ミドンヘイムへの街道を歩くこと数日、一行が立ち寄ったのは、デルベルツという街であった。
街の東を川が流れている、大きな街である。
街の広場で、ひとりのハーフリングが、ウドーへ親しげに声をかけてきた。
彼はファットボーイという名で、ウドーとは旧知の仲であった。
二人のハーフリングは腕を組んで小躍りしながら、親しげに話を始めた。
ファットボーイの話では、金持ちである彼の主人が、貴重品警護のために人を雇いたがっているということだった。
驚くほど待遇のよい仕事に、皆はいぶかしみつつも、ひとまず話だけでも聞いてみようと、その金持ちのもとへ向かうことにした。
デルブ川沿いにある「鳥肉サラダ屋敷」が、その金持ちの屋敷である。
道中、その評判を伺ってみると、自称発明家の変人が住んでいるとのことだった。
立派な屋敷、その呼び鈴らしきロープを引っ張ると、屋内から響いたのは爆発音。
ファットボーイに案内されて屋敷の中を歩けば、一行には全く意味のわからない装置が、そこらに並んでいた。
好奇心のままに機械のボタンを押せば、コンベアに乗せられた七面鳥が現れ、装置の腕が羽根をむしるという珍事が起きる。
これほど風変わりな屋敷は、皆、見たことがなかった。
当の本人は屋敷におらず、川の傍にある物置のほうへ、皆は案内される。
博士は、常軌を逸した感性の持ち主であることが一目でわかる風体だった。
その名も、ウォルフガング・キューゲルシュライバー博士。
話によると、彼は毎晩のように、たかり屋に金を要求されているらしい。
それを追い払い、二度と来られないようにすれば、金貨を一人につき百枚、支払うと言う。
条件の良すぎる依頼だが、断る理由を持たない一行は承諾する。
彼はもうひとつ、研究の手伝いと称して、発明品である「潜水艇」を見せ、意見を求めた。
真面目に意見を述べる皆を見て上機嫌になった彼は、自分の発明品を持っていくように言う。
皆は「移動消火器」や「七面鳥羽根むしり機」や「水中呼吸装置」を目の前に、さんざん迷った。
悩み抜いた結果、バルデマーが選んだのは、ボタンを押すと剣が10ヤードほど飛び出してしまう「早抜き鞘」だった。
夜になると、空では雷が唸り、激しい雨が降るようになっていた。
変わり者の博士は、あろうことか雷を集めようとしているらしく、屋根の上に立てた尖塔の装置に、工夫をこらすなどしていた。
深夜、階下から物音がし、皆が様子を伺うと、黒ずくめの衣服に身をつつんだ怪しい者が、屋根へ駆けあがっていくところであった。
皆は急いでそれを追い、雷鳴とどろく屋根の上へ出た。
屋根に置かれた謎の装置へ近づこうとする黒ずくめに、皆は猛攻をしかける。
雨で濡れた屋根とあって、移動さえままならない者がいる一方、身軽なエルフのウルディサンが剣をひるがえし、相手に斬りかかった。
その後も、エルフは未だ見せたことのない勢いで白刃を踊らせ、ついに敵を打ち倒した。
敵の正体を見た皆は驚愕する。
たかり屋などではない。
それは、混沌勢力に与しているとの噂もある、ラットマンであったのだった。