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「新しいリベラル」のための月刊誌 “α-Synodos”vol.300(2022/6/15)
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「新しいリベラル」のための月刊誌 “α-Synodos”vol.300(2022/6/15)

2022-06-15 14:19
    〇はじめに

    いつもαシノドスをお読みいただきありがとうございます。シノドスの芹沢一也です。今号も素晴らしい論考が揃いました。以下に簡単に内容を紹介いたします。

    01.武井彩佳「「歴史修正主義」を考える」
    「歴史的事実の全面的な否定を試みたり、意図的に矮小化したり、一側面のみを誇張したり、何らかの意図で歴史を書き替えようとすることを『歴史修正主義』と呼ぶ。・・・しかし、歴史を自分の都合のよいように『書き替える』ことと、過去の出来事に違った角度から光を当てて歴史を『書き直す』こととの区別は、容易ではない。」(武井彩佳『歴史修正主義』「はじめに」より)。武井氏はこうした観点から、ニュルンベルク裁判、ホロコースト否定論、アーヴィング裁判(映画『否定と肯定』のもとになった裁判)、フランスのゲソ法などのイシューを取り上げて論じていきます。これは現代社会の困難な問題に切り込むと同時に、「学問とは何か?」という問題に切り込む論考ともいえるように思います。歴史修正主義がどうのようにめぐりめぐって、私たちの問題なのか。武井氏にお話を伺いました。

    02.水溜真由美「堀田善衞が描く乱世――ウクライナ危機の中で読み直す」
    かつて日本は、国内に厳しい情報統制を敷き、批判には強権的な弾圧を加えながら、アジアの国々を軍事的に侵攻しました。現在のロシアのようにです。戦後、そうした体制への反省から、民主主義的な勢力が立ち上がりましたが、経済的に豊かになるにつれ、そうした情熱も風化していきました。そうしたなか、「戦争体験の忘却に抗い執拗に「乱世」を書き続けた作家」が堀田善衛です。乱世を描き、乱世における知識人のあり方を問いつづけた堀田の魅力に、水溜真由美さんの記事を通してぜひ触れていただければと思います。

    03.志田陽子「「AV新法」と「AV人権倫理機構」の試み――強要被害の防止と《自己決定》確保の道」
    現在、いわゆる「AV新法」法案の審議がなされており、6月中に成立する見通しだと報じられています。この法案をめぐっては、さまざまな立場の人たちから発言がなされていて、部外者には大変見通しが悪い状況になっています。そこで、「出演強要被害を防止し、出演者の人権と自己決定権を守ることを関心事として法務監督をおこなう第三者機関」であるAV人権倫理機構の代表理事である志田陽子さんに、同機構の活動について説明してしただきました。同機構の提言は、「個人の尊重と自己決定に軸を置いたリベラリズム思考をルール化したもの」です。この筋をきちんとおさえて、お読みいただければと思います。

    04.柿埜真吾「資本主義と自由(2)コロナ禍から民主主義を救った市場経済」
    今次のコロナ禍において、権威主義体制の方が民主主義体制よりも、リスクの管理に優れているという発言が多くの知識人からなされました。しかし、時間が推移するにつれ、そしてデータが出そろうにつれ、そうした見方は幻想だったということが明らかになりました。権威主義体制礼賛の最大の誤りは、「政府が正解をもっている」と前提していることではないでしょうか。中国のゼロコロナ政策への固執しかり、粗悪なワクチンしかりで、決してそのようなことはなく、結局、「正解」が導かれるのは、そしてそれが誤っているとわかったときに訂正されるのは、市場の競争や民主的な対話のプロセスを通してでしかないのです。

    05.芹沢一也「今月の1冊――小峯茂嗣『ぼくはロヒンギャ難民。』」
    今月、取り上げるのは、小峯茂嗣さんの『ぼくはロヒンギャ難民。』です。ロヒンギャ難民と呼ばれる人たちはどういう人で、いまどのような生活を強いられているのか。そのような状況に追いやった歴史的な背景はいったい何なのか。こうしたことが理解できるのはもちろんですが、過酷な状況に追いやられた人びとが、法に庇護されず集団で生活するとき、さまざまに生じてくる普遍的な出来事が見事に活写されています。つまり、ロヒンギャ難民という特定の事象を語ることを通して、「人間の性」としかいいようのない普遍的な事象を浮き彫りにしてます。

    次号は7月15日配信となります!
     
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