30年間にわたってレコーディングという作業に携わり続けてきた僕が、生まれて初めてレコーディングディレクターを経験したのは、1989年の1月だった。

そう、Xの初メジャーリリースアルバム「BLUE BLOOD」のレコーディングだ。

驚くなかれ、レコーディングの初日、レコーディングスタジオに足を踏み入れた瞬間に僕が思ったことは

「あれ・・・? そうか。僕、レコーディングディレクターって初めてだから、どうしたら良いのか、何も知らないじゃんか・・・」

というものだった。

何とでたらめというか、自由というか・・・自己流人生にもほどがある、という感じだ。

しかし、そんな気持ちはわずか数秒で心の中にしまいこんで、僕はすでにスタジオで準備を進めていたレコーディングエンジニアに、元気よく声をかけた。

「あようございまーっっす!!よろしくおねがいしあーっっす!」

「お!津田さん、待ってましたよ、よろしくお願いします!」

そう、僕のオリジナルな生きかたの場合、これで良いのだった。