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R&Bフリーク以外は置き去りにするR&B評 第16編『Smokey Robinson』
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R&Bフリーク以外は置き去りにするR&B評 第16編『Smokey Robinson』

2016-01-01 09:47
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    「Smokey Robinson」(スモーキー・ロビンソン)

    アメリカのR&Bシンガー・ソングライター、プロデューサー。
    名門レーベル、モータウンの設立に参加し、長く副社長を務めた。
    ブラックミュージック界の大御所。


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    <TSUYOSHI評>

    モータウン。超おおざっぱに言えば、ブラックミュージックが白人社会に受け入れられる道筋を作ったレコード会社。そこの第1号アーティストであり、のちにそこの副社長になるスモーキー・ロビンソン。この人がいなかったら、今日のR&Bはない。どの分野にもパイオニアは存在する。結果的にパイオニアになるためにはタイミングや時代性の絡みは無視できないが、しかしスモーキー・ロビンソンの周りには歌の才能がうごめいていた。同じ時期に同じ土地で”クイーン・オブ・ソウル”アレサ・フランクリンや、のちのフォー・トップス、同じデトロイト育ちなのにモータウンではなく南部はメンフィスのレコード会社・スタックスと契約したドラマティックス等がいたという奇跡。その才能達の中でスモーキー・ロビンソンがひとつ抜け出たのはなぜか。それは歌やパフォーマンスに加え、彼のソングライティング能力の非凡さのおかげと思われる。自身のグループであるミラクルズやソロでの曲だけに留まらず、テンプスやマーヴィン・ゲイなど初期のモータウンを彩った多くのグループの名曲に数多く携わっている。そのどれもが未だ色褪せず今もR&Bに多大なる影響を与え続けている。

    70年代・80年代になっても彼の作家・編曲家としての腕は決して錆びることなく、時代に背を向けることなく、『Cruisin’』『Being With You』など、常に第一線で作品を発表し続けた。個人的に『Cruisin’』のアレンジは大好きだ。各インストゥルメントが立っていて気持ちいいバランスで音のパーツがコラージュされている、そんなイメージ。AKAIのMPCを叩いてTrackを作るHip hopに通ずる感覚。さらにスモーキーの”ちりめんビブラート”も効いている。スモーキー・ロビンソンと言えば”ちりめんビブラート”なのだが、他にも彼の歌には特徴が多い。まず地声のキーか高い。なんせ普段の話をしている声のトーンが高い。そして地声とファルセット(裏声)との声色の差が少ない。パッと聴いただけでは判別不能。そして彼が”ライトスキン”であることも声の特徴に影響を及ぼしているのではなかろうか。モータウンは「ブラックミュージックが白人社会に受け入れられる道筋を作った」と先に言ったが、それは彼が”ライトスキン”であることも少なからず影響があるように思われる。黒人と白人の垣根を越えることのできる「声」。そう考えると多くのアメリカの人々にスモーキーの声が届いたのは当然だったのかもしれない。

    彼は作詞においてもボブ・ディランに「現代アメリカ最高の詩人」と言わしめる。そんな彼が2015年のBETミュージックアワードのライフタイム・アチーブメント・アワード受賞の際のスピーチで、会場にいる世界中でヒットを飛ばしている黒人アーティスト達に向かって「世界中に愛してくれる人が君たちにはいるのだから、うぬぼれず感謝すべき」と言うと会場はこの日唯一のスタンディングオベーション。一見説教じみた言葉も、彼にかかれば神の言葉。ニューエラをかぶった普段いきった感じに振る舞っていそうなHip hopなアーティスト達も、目をキラキラと輝かせながら拍手の嵐。スモーキー・ロビンソンの崇められ具合、リスペクトのされっぷりがよく分かる一場面だった。

    アレサ・フランクリンの父親が牧師をする教会にスモーキーは通っていて、幼い頃からよく知る仲のこの2人。かつてSoul Trainにてスモーキー・ロビンソン&ザ・ミラクルズ『Ooo Baby Baby』を2人で歌っている場面(https://youtu.be/Xy75z0trlDk)がある。仲の良さがうかがえてとても微笑ましいシーンだ。2人して鼻歌くらいの雰囲気で歌っているが、確実に素敵な音楽とハッピーな空気がそこには流れている。


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    <西崎信太郎 評>

    シンガーであり、ソングライターであり、詩人であり、レーベルの副社長である。肩書きはいくらでも出てくるソウル・シーンのオーソリティ。僕の父より年上の世代なので、少し遠い存在にはなってしまうけど(もちろん良い意味で)、スモーキーと言って直ぐに連想するのが"Cruisin'"。ディアンジェロがカバーしたことでもお馴染みのナンバー。僕はディアンジェロのフィルターを通してこの曲に出会ったけど、"I Love It When We're Cruisin' Together, The Music Is Played For Love"というリリックが常に頭の片隅に残っている。

    スモーキーと言えば、ソロ活動のほかにミラクルズの一員としての一面もある。驚いたのは'14年にリリースされた『Smokey & Friends』。共演メンバーの豪華さもさることながら、全盛期を知っているわけではないので憶測にはなってしまうけど、恐らく衰えを感じない喉が健在なのだと思う。1曲目からエルトン・ジョンとのデュエット曲"The Track Of My Tears"なんて大変豪華。 

    世代的に何かのフィルターを通してスモーキーのサウンドに触れる機会が多いけど、知れば知る程に深い。今一度スモーキーの輝かしいキャリアを振り返らねばと思う。
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