まるで、永遠に続くおとぎ話のような、メルヘンの世界が広がります。
360度回転しながら読み解く、メリーゴーランドのような楽しみもあります。
ドイツ生まれの日本の建築家、大野友資さんの作る『360°Book』。
繊細なディテールで、出演者ひとりひとりや植物それぞれに表情が感じられるデザインです。
海外で取り上げられることは何度もあるのに、意外にも、日本でメディアに紹介されるのは初めてだそうです。
このような世界観を作り出す、大野さんはどんな方なのでしょうか?
インタビューをさせていただきました。
Q.本業は建築デザイナーさんですが、なぜこのようなアートをはじめられたのですか?
A.僕が普段働いているノイズという建築デザイン集団では、プログラミングや3DCADを駆使するデジタルデザインをコンセプトに、建築だけでなくアートやインスタレーション、家具やプロダクトなど色々な分野のデザインを行っています。
職業柄、普段からモニターの中のCGの立体をどうやって現実世界に持ってくるかということを常に考えているのですが、あるとき、今回の本のように、立体の断面が放射状に層になることで、CGの立体を再現する方法を思いつきました。それを実際に紙で実現したのが360Bookという作品になります。
本の1ページ1ページはレーザーカットで正確に微細加工され、それらを重ねあわせることで、奥行きのある三次元の世界が広がっていきます。
Q.どのような時間にこのような作品を制作されるのでしょうか? また制作時間はどのくらいかかりますか?
A.データを作成するのは仕事が終わってから夜作業することが多いです。制作は週末などに、レーザーカットをしに出かけます。
思いついてから最終のデータをつくるのは大体1~2日間でしょうか。レーザーカット自体は1時間以内に終わり、製本の糊が乾くのに半日程度かかりますので、3~4日間といったところです。
Q.学生時代の得意科目はなんですか?
A.数学と物理が好きでした。語学も好きで、同じ意味の言葉を色々な言語で比較して楽しんだりしていました。
Q.手先が器用ですよね?(当然だと思いますが…)
A.手先は器用な方だと思います。建築模型を作るのも好きです。ただ、今回の作品ではレーザーカットを使っているので、製本以外は手作業はありません。
Q.今後どのような活動を考えていらっしゃいますか?
A.今後も建築をメインに活動していきたいと考えていますが、今までのように建築だけでなく、幅広い分野でものづくりをできればいいなと思っています。特に、異分野のプロの方々とのコレボレーションをもっとやっていきたいです。
Q.最後に制作への想いを教えてください。
A.作品一つ一つの完成度を上げることも勿論大事ですが、デザインのフォーマットを考えることに興味があります。
今回の場合、本を360°開くというシステム自体を僕の作品として考えており、だからこそ幾つものシリーズを出すことができていますし、これからも新しいお話を発表することができるのだと思っています。
少しだけ、大野さんの頭の中が覗けたような気がします。
本業の建築デザインや、新しい『360Book』の発表が楽しみです!
こちらのサイトで360°Book(sweet home/in a cheese)とこれらの本と同じ手法でデザインされたライトが販売されています。(まだ、日本へのシッピングが行われていないので、今後日本で購入できるようになるといいですね!)
大野友資(おおの・ゆうすけ)
一級建築士。ノイズアーキテクツ所属。設計実務において、コンピュテーショナル・デザインを実践的に使ったプロジェクトを進めている。2009年よりRGSSを共同主宰。
1983年 ドイツ生まれ
2006年 東京大学建築学科卒業
2008年 Joao Luis Carrilho da Graca Arquitectos (ポルトガル)
2009年 東京大学大学院工学系研究科建築学専攻修士課程修了
2009年~現在、ノイズアーキテクツ
2011年~現在、東京芸術大学藝術情報センター(AMC)非常勤講師
[Yusuke Oono ポートフォリオ]