音楽と本気で向き合う人生を始めてから、40年経った。
本気で向き合うといっても、まだ20才でミュージシャンになったばかりの頃はまだ若干の迷いや疑問もあっただろうと思う。
もちろん僕の場合、音楽人生以外の選択肢は存在しなかったけれど、学生時代は稼ぎも知れたものだったし、ミュージシャン (純粋に鍵盤の演奏家という意味) が自分の生業だとは思っていなかったから、プロデューサーやアレンジャー、作曲家などの職業に就いていない限りまだ音楽人生が軌道に乗っているとは言えなかったからだ。
ただ不思議なもので、そんな若かった頃も迷いや疑問はあったけれど不安はなかった。
つまり音楽人生は確定していたけれど、その内容がまた決定的ではなかったのだった。
その後、ソニーミュージック(当時はCBS・ソニーグループ)に入社する頃には本気度もかなり強くなっていて、その証拠に当時の僕は、自分が真っ当な音楽業界に変えていくために入社したのだ、とよく公言していたのだった。
新入社員にしては随分生意気な奴だったと思う。
だが入社して3年ほどは、なかなか本気を活用できる機会がなかった。
いずれ自分が本気の音楽人生というものを全開で展開できるよう、レコード会社の人間として習得できるあらゆることを身につけるため、毎日を過ごしていた。
そしていよいよ、僕の本気が炸裂する時が訪れる。
1988年の2月だ。
出会って間もない5人の若者のために、命懸けでプロデュースに取り組む。
そんな決意を固めたことで、僕の本気は全開になった。
しかし、この決意の裏にはとても重要な事実が存在していた。
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