このように1989年秋のメンバーの様子は、自分自身との闘いをこれほど密に続ける状態を見るのは珍しい、と思うほどだった。
 
 人はよく不安や恐怖を乗り越えようとする時に集中して真剣な状態になるが、大きな目標に向かっている上でいくつか成功を収め、自信を得てさらに前進しようとする時は、不安や恐怖を乗り越えようとする時よりもさらに強いエネルギーを放ちながら、より効果的な前進のための知恵や工夫を重ねていき、とてつもない力を発揮することがある。
 
 野球やサッカーなど、スポーツで波に乗っているチームが見せる、勢いのある試合運びなどがそうだ。
 
 まさにこの頃のメンバーはその状態に入っていて、ライブ後の反省や確認などの際も、会話のテンポが早く、無駄がなくて意味のあるやり取りから新たなアイデアが生まれたりしながら、ライブのエネルギーはどんどん増していった。
 
 中には、そのようなメンバーの勢いに付いていけないまま、小さなミスをしてメンバーにもの凄い剣幕で叱られる若いスタッフもいて、現場の雰囲気はある種の緊張感と目にも止まらないスピード感に満ちていた。
 
 そのような緊迫感とライブの過密スケジュールがステージに強い影響をもたらし、伝説的なライブステージが次々に展開されていったのだが・・・。