「ストップいじめプロジェクトチーム」メンバーの明智カイトです。

今回は、私が共同代表を務めている「いのち リスペクト。ホワイトリボン・キャンペーン」の取り組みについてご紹介させていただきます。

3/18に同性愛者や性同一性障害者など性的マイノリティのいじめ対策について取り組んでいる「いのち リスペクト。ホワイトリボン・キャンペーン」は自民党の橋本岳衆議院議員の紹介により、馳浩衆議院議員と国会議事堂内にある自由民主党国会対策委員長室において面談しました。

現在、自民党では馳浩衆議院議員が中心となって「いじめ防止対策基本法案(仮称)」を作成しています。私たちは馳浩衆議院議員に対して性的マイノリティの子どもなど様々な背景を持った児童生徒がいじめの対象とされない環境づくりをしていただくように要望しました。 

馳浩衆議院議員はこれまで「性同一性障害者の性別の取扱いの特例に関する法律」の作成に中心的に関わってこられました。 

今後は性的マイノリティの子どもに対するいじめ対策についても取り組んでくださるとのことです。ただ技術的に、性的マイノリティなどいじめのターゲットに遭いやすいハイリスク層については「いじめ防止対策基本法案(仮称)」に書くよりも、行動計画のほうで言及したほうが良いと考えているそうです。

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(馳浩衆議院議員と国会議事堂内にて撮影)

■「いじめ」や「からかい」の対象になりやすい性的マイノリティの子どもたち

いじめの背景には、さまざまな要因が複雑に絡み合っていますが、その中でも同性愛者や性同一性障害者など性的マイノリティの子どもたちは「オカマ」「おとこおんな」といった蔑称のもとで頻繁にいじめの対象とされている現状があります。

宝塚大学の日高庸晴氏、岡山大学の中塚幹也氏らの調査によれば、いじめ被害にあったことのある当事者は半数を超え、また性同一性障害に関しては4人に1人が不登校を経験しています。性的マイノリティもしくは関連する悩みを抱く児童生徒には、教育を受ける機会が十分に保障されにくい状況があります。また周囲からの無理解や社会的孤立を背景とした自殺念慮や自殺関連行動は、全国平均の約6倍多いことが指摘されています。

このような生きづらさを背景として2012年に改定された自殺総合対策大綱においては「自殺念慮の割合等が高いことが指摘されている性的マイノリティについて、無理解や偏見等がその背景にある社会的要因の一つであると捉えて、教職員の理解を促進する」との文言が載りました。大綱を踏まえ、今後はその具体的な支援体制づくりを行う必要があります。

どのような背景を持つ相手であってもいじめは許されないことです。いじめを防止・解決するためには各方面からの取り組みが必要ですが、様々な背景を持った児童生徒を大人たちや地域社会が守っていくことの肯定的なメッセージも不可欠です。お互いの違いを尊重できる学級であってこそ、いじめに正面から取り組むことができます。

いじめ対策のなかで様々な背景を持つ児童生徒への包括的な視点が盛り込まれるように私たちはこれからも働き掛けを続けていきたいと思います。

■自民党の国会議員たちが「性的マイノリティに関する課題を考える会(仮称)」を設立へ

他の自民党の国会議員の方たちにも「いのち リスペクト。ホワイトリボン・キャンペーン」が中心となっていじめ対策における性的マイノリティの児童への対応などについて要望を行ってきました。

3/15には衆議院法務委員会において「同性パートナーの扱い」「地方公務員の採用試験で性的指向を尋ねる適性検査が行われている問題」についても言及されました。教育や雇用、社会保障など多面的な分野で性的マイノリティに対する差別や制度上の問題が存在していると言えます。

このような経緯から、ふくだ峰之衆議院議員の働きかけもあり自民党の中で「性的マイノリティに関する課題を考える会(仮称)」を設立することになりました。馳浩衆議院議員が会長を、牧島かれん衆議院議員が事務局を務めてくださるそうです。

今後は自民党の国会議員の方たちとも連携しながら、性的マイノリティが直面している課題について取り組んでいきたいと考えています。 

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(牧島かれん衆議院議員と衆議院第一議員会館にて撮影)

■馳浩衆議院議員との面談に同行してくれた大学生から感想をいただきました。

―政治家に直接声を届けることで社会が変わっていくということを実感(なつこ・早稲田大学4年)―

今回、当事者の声を伝える目的で馳浩衆議院議員に会いに行きました。

私は地方出身ということもあり、LGBTサポートにアクセスしにくい若者の現状を伝えました。高校時代に、友人の男の子が「ホモ」とからかわれて部活を辞めてしまい、それを見てありのままの自分を表に出すことに恐怖を感じて生きてきた事を話しました。

短い時間ではありましたが、馳浩衆議院議員は熱心に話を聞いて下さいました。

政治の世界は今まで自分とは関係のないものだと思っていましたが、今回の訪問で社会を変えて行くためには様々な方法があるということを知りました。「政治家に会って話をする」というのは自分にとって少しハードルが高かったのですが、メディアを通して情報を発信したり、教育を変えていくといった方法の他に、政治家に直接声を届けることで社会が変わっていくということを実感でき、大変有意義な機会になりました。

―国会議員へのロビー活動を体験して(前田健太・大学生)―

ロビー活動という言葉は聞いたことがあったけれど、あまりイメージがなく「とりあえず一緒に居てくれればいいよ」ということで自分に何が話せるか分からないけど、それでも役にたてればと思い、国会議事堂へ。中学の修学旅行以来ぶりで、また来るとは思っていなかった。国会議事堂の中は修学旅行のときのままのように感じた。

馳議員には自分の体験も含めて、ひどいイジメがなくとも友達や教師の同性愛を冗談にした笑いがあるだけでも、自分は笑われる側の存在なのかと自己肯定が難しいと伝えた。「冗談だからいいでしょ」ということではなく、そういったところからの意識も変わっていく必要がある。意識が先か、政策が先か、という話があるかもしれないが、その両輪で変えていかなければならない。意識を変えるための小規模の勉強会は開催しやすく、成果も感じやすい。

その一方、10年後、20年後を見据えた地道なロビー活動は気持ちを保つのが難しいと感じた。政権や社会状況に左右されて、一進一退なときもあり、これまで活動を続けてきた明智さんには頭がさがる想いばかり。国を動かすということに関しては、コミュニティの活動を新聞に取り上げてもらうだけでなく、ロビー活動をしていくということもとても大事だと感じた。

今回の一回だけの参加でも、今まで知らなかったこと、考えたことのなかったことに気づけた。それは知識だけでなく、人の想いも含め、多くの気づきと学びがあり、ぜひ他の性的マイノリティ当事者にも経験してもらいたいと思った。

(2013年3月18日 国会議事堂にて)

明智 カイト(あけち かいと)
「いのち リスペクト。ホワイトリボン・キャンペーン」共同代表。「ストップいじめプロジェクトチーム」メンバー。政府や国会議員に対して「子ども」「女性」「マイノリティ」の権利擁護や政策提言を行う。自身も中学生の時にいじめを受け、自殺未遂をした経験から、性的少数者の自殺防止活動にも取り組んでいる。

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