「Instagram」というものが世の中にあるのだが。

皆さんはご存知だろうか。

この「Instagram」、オシャレ界隈、オシャレ横丁あたりでとても賑わっているやつで、
ツイッターが文字ベースならば、こちらは写真ベースが特徴らしい。

そのオシャレ惑星での盛り上がりが、ようやく地球に住む賽助氏の耳に届いたのは、
つい先日のことである。

「はッ! くだらなそう!」

彼は最初こそ鼻で笑いもしたが、結構流行っている的な感じになっていると聞くと、
途端気になってきてしまうのだから、彼もやはりミーハーなのである。

「やっぱり、市井の人たちが何に熱狂しているのかは知っておかないといけないし、
 そういう新たなツールからアイディアって、出てくるものだからね。
 たとえば携帯電話が普及したことでミステリ事情は大きく変わったわけで……」

体の良い言い訳を用意できた彼は、ではさっそく登録してみようとアプリを入手したものの、
まずその入り口、名前決めで立ち止まる。

「オシャレ人たちが交流する場なのだから、やはりオシャレっぽい名前が良いのだろうなあ」

彼がパッと思いついたのは、外国産の食器用洗剤の名前だった。

彼はその匂いが好きだったし、
「外国産の洗剤はオシャレだ」と思い込んでいる彼は、
その名前を勢い良く打ち込み、登録を完了。


完了したものの、ではいざ何をすれば良いか、彼は全く分からない。
検索ボタンを押してみても、出てくるのは外国人ばかりでどうにも目が回ってしまう。


「洒落た写真を載せれば、何か変わるだろうか……」


とりあえず彼は、ロシアのレストランの壁に飾ってあった
スティーブン=セガールの写真を載せることにした。
セガールならオシャレだと思ったのだが、多分そんなことはない。

こうして彼のInstagram生活が幕を開けたのである。
彼がInstagramで生活していけるのか、それともすぐ飽きるか、

それは彼にも分からないのだ。