今回、筆者が使っていたPDAを振り返ってみながら、かるくスマホの歴史をたどってみようと思います。
まあ、温故知新なんて言いますけど、ちょっと想い出してみたとかそんな感じです。
PDAとか、もう死語でしょうか、若い人だと聞いたことがないかも知れませんよね。
Personal Disital Assistantの頭文字で、個人用携帯情報端末なんて言われてましたね。
個人用携帯情報端末? それってスマホのことじゃないの? と。
はい、正解です。PDAは、スマートフォンの先祖的なものですよ。
ざっくり言うと、通話できないスマートフォンとでも言いますか、まだ携帯電話回線と完全な融合をする前のガジェットのことですね。
ちなみに、欧米において、スマートフォンと呼ばれる機種が出始めたのは、だいたい2000年くらいから、そして、今みたいなスマホの形を決定づけたアップルの初代iPhoneがアメリカに登場したのは2007年のことでした。
筆者が最初に買ったPDAは、カシオの「カシオペア E55 for DoCoMo」で、1998年12月に発売されました。
カシオペアに搭載されていたOS、Windows CEは、1996年に登場したPalm (パーム) という端末と人気を二分していた(いや、パームの方が人気でしたね、軽くて、動作もキビキビしていましたから)のですが、Windowsパソコンとの連携を売りに、マイクロソフトが推進していたモバイル用OSです。
これは、後のWindows Mobileですね。
ちなみに、アップルは当時何をしていたかというと、ニュートンと呼ばれた端末を1993年に発売していましたが、登場が少し早すぎたことや、「重くてかさばる」上に「使い勝手が悪く」て「高価」という三重苦で、話題にはのぼりましたけど、ほとんど見向きされていませんでした。
ニュートンの失敗を受けてから、iPhone登場まで、アップルが携帯情報端末の世界に顔を出すことはなかったんですね。
この端末は、NTTドコモから発売されたドコモ仕様のカシオ製モバイル端末で、ドコモの携帯電話とつないで、インターネット接続するためのアプリが標準で搭載されてました。
予定表、メーラー、手書きメモ帳、ボイスレコーダー、電卓、さらにはマイクロソフトの暇つぶしゲー定番、ソリティアといった、最低限必要なアプリは標準で備えていて、しかもアプリを後から追加することもできました。
もっとも、アプリの追加は今みたいに簡単じゃなくて、インストールにもソコソコ苦労話がありましたけどね。使えるアプリも数えられる程度しかありませんでしたし、探してくるのも大変でした。
今のスマホと比べると、さすがに古さを感じさせる大きさですが、電話機能さえ載れば、立派なスマートフォンになれるだけのポテンシャルを持っていましたよ。
ちなみに、ホンダのASIMOも、Windows CEで動いているというのは、ちょっとした豆知識ですね。
今のスマホも同じですが、パソコンのキーボードでの入力に慣れていると、携帯情報端末というと、どうしても長文入力に難がありますよね。
かといって、手軽に外に持ち出すには、ノートパソコンだとかさばり過ぎる。
そんなニーズに応えてくれていたのが、2000年にNTTドコモから出た、NEC製モバイル端末「シグマリオン」シリーズ。
筆者が使っていたのは、2001年発売のシグマリオンIIです。
現在でも、ノートパソコン、タブレット端末、スマホと、どれも一長一短、オビに短しタスキに長し。
結局、財力さえあれば全部を使い分けちゃうのが正解みたいな状況になってますけど、当時の携帯電話と、重いノートパソコンとの間を埋めてくれる、シグマリオンは、非常に使い勝手が良かったんですよ。
何と言っても、ミニキーボード付きというのがこの機種のポイント。
今でも、本機種を超える入力環境を備えた携帯端末には、出会えていません(筆者の個人的な感想です)
テーブルに置いて両手打ちはもちろん、左手で本体を持って、右手で入力というスタイルでも、快適にタイピングできましたよ。
ドコモの「P-in コンパクト」と組み合わせることで、携帯電話とは別回線でインターネットにつなぐことができました。
料金は高かったし、回線も遅かったし、今のような快適なモバイル環境とは雲泥の差でしたけど、これで通話さえできればなあ、なんて夢想していたものですよ。
簡易的な機能に限定されていましたけど、エクセル、ワードなどのオフィス・アプリが使えたというのも、強力なポイントでした。
タッチパネルを指で使うという、現在のスマホの手軽さは、携帯端末としては最適解だと思いますけど、スタイラスペンを使って、細かい部分を操作できるというのも、悪くない感じですよ。
ギャラクシーノートのように、スタイラスペンへの回帰を見せている端末もありますけど、指より小さい部分をポイントすることができるし、ペンも捨て難いんですよね。
そんな中、ついに日本初のスマートフォンが登場してきます。
2005年にウィルコムから登場した、W-ZERO3ですね。ウィルコムは、当時最も高速なモバイル接続を提供していたのですよ、いまや見る影もありませんが...
筆者は、残念ながらこの名機を手にすることがなかったんですけど、後継機であるWILLCOM 03を使っていました。
2008年6月の登場というタイミングは、同7月に登場したiPhone3Gとガチンコで衝突しましたが、iPhoneの持つ魅力の前に、セールス的には奮いませんでしたね。
ハード的な魅力もさることながら、ソフトバンクによる金銭的なサポート、そして同時に登場したApp Storeによって、比較的安心、簡単にアプリを導入できるという強力なメリットを持っていたiPhoneは、みなさんご存知のとおりスマートフォンのメインストリームとして、世界的にもダントツに進化を遂げていた日本製の高機能フィーチャーフォンをも飲み込んでいくのでした。
ちなみに、同年10月に、アメリカで初のAndroid端末T-Mobile G1が発売され、Android Market (現Google Play) もスタートしています。
さらには、日本でのAndroid端末の登場は、2009年7月ドコモから登場したHT-03Aが初となります。
その後のスマホの隆盛は、言うまでもないですよね。
先人たちの、知識や経験の上に、今のような快適なモバイル環境があるんですね。
そして、そんな進歩は、今後も同じように続いていくのでしょう。
携帯端末の世界で、iPhoneは確かに凄まじいほどのトレンドとなりましたが、もうそろそろ新しい何かが出てきそうな予感もします。
さすがに、Googleがプロジェクトを立ち上げている「プロジェクト・グラス」のような形まで行くには、もうしばらく時間がかかるでしょうけど、必要な情報だけを最小限得られて、他の人とも簡単に繋がれて、手を使わない入力方法による携帯端末というのは、待ち望まれる形でしょうね。
携帯情報端末の未来を、筆者が予想するとしたら、おそらく、そんなスカウターみたいな端末と、ノートパソコンのような生産性の高い端末とに二極化していくんじゃないか、なんて予想してますけど、どうなるでしょうね。
実際にどうなっていくのか、楽しみです。
(田中 宏和)