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2017年1月29日生放送『金元寿子と川上千尋のテラ娘屋』ラジオドラマ「桃太郎」脚本
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2017年1月29日生放送『金元寿子と川上千尋のテラ娘屋』ラジオドラマ「桃太郎」脚本

2017-03-01 12:00
    金元寿子:桃太郎(鬼退治出立時15歳)、お婆さん
    川上千尋:鬼(見た目18歳)、女鬼(人間成人女性)、犬、猿、雉、小童


    おばば「むぁ~しむかし。あるところにお爺さんとお婆さんが住んでおった。 ま、ワシなんじゃがな。 お爺さんは山へ狩猟目的で向かい、 お婆さんは川へ色々な目的で行ってたのじゃ。 ワシなんじゃがな」

    おばば「うーぬ…今日は食い付きが悪ぃなぁ… お爺さんがイノシシでも狩ってくれていれば良いが… そろそろ諦めて、山菜でも集めた方が良いかもしんないねぇ」
    おばば「と、その時ぃ! なんじゃあ、アレはぁ!」

    SE 走る

    おばば「自分で実況してるっちゅーのは、なんぞ恥ずかしいもんじゃねぇ」
    おばば「なんとおっきな桃だい。この釣り針でひっかけられるかね?」

    SE ヒュン!

    おばば「おぉ、ひっかかったひっかかった。 タモなんかより、抱き抱えるべきかねぇ」

    SE ジャバジャバ

    おばば「ううぅぅ…しゃっこいねぇ。(※冷やっこいの訛り) おいしいかわからないけんど、風邪ひいたら目も当てらんないから。 まだ早いけれど、帰るかい」


    SE ガラガラ

    おばば「おぉ、お爺さんや、やっと帰って来たかい。 なんぞ捕って来たかい?おぉ!うさぎじゃないか! まだ寒い季節だし、餌を与えて太らせてから頂こうかい。 それよりお爺さんや、これを見てくれないかい? 立派な桃だろう? お爺さんの鉈でココを切ってくれるかい?」

    SE 赤ん坊の泣き声

    おばば「おやおや! なんとたまげたことかい。 桃の中に赤ん坊が入ってるとは! …あ、ちょっと頬の所に傷が付いちゃったねぇ。 こんな十字傷をこさえちゃって…あぁ、痛かったねぇ。 ちょっと私の喉も痛くなってきたよぉ?」
    桃太郎「僕の名前は桃太郎。桃から生まれた男の子だから、桃太郎。 もうちょっと名前に願いをかけたりしてくれなかったのだろうか? なお、幼名は兎のお丸で、『うまる』だった。 兎のウンチ…コロコロしてたとは言え、『うまる』とは…」
    小童「兎丸はホント強ぇーなー! 鬼より強いんじゃね? うちの父ちゃん、力自慢だったんだけど 鬼に襲われてからしょぼくれちまって…情けないったらありゃしない…なんでも赤くてでっかくて、キラキラと髪が光ってるんだと! 人間の言葉を喋ろうとするらしいけれど、なんかへんな訛りなんだってさ」


    桃太郎「鬼かぁ…お爺さんもなんか 「悔しい…男としての尊厳が…」とかって悔しがってたし、 恐れられてる感じはするよね」
    小童「鬼が島から出て来ては、商人から金を巻き上げて、 女を連れ去ってるって聞いたぜ」
    桃太郎「なんだと!それは悪い奴じゃないか!」
    小童「だろ?なぁ、うまる…いや、桃太郎。 おまえやっつけて来ちゃえば? そしたら村の英雄じゃないか? むしろ本物の武士になれるかもしれないぜ?」
    桃太郎「もしも、僕の力が及ぶのであれば、やぶさかではない…… 困っている人がいるなら、僕が退治をしてやる!」
    小童「おぉ! カッケー☆」

    桃太郎「お爺さん、お婆さん。僕は、鬼が島に鬼退治に行きたいと思います!」

    おばば「桃太郎が急に鬼退治に行くと言うから驚いたが… …ならば、幾ばくかの路銀と、このきび団子を持って行きなさい。 美味しく作った方は消費期限が3日後。 あとは、兵糧丸(ひょうろうがん)と干飯(ほしいい)も用意して おいたから。無事に帰っておいでよ…帰ってきておくれよ…」
    桃太郎「お婆さん…必ず帰ってきます…」

