DEEP JAPAN
〜日本の伝統文化を後世に紡ぐ〜

彫師に聞く

第1回 彫金

痛みと厳しさと華麗さと

写真/石川真魚
(写真5枚)

はじめに

●日本が誇る豊饒な美的世界

 日本の刺青の芸術性は、図柄、型、色彩など、この国の風土からくる独自性とともに、彫物師たちの伝統の上に立つ、修練と優秀な技術によってのみ支えられるものである。

タトゥーは、刺青といわれるが、本来の刺青とは、犯罪者の印として顔や腕などに彫られていたものだ。300年前の日本では、顔や腕を見れば過去の罪状がわかるようになっていたのだ。

 これに対して、彫り物は、江戸時代の侍の着る陣羽織に憧れた市民たちがそのデザインを直接肌に彫り込んでしまったものを言う。現在の刺青は、こちらが語源である。後に浮世絵もモチーフとなり、最先端のファッションとともに痛みに耐える勇気や威勢のよさの象徴として人気を集めていく。

 そして、タトゥーは欧米諸国では古くから芸術として認められてきたもので、イギリス社会では貴族だけに許されたファッションであった。

 現在、世界各国で刺青に対するイメージも大きく変わってきた。多くの人々がファッションとして好きな絵柄や言葉を身体に刻んでいる。

 だが、その中でも日本の刺青は、日本の伝統であり、芸術なのだ。

 この伝統と文化を守る彫師たちの信念と活躍を紹介していく。