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【夢と夕陽】67. 夢の始まり(12)
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【夢と夕陽】67. 夢の始まり(12)

2015-09-21 18:00

     
     僕がライブの感想をメンバーに楽屋で伝えた後、最後に「あとは音楽だね」と、ひとこと残して楽屋を後にしたことで、最初の感想に喜んでいたメンバーは、僕が帰った後で相当荒れたらしい。
     
     実際に僕がそのことを知ったのは、それからしばらく経ってからなのだが。
     
     ちょうど丸沢さんの一言でメンバーがブチキレたすぐ後、ということもあって、津田という人間を信用しかけていたのに、結局あいつも深く理解せずに分かったような口を利く、ただのレコード会社の人間じゃないか…そんな気持ちにメンバーはなったのかも知れない。
     
     ところがメンバーが荒れた時、YOSHIKIだけは冷静に「あの人の言ったことにはきっと意味があると思う」と話したらしい。
     
     おそらくYOSHIKIがそういう見方をしたのは、僕と二人だけでゆっくり話したことがあるからなのだろう。
     
     僕にしても、それは同じだった。
     
     実はあの時「あとは音楽だね」というひとことを付け加えるかどうか、一瞬迷ったのだった。
     
     そのひとことがメンバーを喜ばすものではない、と充分わかっていたからだ。
     
     でも僕は敢えてそのひとことを伝えた。
     
     それは、僕のライブの感想が生半可な気持ちで伝えたものではない、という意思表示でもあった。
     
     ただメンバーを喜ばすために感想を伝えたのではない。
     
     英雄のようなかっこよさと、それによって会場がひとつになる凄さが、ソニーミュージックという大きなレコード会社の数多い制作スタッフ誰一人として理解することがない。
     
     でも僕にとってはその凄さが、Xが過去見たことのない、選ばれた圧倒的なバンドである証なんだ、という強い感動を、ちゃんと伝えたかったのだ。
     
     そして僕は、YOSHIKIと二人で話した時、メンバーが現状に全く満足していない、悔しさの塊のような状態なのだ、と強く伝えてくれたことが嬉しかったのだ。
     
     現状に満足していないなら、進化の可能性は限りない。
     
     だからこそ僕は、メンバーと共に未来を創っていける、と思っているのだ。
     
     だから現状で英雄のようなかっこよさ、会場がひとつになる興奮、その二つ以外の部分で、進化すべきところを僕なりにちゃんと伝えようと思ったのだ。
     
     その一つが、爆音だけでメロディーが聞こえてこない現状の音楽面だったわけだ。
     
     メンバーの気に障るであろうことを承知の上で、敢えてそれを伝えたのは、これから険しい道をメンバーと共にのりこえながら未来を創っていきたいんだ、という僕の意志を表す意味も含まれていたのだ。
     
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