    SE 川沿いの道

    イヌ「ちょいとそこ行く、桃太郎さん?」
    桃太郎「だ、誰だ! い、犬ぅ~?!」

    イヌ「あのきび団子名人をお婆ちゃんに持つ桃太郎さん。 話は聞いていますよ。あの鬼を退治しに旅立つのですよね? そんな大そうな事を成し遂げようとしているのにお供もいないとは、 後世にその伝説が伝えられる時に寂しくありませんか? そこで、もしもその名人の作るきび団子を頂けるのであれば、 この私めがお供いたしますが、如何ですか?」
    桃太郎「イヌが喋ってる上に、交渉しようとしてる…気持ち悪い!」
    イヌ「誰彼構わず言葉を発して交渉しようだなんて思いません。 あなた様が特別な存在だからです。」
    桃太郎「なにその、ほにゃららオリジナルみたいなの」
    イヌ「早く食わせろ下さい。」
    桃太郎「本音が隠せて無いよ(笑) だが、断る。 犬をお供にってどう考えても笛吹きかほら吹きでしょ。 何の役に立つのかも判らない。 なのに食料をでて30分もしないのに無駄にしたら、それこそ恥ずかしい。 さらば!」

    SE ダッシュ

    イヌ「なにも走って逃げなくても良いじゃねぇか、ケチっ!」


    SE 林

    サル「ウキッ!」
    桃太郎「ん?」
    サル「キッキー!!」
    桃太郎「そうだよな。さっきの犬が特殊なだけだよな? 普通はこうして言葉は交せないよ、うんうん。」
    サル「キゥ…クゥ」
    桃太郎「お、お前もきび団子を求めてるのか?」
    サル「キッキー♪ ウキィー☆」
    桃太郎「まさかと思うけれど…お供になるんだから寄越せ、とか言わないよな?」
    サル「…ウキ?(エヘッ♪)」
    桃太郎「戦力として見込みが厳しいのに、君を俺のお供とすれば 食事を与えるなどの義務が発生する。 生活を保障するだけの貢献を見込めなければ、上げる事が出来ない。 さらに言うならば、ここであげると言う事は報酬の前借りとなる。 そんな事が成立するほどの実績・信頼が自分にあると思ったの?」
    サル「……」
    桃太郎「そこで…実は消費期限を考えると、 もう少し日持ちする物があるなら好感しても良い。どうかな?」
    サル「キキッ♪」
    桃太郎「よし、交渉成立だ」


    SE 森の中

    雉「ケェーン」

    SE 切り捨てる

    雉「ギュっ!」

    SE バサリ

    桃太郎「雉も鳴かねば討たれまい」

    SE 足音


    SE 海

    桃太郎「ついに鬼が島に突入か…… 一人だが、鬼が何人出てこようとも俺は負けない!」

    SE 暫し波の音 →砂浜に飛び降りる


    女鬼「鬼が島へ、ようこそ!」
    桃太郎「お…に? 人間にしか見えないんだけれど」
    女鬼「そりゃ人間ですからねぇ。ご用件は私たちの退治、ですか?(半笑)」
    桃太郎「な、何がおかしい!それよりも、人間だと?」
    女鬼「ここに来られる男性はまず退治と言い出すのですが… まずは、お食事にしませんか?保存食を食い繋いで来たのでしょう?」
    桃太郎「いや、途中で狩った雉を焼いて食べたりしてたから、 それほどひもじい思いはしてないよ」
    女鬼「あら? まだ元服したてに見えるのに、 自分で狩った上で美味しく食べる事も出来るの? しっかり育てられたのね♪」
    桃太郎「お爺ちゃんもお婆ちゃんも良い人だからね!色々教えてもらったよ」
    女鬼「なるほどぉ?(挑戦的な笑顔で) じゃあ、お姉さんと一つ約束をして貰えないかしら? 切った張ったする前に、話し合いをして貰えるかしら? こちらから襲わない。 だから、喧嘩腰にならずに、一度しっかり向き合って欲しいの」
    桃太郎「…わかった。でも、危険と感じたら、刀を抜かせて頂くよ」
    女鬼「それで良いわ。 こちらよ」


