今年の2月14日は日曜日だ。
これがどれだけ素晴らしい事であるか!

日曜日といえば、一般的には休日。
学校も休みだし、会社も休み。

つまり、一日中家に居られる。
好きな女の子が僕以外の誰かに何かを渡す様を、見なくて済む。
自分が誰にも何も貰えないことを、見られなくて済む。

「机の中にチョコを入れるから、男子は出て行ってよ!」

そう女子生徒たちに言われるがまま教室から外へ出て、
「もういいよ」との合図と共に教室内へ入り、
無いとは知りつつも自分の机の中をさぐり、
そしてやっぱり教科書以外に何も入っていないことを確認する様を、
女子生徒たちに見られずに済む。

同じくチョコが入っている筈も無かったノッポメガネのN君と視線を合わせずに済む。
苦笑いのN君と死んだ目をした僕が
「いや、お前が貰える筈ないだろ」とお互いを蔑まずに済む。

そしてトボトボと、一人で下校せずに済む。

それだけで素晴らしい。
素晴らしくない日に家に居られるだけで素晴らしい。

バレンタインデーが国民的行事になるのならば、
いっそのこと国民の休日にすれば良いんだ。

そうすれば2月14日を迎えるたびに、永久に家に居られる。

明けた月曜日のチョコは無効だからカウントしない。
好きな子が日曜日に密かに男子に会っていようが、密かだから知らない。
知らないことは分からないから大丈夫。

バレンタインデーは祝日となれ。
甘いチョコの裏側で、苦い思いを噛み締めたあの日の僕とN君の為に。