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R&Bフリーク以外は置き去りにするR&B評 第17編『SWV』
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R&Bフリーク以外は置き去りにするR&B評 第17編『SWV』

2016-01-26 20:54

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    「SWV」(エスダブリュヴイ)

    アメリカ・ニューヨーク出身の女性3人組R&Bグループ、SWV(Sisters With Voices)。TLCと並び、1990年代のフィメールR&Bシーンをリードした。
    1997年に解散するも、2012年に15年の時を経てアルバムをリリースし復活。


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    <TSUYOSHI評>

    60~70年代にかけてブラックミュージックの範疇において男女問わず多くのボーカル・コーラスグループが活躍していたが、なぜか80年代になるとその存在は一旦影を潜める。90年代になるとまた黒人によるボーカルグループの波がやってくる。そしていまやボーカルグループというフォーマット自体を新たに起こそうなんて雰囲気すら薄い。この浮き沈み感は一体なんなのだろう。今後またボーカル・コーラスグループのブームが起きたりすることは果たしてあるのだろうか。

    などと論文のテーマにでも成り得そうことを思いつつ、90年代に活躍した代表格のグループ・SWVの曲たちを聞き返してみた。『Right Here』『Weak』『You’re Always On My Mind』。どれも本当に良い曲だ。PVなどヴィジュアルのイメージ付けからしてもそうだが、トラックはストリートの匂いを立たせながらも、メロディーはとても聴きやすいというナイスなバランス感。SWVが世に出る以前には既にその地位を築いていたアン・ヴォーグがいたのだが、彼女達のセクシーなディーヴァ像とはまた違った角度でのグループ像の打ち出し方は当時かなり新鮮に映ったものだ。そういえば、彼女達がデビューした1992年の頃というのは全体的に曲のBPMが遅かった気がする。この頃のR&Bで育った人は流行のEDMとかは初めのうちは取っ付きにくかったりしたのではないだろうか。ともかく、遅めのテンポが多かったとはいえ、ことブラックミュージックというのはグルーブやノリありきの音楽。SWVを聞き返すと、どれだけBPMが遅かろうがひたすらトラックはグルーヴィーである。メロウな曲ですらグルーヴィー。R&BがHip hopと混ざりだして久しい頃だったからか、目には見えにくいがファンクネスすら感じる。このようなプロダクションは、リード・ヴォーカルのCokoによるどこかしら可愛らしい響きの声色となぜか相性がいい。また、ただグルーヴィーなだけでなく、どの曲もとてもメロディーが立っている。その立った旋律をちゃんと理解して表現しているCokoの技量は素晴らしい。ゴスペルが歌えると、フェイクも含め何かと説得力が増すものである。

    メロディーにも流行り廃りがある。欧米に限って言えば、ここ何年かで新しい方向性のメロディーのスタイルが当たり前になった。それらの中にも美しさやドラマ性を持ったメロディーは少なくないが、それまで蓄積してきた数十年のチャンネルだけで昨今のメロディーを感じようと思っても、そう簡単に享受できない類いのものに変わってきていたりする。やっとの思いでそれに慣れ始めている今、改めて90’sのR&Bとかを聴くともう新鮮に感じてしまう。まあ、10年ひと昔が2回以上も回ればそう感じるのが当たり前の事なのかもしれないが。時の流れと共に”R&B”のトレンドも変化していくわけだが、昨年発表された『Ain’t No Man』(https://youtu.be/YSkriKV0CCQ)は今様の雰囲気をまとってはいるが、フォー・トップスのネタ等のおかげでしっかりメロディーが立っている。往年のリスナーからすると聴きやすいのではないだろうか。とはいえ、相変わらずストリートの匂いをまとった雰囲気を醸し出すことができるSWVは非常にカッコいい。

    ひとつ興味深い曲を。Soulの香り漂う『It’s All About U』(https://youtu.be/vzcHz7ksWns)は先ほど触れた『Ain’t No Man』の1コーラス目のAメロを歌っているTajがメインを歌い、CokoとLeleeもヴァースを歌うという珍しい曲。SWVは基本Cokoがメインを張っているグループなので、メンバー3人がメインを歌い分けしているこの曲はとても貴重。しかしながら個々の個性が出ていて、個人的には好印象な曲である。SWVは皆で歌を回す感じの曲をもっとやってもいいんじゃないかと思うが、いかがだろうか。


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    <西崎信太郎 評>

    「テディが作ったリミックスは最低ね。最低のリミックスだと 思うわ」なんて、自身達のヒット曲"Right Here"のリミックス(マイケル・ジャクソン"Human Nature"をサンプリング)を行ったテディ・ライリーに対して、怖いもの知らずなコメントを当時残していたSWVの面々も、今や40代半ばの中年女性に。今よりも更に実力主義な'90年代において、その熾烈な競争劇は勝ち抜き、眩い功績を残したグループだっただけに、ビッグマウスを裏付ける実力があったことも確かで。90年代を代表するグループを挙げるとしたら、男性グループならボーイズⅡメン、ジョデシィ。女性グループなら、TLC、SWVじゃないでしょうか。グループ構成がデビュー時と多少異なるグループがあるものの、今なお新作リリース時にはシーンのビッグ・ニュースとして話題を集め続ける勝ち組。

    洋楽R&Bはヴァイナルから入ったので、ここ日本におけるR&Bのクラシックとして今なお愛されるデズリー"You Gotta Be"、アラウンド・ザ・ウェイ"Really Into You"、ジャネット・ジャクソン"That's The Way Love Goes"、ガブリエル"I Wish"らと並んで、SWVに初めて出会ったのが16歳のころ。初めて聴いた曲は"Right Here"。洋楽の世界の右も左も全く分からず、目にするアーティスト名が全て初見だった頃、アルファベットに慣れていない当時の僕が抱いたSWVの印象は「アーティスト名が覚えやすい。いいね」。田舎者の少年にとってみたら、好きになるキッカケなんてそんなものです。

    '90年代の頃のSWVはリアル・タイムで聴けなかったので、現行のSWVを聴けたのは'12年にリリースされた『I Missed Us』。嬉しかったですね、'90年代にやり残したやりたい事をそのままやりました、的なキャリアのコンテニュー作。個人的には'12年ベストR&Bアルバムの一つでした。しかも間もなく新作『Still』リリースのアナウンス。ズィンガラ"Love's Calling"ネタの"Ain't No Man"で掴みはバッチリ。今のリスナーは、業界に踊らされずに音楽を楽しむアーティストのスタンスをしっかり見定めてますよ。新作をひっさげての来日公演、期待しちゃいますね。垂直跳びで122cm跳ぶマイケル・ジョーダンのように、1.8秒で172km出る富士急のドドンパのように、ノーマル・ポジションから爆発的な声量を出すココの歌声にどよめく、あの空気をまた味わいたい。

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