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  • Memories 05 1990の4月から5月頃の記憶

    2021-05-06 11:162
    220pt

     1990年の春、僕はRose & Blood Tourや名古屋で行われたライブイベント「5時SAT ROCK WAVE '90」、川崎CLUB CITTA'で行われた「LIVE TOMATO」の公開ライブ収録などに同行していた。
     
     思えば、この頃の映像で「紅」の合唱になるセクションなどに流れているストリングスの音は、僕自身が演奏しているのだった。
     
     プロデュースという、答えのはっきりしない不思議な行為を続ける上で、僕がメンバーとバンドそのもの、そしてファンとの絆への愛情を一番中心に置き大切にしていたのは、これまで何度も文章にした通りだ。
     
     その方針だと、僕の瞳と心は何よりもまずメンバーの表情や心の動きに注がれることになる。

     この頃だと、やはり何よりも倒れて公演を延期せざるを得なかったYOSHIKIの体調が心配で、ツアー中も常に様子を見ていたし、この頃のメンバーはライブなどで音のクオリティを上げることに意識が高まっていて、試行錯誤を繰り返していたため、テクニシャンの起用や機材の購入などと併せて、常に音について真剣な会話をしていた。

     演奏についても出音についても、決して完璧な出来というのはないもので、ライブを終えるごとに反省と修正を繰り返す。

     そのためには、僕は僕なりに自分の音楽的素養をフルに活かしながら、真剣極まりないメンバーと、それぞれ個別に対応し、会話を続けていた。
     
     1990年の今頃がそんな毎日だったからだろう、タイムスリップをしてあの頃に戻った時、鮮やかに蘇るのはメンバーの様子とそれを取り巻く事実の動きであり、僕自身のことはあまり記憶にない。

     そして今回、1989年から1991年にかけての4月〜7月の資料を見ながら記憶を丁寧に掘り起こしていて、僕は自分がキーボードを演奏していたことも、その準備やリハーサルの細かな記憶も、演奏している瞬間の鍵盤の様子も、すっかり心の中から抜け落ちていることに気づいたのだ。
     
  • 『Memories』 特別寄稿 【HIDEへの手紙】

    2021-05-02 12:00


    ヒデちゃん、今年も手紙を書くね。


    たくさんのファンや、新しい才能を持ったクリエイター、そしてスタッフを含めてヒデちゃんと関わった多くの人たちに、夢と勇気をありがとう。

    未来へ進む力をありがとう。



    ヒデちゃんさあ、最近またXのことでインタビューを受けていてね、あの頃の記憶を話していて思ったことがあるんだ。

    1987年の終わりに5人と会ってから、どんな風にメンバーと繋がっていったのか尋ねられてね、最初にYOSHIKIと名曲を生み出す話を始めて、あとTAIJIとミュージシャン同士の会話して、それから春になってTOSHIくんとステージパフォーマンスのことを話し合って、でもPATAとHIDEとは特別に話さなかった、って答えたの。

    僕がギターのことあまりわかってないから、って。

    でね、PATAはほんとにギターだからあんまり話すことなくて・・・なんだけど、ヒデちゃんはちゃんと僕、考えてて、わざと話すのずっと最後までとっといた、っていう話をしたんだよね。

    インタビュアーの人が驚いて感心してた。

    まあ、この話はさ、おととしも本に書いた後、この手紙で伝えたけどね。

    それでね、僕がヒデちゃんと話すのをメンバーの中で一番最後にしたのが、ヒデちゃんがメンバーもファンもXっていうバンドも、みんなちゃんと広い心と優しい目で見つめていたからなんだ、って説明してね。

    だから僕とメンバーの様子も黙ってちゃんと見つめていて、YOSHIKIやTAIJIと繋がり始めたから、任せていて大丈夫、そのうちに話す時が来たら自分が話すってヒデちゃんが思ってるのを、僕がわかってたからなんだけど。

    僕さ、気がついたんだよね。

    ヒデちゃんがどうしてあんな風にメンバーやファンのことを、黙って見つめて包むみたいに理解してくれてたのか。

    きっとヒデちゃん、みんな自分のことみたいに感じてたんだね。

    ぜんぜん他人ごとじゃなくて。

    お酒飲んで二人で話してる時もよく、誰々がYOSHIKIのことわかってない、とか、ファンの気持ち考えたらかわいそうじゃん、とか、悔しそうに話してたでしょ。

    ヒデちゃんにとっては、みんな自分のことみたいに感じて真剣だったし辛かったんだな、って思った。

    僕はさ、そういうのって一番優しいと思う。

    それで、一番強いんだと思う。

    ヒデちゃんに、優しくて強いんだね、ってあの頃伝えられなかったのが残念。

    僕もまだあの頃はわかってなかったんだね。

    でも、だからここで伝えようと思った。

    僕もいろいろなことを自分のことのように感じることがあって、それがすごく大切なんだ、って今はわかってる。

    それをきちんとしてたヒデちゃんがすごいな、って思った。

    それに、ヒデちゃんが暴れてる時もね、僕は得意ですぐにヒデちゃんのそばに行ったでしょ。

    あの頃は本能で、ヒデちゃんの気持ちがわかるからそばに行ってたんだけど、ああやって暴れるヒデちゃんも、結局いろんなことを自分のことみたいに感じてるからだったんだね。

