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ひと昔前、深夜にテレビをつけるとちょっとマニアックな映画がたくさん放送されていました。眠いのに、なぜか続きが気になって最後まで見てしまっていたという方も多いはず。

そんな、深夜にもう1度見たくなるようなマニアックでちょっと懐かしい映画を「今宵の夜更かしシネマ」と題して紹介していきます。

今回の作品はイーサン・ホークとジュリー・デルピーの1995年の映画「恋人までの距離(ディスタンス)」。日本にもファンの多いこの映画。深夜にやっていたらつい見てしまいそうな映画の1つですね。まずは予告編をどうぞ。

ストーリーの舞台はオーストリアのウィーン。列車の中で偶然出会ったアメリカ人のジェシーとフランス人のセリーヌ。ふとしたきっかけで意気投合。翌日の朝アメリカに帰るジェシーはそれまでの時間、一緒にウィーンの街を観光しないかとセリーヌを誘う。そしてウィーンで降りた2人は、次の日の朝まで街中をデートをするという物語です。

この映画の見どころは、2人が話す会話と美しい街並みです。彼らはウィーンの観光名所を次から次へと歩きます。その美しい街並みをバックに2人はずっと歩き続け、そしてずっと話し続けます。

特にストーリーはありません。ダラダラと話し続ける2人が映っているだけです。2人は親のこと、前の恋人のこと、宗教のこと、哲学や人生観など、普段友達ともしないような話を永遠としています。「初めて会った人とこんなに何でも話をするものか?」と思うかもしれません。しかし、彼らはこの出会いは今日だけのものと感じています。だからお互いに気兼ねなく何でも話をしてしまうのです。しかし、話を重ねれば重ねるほど、お互いにどんどん引かれ合ってきます。そして別れのとき、2人がとった行動とは?

この映画は1995年に作られています。当時は携帯電話も一般には普及しておらず、Eメールすらありませんでした。もちろんフェイスブックもありません。

この当時、偶然に出会ったアメリカ人とフランス人が連絡先を交換することなく別れるということは、それは一生の別れを意味します。その葛藤がものすごく切なく、そして愛らしく表現されています。今の時代ではもう作ることのできないラブストーリーですね。

この映画、なんと続編があります!「ビフォア・サンセット」というタイトルで、この映画から9年後の設定です。どちらもまだ見たことがない人はまずは「恋人までの距離(ディスタンス)」からご覧になってください。

今宵は夜更かしをして、映画を1本見てみるのはいかがですか?

(稲崎吾郎)
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