    鬼「へ、へいラッシャイ(以後、片言)」
    桃太郎「うわー!!(錯乱)」

    SE 刀を抜いて振り回す

    女鬼「落ち着きなさーい! 約束はどうしたのよ!!」
    桃太郎「ご、ごめんなさい…あまちにうわさ通りだったもので」
    鬼「オレ、危害加エナイ。信ジテ貰エナイなら…オイ、タノム」
    女鬼「はいはい」
    桃太郎「何をしてるんだ?」
    女鬼「腕を縛ってるのよ。全身縛っても良いんだけど、面倒臭いし、 この程度で信じて貰えないかしら?」
    桃太郎「わ、わかった…」
    鬼「オレ、遠イ国カラ来タ。きりすとノ教エを知ッテ貰イタクテ」
    桃太郎「遠い国? ここで生まれ育ったんじゃないのか?」
    鬼「故郷ニ家族アル。モウ会エナイ思ウケド。同ジ人間。 生マレタ国違ウケド、肌ノ色トカ違ウケド、友達」
    桃太郎「え?え?? ちょっと確認するよ? 鬼かどうかは棚上げするとして… 遠い国の人の事を呼ぶ名称と考える事も出来るし…… 俺が聞いたことだけど、 まずお金を巻き上げてるって言うのは本当なのか?」
    鬼「オ金ハ代金トシテ貰ッテル。 コノ国デハ作ッテナイ物ヲ、売ルbusinessヲシテル。高ク売レル。 ダカラ、オ金ヲ沢山貰ウ」
    桃太郎「つまり、普通の商売をしている…じ、じゃあ、女をさらうって言うのは!?」
    女鬼「私みたいな存在ね。さらうなんて勝手に言ってるだけよ。 私は私の意思でここにいる。あんな閉塞的な村にいても何も変わらない。 この人達は目的もあるだろうけれど、きちんと人間として見てくれる。 女を子作りの道具として見ない。そして、お金もある… そりゃ選択肢として、村を棄ててこの人達に付くと言うのも出て来るわけ。 さらわれたんじゃない。こっちからついて行ったのよ。 それを不満に思って「さらった」と言い張ってる男もいるだろうし、 そう言うのが話の出処じゃないかしら?」
    桃太郎「じゃあ、鬼が悪いと言うのは…」
    女鬼「僻みよ。きっと」
    鬼「解ッテ貰エタカ?」
    桃太郎「なんてことだ…鬼が同じ人間…」
    女鬼「もしかしてだけど…その頬の傷。あんた、もしかして兎丸?」
    桃太郎「それは幼名だ!いまは桃太郎という名前だ!」
    女鬼「私、同じ村の出身よ?」
    桃太郎「え?」
    女鬼「あんたのお爺ちゃん、水浴びをしてたこの人の裸を見て、 凹んでたらしいわよ(半笑) つまり、そんなもんよ。 見た目が違う人間が自分達よりも勝っていた。 だから、みんなで寄ってたかって敵に仕立てあげた。 鬼の誕生の瞬間だわ」
    桃太郎「そんな…じゃあ、もしも、奪った金を返せ!って持ち帰ったら」
    女鬼「盗人よ。ただの盗人。あなたたちの方が罪人になるだけだわ。 と言うか、あなた自身、ここに来るように仕込まれてたんじゃない? 噂に聞いたけれど、あなたは親が居ない。 なぜならば、桃から生まれたから」
    桃太郎「あぁ、そうだ。桃から生まれたから桃太郎!」
    鬼「スバラシイ! 桃は隣りの大きな大陸では破邪の果実と言われ、聖なる物なのだ。 そこから生まれたなんて、 聖母マリアから生まれたキリスト様と同じくらいデス」
    桃太郎「お、おぅ…急にスラスラ喋るから、吃驚した」
    鬼「桃太郎サン。是非私達ト手ヲ取リ合イ、仲良クシテイキマショウ。 アナタなら出来ル思イマス」
    桃太郎「俺はこの為に生れて来たのかもしれない!」
    鬼「オ願イシマァス!」
    女鬼「むしろ人間じゃないのはあんたの方ってことだわね…ふっ」

    ※鬼と言われる人達がむしろ人間で、桃太郎こそが人間じゃないって話でした。
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