    いろんな人のことをわかって辛くなって、できること全部やって、たくさん助けて、でも誰も傷つけなくて、その代わり、たくさんのことを自分のことみたいに感じてたから、時々暴れちゃってたんだろうな、って今は思う。
    やっぱり、ヒデちゃんが優しいのは、ヒデちゃんが強いからなんだよね。

    あの頃は言えなかったけど、今は言える。

    そういうヒデちゃんのこと、僕は尊敬してる。



    今はネットでいろいろな動画を観ることができるから、作品だけじゃなくてアーティストの人柄なんかがよくわかるんだけど、やっぱりヒデちゃんの優しさと強さは映像からすごく伝わってくる。

    その姿に勇気づけられたり救われたりするファンやクリエイターがたくさんいるのが、僕は嬉しいよ。

    最近は、あまりに情報が多過ぎて、みんな何が正しくて何が素晴らしいのか分からなくなってきてしまっててね。

    でも、そんな時にヒデちゃんの姿を観ると安心するんだ。

    これからもたくさんの人たちに光を見せてね。

    ありがとう、ヒデちゃん。

    ヒデちゃん、本当にありがとうね。



    2021年5月2日

    津田直士


    *********************************** 

    (株)津田直士事務所スタッフからお知らせ

    ☆ Xにまつわる著書が御座います。この機会に是非お買い求めください
    ・『伝説のライナーノーツ』
     「BLUE BLOOD」や「Jealousy」に書いた文章とその背景を描いた最新刊
    ・『美しい記憶』
     「BLUE BLOOD」リリース30周年のために書き下ろした新刊
    ・『すべての始まり』
     Xとインディーズから東京ドームまでを共に駆け抜けた記憶を描いた代表作
    詳しくは 津田直士著書 紹介サイト をご覧ください

    ☆ 津田直士ニコニコチャンネル  https://ch.nicovideo.jp/tsudanaoshi 
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    ☆ 2017年夏、津田直士が寄稿した記事
     イミダス時事オピニオン「X JAPANが世界で評価される理由」

    ☆ 過去、5月2日に配信されたhideへのメッセージはこちら

    2020年 https://ch.nicovideo.jp/tsudanaoshi/blomaga/ar1895003
    2019年 https://ch.nicovideo.jp/tsudanaoshi/blomaga/ar1758710
    2018年 https://ch.nicovideo.jp/tsudanaoshi/blomaga/ar1508476
    2017年 https://ch.nicovideo.jp/tsudanaoshi/blomaga/ar1257668
    2016年 https://ch.nicovideo.jp/tsudanaoshi/blomaga/ar1020434
    2015年 https://ch.nicovideo.jp/tsudanaoshi/blomaga/ar782868
    2014年 https://ch.nicovideo.jp/tsudanaoshi/blomaga/ar521894

    【津田直士プロフィール】音楽プロデューサー/作曲家
    Sony Music在籍時に「BLUE BLOOD」「Jealousy」「ART OF LIFE」
    のCo ProducerとしてX JAPAN(当時はX)をプロデュース
    インディーズ時代から東京ドーム公演までをメンバーと共に駆け抜けた記憶
    の一部は、映画『WE ARE X』の中、インタビューという形で語られている。
    また、自署「すべての始まり」にはその記憶のすべてが描かれている。

  • Memories 04 「WEEK END」-2

    2021-04-25 13:00
    220pt

    [前回は・・・]

     周知の通り、シングルリリースされた「WEEK END」はアルバム「BLUE BLOOD」に収められた音源とはアレンジが異なる。
     
     レコーディング前にアレンジ作業を進めていく中で当時の僕が感じたのは、このアレンジが今後予定しているアルバム制作における、新たな音楽性を示しているのだろう、というものだった。
     
     そもそも「BLUE BLOOD」の制作がインディーズ時代からの「進化」を意図していたので、次のアルバムはさらなる進化を遂げるはずだ、という確信が僕にはあった。
     
     だから、TOSHI、HIDE、PATA、TAIJI、YOSHIKI5人の個性がより強く音楽に反映され、激しさも美しさも音質もより磨きがかかり、作品のスケールも大きくドラマティックになっていくはずだと思っていたのだ。
      
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     そんなイメージを持っていた僕にとって、後半のBメロから展開する新たなアレンジは、まさに僕が期待していた音楽的な進化そのものだった。

     ギターソロ後のAメロに続くBメロに入った瞬間、バックグラウンドのバンドサウンドが消え、TOSHIの歌とストリングスだけになる。