週刊文春デジタル
歴史上の人物を扱った小説を原作にした時代劇を観る楽しみの一つに、それぞれの人物がどれだけ原作小説や史実から受けるイメージの通りに配役されているか――がある。
そういう点で満点なのが、今回取り上げる松竹=加藤泰監督版『宮本武蔵』だ。
映画の『宮本武蔵』といえば、内田吐夢監督=中村錦之助主演による東映の五部作が決定版だ。が、配役という点では、吉川英治の原作のイメージからは大きく離れている意外性も少なくない。たとえば、ニヒルな佐々木小次郎に剛直な高倉健が配されていたり、武蔵を導く沢庵和尚に俗っ気の強い三國連太郎が配されていたり。そこは、違和感のあるキャスティングをあえてすることで人物に幅をもたらせようとする内田吐夢ならではの狙いもあるのだが。
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