまうという食器たち。中でもHans Roerichtの「コーヒーマグ」はお気に入りなのだそう。

「ヴィンテージものの食器類は、デザインはもちろん、長期的に見て手放すことになっても価値が下がりづらいため、気に入ったものがあると購入してしまいます。このマグは特に見た目も可愛くて、重ねて収納できる機能性もあっていいですね」(shogoさん)

「料理は毎日私がするのですが、気づいたら新しい食器が増えています(笑)。最初は驚いたのですが、今はもう慣れてしまって。私も食器類は好きなのですが一緒になって購入してしまうと収納スペースが足りなくなるため、主人のお気に入りの食器たちが食卓の中心になっていますね」(naoさん)

ご夫婦の“好き”が重なったポスター

同じくキッチンから、ご夫婦ともにお気に入りだというのがAndreas Samuelssonのポスター。

「雑誌やSNSで見かけていいなと思っていたら、偶然にも主人も好きだったことを知って、購入を決めました。ただどこで買えるのか分からず、DMで問い合わせると、ちょうど東京で取り扱われる機会があることを知り、手に入れることができました」(naoさん)

住まいには他にもアート作品が飾られていますが、これは食器同様に将来のことも考えながら集められているそう。

「家やお店が完成して落ち着ける年になったら、美容室と併設で、今集めているヴィンテージのアイテムを取り扱ったお店ができたらと考えています。そのためいいものでお値打ちのものがあれば、先行投資の要素も含めて住まいに迎え入れるようにしていますね」(shogoさん)

リビングを整えてくれる「ボビーワゴン」

1階でshogoさんが作業される際に役立っているのがB-LINEの「ボビーワゴン」。収納力と機動力を持った、使い勝手のいいアイテムです。

「雑誌やパソコンなど大型のものはもちろん、デザイン作業の時に使う文房具など小物もたくさん収納できて、便利です。キャスターがついているので移動がしやすく、程よい高さでサイドテーブルとして使ったりもできますね」(shogoさん)

インテリアとしても絵になる水出しコーヒー器具

食器棚の上にあったのがojiの水出しコーヒー器具。イベントで出店してコーヒーを入れることもあるというshogoさんが、大切に使われているものの1つです。

「透過式で6時間かけて抽出します。夏はこのコーヒーが欠かせません。コロナ禍でイベントの機会は減ったのですが、美容室のオープンと合わせてコーヒーの提供ができたらと考えていて、今準備中です」(shogoさん)

暮らしのアイデア

自然素材にこだわった空間づくり

住まいを建てる上で絶対に譲れなかったというのが、自然素材での空間づくり。外壁のサイディングや内装のクロスを使わず、木や漆喰で仕上げられていました。

「主人は仕上がりの見た目を重視してのことでしたが、私は機能面への期待が大きかったです。島根は湿気が多く、カビや結露などが住まいにも影響してくることを賃貸での生活で痛感していたため、素材を工夫することでそういった問題をクリアにできたのはよかったですね」(naoさん)

フローリングにはチーク材を、天井にはシナベニヤを目地も意識しながら選定されていた、shogoさん、naoさんのお家。床や天井の木材選びは、住まいで使うインテリア選びにも繋がる大切なポイントだといいます。

「床材や天井の木材は、住まい全体の印象を大きく変えるので、慎重に検討しました。ヴィンテージのインテリアも空間に違和感なく、存在が映える素材選びができていると思います」(shogoさん)

これからの暮らし

住みながら完成を目指していく

妥協なく住まいづくりを進めたこともあり、1階部分だけでも当初の予算や期間を大幅に超えることになったと話すおふたり。将来的には子ども部屋や、shogoさんの作業部屋として使用予定の2階は、これから作業を進めていく予定だといいます。

「今は急ピッチで、美容室となる店舗スペースづくりを夫婦で進めているところです。壁は夫婦で塗りながら、必要な棚などの収納は主人がつくってくれています。自分たちでやっていると、手順や完成のイメージもできるようになってきたので、2階も同様に自分たちでできるところはつくっていきたいです」(naoさん)

「2階は現状、仕切りのない2部屋になっているのですが、来年から子どもも小学生になるので、1部屋分を3つに区切り子ども部屋に、そしてもう1つの部屋を自分の作業部屋にできたらと考えています。ガラスで廊下と区切って、海外のオフィスのような空間にすることが理想ですね」(shogoさん)

2階は室内以外にも、屋外に映画鑑賞ができるバルコニーも製作中。お子さんの成長と合わせて、家族で楽しめる空間も広がっていきそうです。

住居としての機能はもちろん、クリエイティブかつ、アクティブな働きかけを行う中で、店舗やオフィスなど住まいの可能性を広げられているご夫妻。

たくさんの情報とこだわりを持って想像をかたちにしていくshogoさんと、心踊らせる感覚は一緒に、ただ流されることなく家族をしっかりバックアップしているnaoさん。

おふたりがこの場所でつくり上げられていく空間から、今後どういったものや出会いが生まれていくのか。取材を通して、私もまたこの土地に、人に魅せられたひとりになっていました。

Photographed by tsubottlee

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