チャンネル 動画 記事 (5) 投稿が新しい順 コメント数の多い順 投稿が古い順 コメント数の少ない順 キーワード タグ 【第152回 直木賞 候補作】 『鬼はもとより』青山文平 コメ0 芥川賞・直木賞発表を楽しもう 120ヶ月前 「こう言っちゃ、なんでござんすが……」 と、下っ引きは言った。「こんなもんが、ほんとうに商いになるんですかい」 目は、広めの坪庭に並んだ万年青の鉢に注がれている。「俺は安く値付けしているからな」 奥脇抄一郎は答えた。「客はけっこう付いている」 時は宝暦八一七五八年、十月半ばのよく晴れた日の午近く。... 【第152回 直木賞 候補作】 『鬼はもとより』青山文平 コメ0 芥川賞・直木賞発表を楽しもう 120ヶ月前 「こう言っちゃ、なんでござんすが……」 と、下っ引きは言った。「こんなもんが、ほんとうに商いになるんですかい」 目は、広めの坪庭に並んだ万年青の鉢に注がれている。「俺は安く値付けしているからな」 奥脇抄一郎は答えた。「客はけっこう付いている」 時は宝暦八一七五八年、十月半ばのよく晴れた日の午近く。... 【第152回 直木賞 候補作】 『あなたの本当の人生は』大島真寿美 コメ1 芥川賞・直木賞発表を楽しもう 120ヶ月前 この小説を書いたのはわたし?? それともあなた? あなたはだあれ? わたしはだあれ? だれかおしえてくれないかしら? 四百字詰め原稿用紙三百枚分の没原稿(またしてもこんなに紙資源を無駄にしてしまった!)を前に、おまえそんなに森和木ホリーが好きなら弟子にならねえか、と鏡味氏に言われたのだった。編... 【第152回 直木賞 候補作】 『あなたの本当の人生は』大島真寿美 コメ1 芥川賞・直木賞発表を楽しもう 120ヶ月前 この小説を書いたのはわたし?? それともあなた? あなたはだあれ? わたしはだあれ? だれかおしえてくれないかしら? 四百字詰め原稿用紙三百枚分の没原稿(またしてもこんなに紙資源を無駄にしてしまった!)を前に、おまえそんなに森和木ホリーが好きなら弟子にならねえか、と鏡味氏に言われたのだった。編... 【第152回 直木賞 候補作】 『宇喜多の捨て嫁』木下昌輝 コメ0 芥川賞・直木賞発表を楽しもう 120ヶ月前 「相手は宇喜多の娘だ。それを嫁に迎えるなど、家中で毒蛇を放し飼いにするようなものぞ」 宇喜多家の居城・石山城(後の岡山城)に、そんな言葉が響いた。 本丸にある庭で、木刀を振っていた於葉の太刀筋が乱れる。心地よく風を切っていた切っ先が、苦しげに呻いたように聞こえた。於葉は動きを止めて、袖で頬を伝... 【第152回 直木賞 候補作】 『宇喜多の捨て嫁』木下昌輝 コメ0 芥川賞・直木賞発表を楽しもう 120ヶ月前 「相手は宇喜多の娘だ。それを嫁に迎えるなど、家中で毒蛇を放し飼いにするようなものぞ」 宇喜多家の居城・石山城(後の岡山城)に、そんな言葉が響いた。 本丸にある庭で、木刀を振っていた於葉の太刀筋が乱れる。心地よく風を切っていた切っ先が、苦しげに呻いたように聞こえた。於葉は動きを止めて、袖で頬を伝... 【第152回 直木賞 受賞作】『サラバ!』西加奈子 コメ0 芥川賞・直木賞発表を楽しもう 120ヶ月前 第一章 猟奇的な姉と、僕の幼少時代Ⅰ 僕はこの世界に、左足から登場した。 母の体外にそっと、本当にそっと左足を突き出して、ついでおずおずと、右足を出したそうだ。 両足を出してから、速やかに全身を現すことはなかった。しばらくその状態でいたのは、おそらく、新しい空気との距離を、測っていたのだろう。医師... 【第152回 直木賞 受賞作】『サラバ!』西加奈子 コメ0 芥川賞・直木賞発表を楽しもう 120ヶ月前 第一章 猟奇的な姉と、僕の幼少時代Ⅰ 僕はこの世界に、左足から登場した。 母の体外にそっと、本当にそっと左足を突き出して、ついでおずおずと、右足を出したそうだ。 両足を出してから、速やかに全身を現すことはなかった。しばらくその状態でいたのは、おそらく、新しい空気との距離を、測っていたのだろう。医師... 【第152回 直木賞 候補作】 『悟浄出立』万城目学 コメ0 芥川賞・直木賞発表を楽しもう 120ヶ月前 「上り坂ってのは、どうしてこうも神経をすり減らすものなのかね」 背負った行李を大儀そうに担ぎ直し、八戒はぶうと鼻を鳴らし、白い息を勢いよく宙に吐き出した。「あそこが頂上かな、と思って歩を進めると、決まって同じ風景がまた目の前に現れる。今度こそあの木のあたりがてっぺんで、そこから先は下り坂だろう... 【第152回 直木賞 候補作】 『悟浄出立』万城目学 コメ0 芥川賞・直木賞発表を楽しもう 120ヶ月前 「上り坂ってのは、どうしてこうも神経をすり減らすものなのかね」 背負った行李を大儀そうに担ぎ直し、八戒はぶうと鼻を鳴らし、白い息を勢いよく宙に吐き出した。「あそこが頂上かな、と思って歩を進めると、決まって同じ風景がまた目の前に現れる。今度こそあの木のあたりがてっぺんで、そこから先は下り坂だろう...