金元寿子…くらげ、
川上千尋…さかな、タコ、猿
さかな「大変だよ大変だよ!お妃さまの容体が悪化したって」
くらげ「やっぱり悪化してしまったか…で、何をそんなに急いでいるんだい?」
さかな「…それが…竜王様がお前のことを呼んでいるんだよ…!」
くらげ「え、私?」
さかな「そう。」
くらげ「はて…なんだろう」
さかな「とにかく行ってみよう!」
くらげ「わかった」
~~~竜宮~~
タコ「お妃さまのご病気は私どもの力だけではどうすることもできません。 しかし、何でも『猿の生き肝』が、こういう時には一番効き目があるそうでございます。 ここから南のほうに 猿が島というところがございます。 そこには猿がたくさん住んでおりますから、 使いをやって、猿を一匹お捕まえさせれば良いかと… そのお使いには、このくらげがよろしゅうございましょう。 これは形はみっともないやつでございますが、 四足があって自由に丘の上が歩けるのでございます。」
くらげ「私がですか!?」
さかな「大役じゃないか!!」
くらげ「いやいやいやいやいや私には荷が重すぎます!」
さかな「くらげ!」
くらげ「無理です!無理でございます!!」
さかな「くらげ!ちょっとこっちこい!」
(2匹でこっそり)
さかな「いいかくらげ。」
くらげ「無理だよおおおお」
さかな「落ち着くんだ!」
くらげ「無理だよっ! 私にそんな大役…」
さかな「お妃さまのためだよ。 ここで引き受けなかったら竜王様に何されるかわからないぞ」
くらげ「……………」
さかな「な?竜王様からのお言いつけだ」
くらげ「………」
くらげ「わ…かりました。して、その猿とは一体どんな形をしたものでしょうか」
タコ「それは真っ赤な顔をして、よく木の上にあがっていて、栗や柿が好きな動物だよ。」
くらげ「それはどうしたら捕まえられるでしょう?」
タコ「うまくだますのさ。猿の気に入りそうなことを言って、竜王様の御殿は立派で、 うまいものが沢山あるという話をして、猿が来たがるように話をするのさ」
くらげ「どうやって海の中へ猿を連れてきましょう」
タコ「お前、少しは自分で考えないか?」
くらげ「どのように連れてくるのが一番よいのでしょう?」
タコ「お前考える気はないのか?」
くらげ「どのように…」
タコ「…猿はお前がおぶってやるのさ」
くらげ「それはまた。ずいぶん重いでしょうね」
タコ「御奉公だ」
くらげ「へーい」
~~~~外~~~
くらげ「…ということで、猿が島のほうへ来ては見たが……」
くらげ「お!おお!いたいた。あれは猿だな。きっと猿だ。木の上にいる……よし」
くらげ「猿さん猿さん。いいお天気ですね」
猿「あぁいいお天気だ。で、お前さんはあまり見かけないが、どこから来たのだね」
くらげ「私はくらげといって竜王の御家来さ。 今日はあんまりお天気がいいので、ちょっと遠くの島まで遊びに来たのですが… なるほど。猿が島はいいところですね」
猿「うん。ここはいい所だとも。この通り、景色はいいし、栗や柿の実は沢山あるし、 こんないい所は他にないよ。さいっこうだね!」
くらげ「(笑いながら)ふっふふ…ははははそうだね。 猿が島はいい所だね。ふふ…だけど、竜宮とは比べ物にならないよ」
猿「竜宮?」
くらげ「そうさ。竜宮だよ。それを知らないのにいい所は他にないなんて!はははは(笑)」
猿「そんなにいい所なのか?」
くらげ「そりゃぁもぅ! どこもかしこも金銀やサンゴでできていて、 お庭には一年中栗や柿や色々な果物が、 取りきれないほどなっているんですよ」
猿「へぇ…(木から下りてきて) 本当にそんないい所なら私も行ってみたいな」
くらげM「よし。うまくいった」
くらげ「そうですか。おいでになるなら私が連れて行ってあげましょう!」
猿「うーん、しかし竜宮というのは海の中なのだろう?私は泳げないからなぁ」
くらげ「心配いらないよ!私がおぶってあげるから!さぁ行きましょう行きましょう!」
猿「おんぶ? おまえが?なーにをいってるんだよ! お前に俺をおぶっていけるわけないだろう」
くらげ「大丈夫だから!ほら! 行きましょう行きましょう♪ いーきーまーしょーう!」
猿「ったく…そんなら、頼むよ」
くらげ「まっかせておくれなさい!!」
~~~~すこし時間がたち~~
猿「なぁ、まだ着かないのか?」
くらげ「まだまだかかるんですよぉ」
猿「そっかぁ。た~い~く~つ~だ~なぁ~」
くらげ「まぁまぁ、しっかり掴まっていてくださいよ。暴れると海の底に落ちますよ」
猿「わ…わかったよ。おとなしくするよ」
くらげ「仕方ない。では、少しお話しでもしましょう。 猿さんは生き肝というものを持っておいでですか。」
猿「変なことを聞くなぁ。 そりゃぁ持っていないこともないが、それを聞いてどうするつもりだ?」
くらげ「そうですかそうですか!いやぁ、それはよかった。 だってその肝が一番肝心な用事だからねぇ。」
猿「何が肝心なんだ?」
くらげ「いえいえ クスクス こちらの話ですよ♪」
猿「な、なんだよぉ…なぁ、どういうわけだよ!言ってくれよ!!」
くらげ「どうしよっかなぁ言おうかなぁやめようかなぁ」
猿「吐け!言え!言わないと暴れるぞ!!」
くらげ「あああぁああわかったわかった!わかりました! そこまで言うなら言ってあげますよ。ふふっ♪ 実はこの間から竜王のお妃さまが御病気で、死にかけておいでになるのです。 それで、 猿の生き肝というのもをあげなければ、 とても助かる見込みがないというので私が貴方を誘い出しに来たのさ。 だから肝心の用事というのはあなたの生き肝なんですよ」。
猿「へ…へぇ。(震え) (平静を装い)っ…何だ。そんなことなのか。 私の生き肝で竜王のお妃さんの病気が治るというのなら、 生き肝ぐらい、いくらでもあげるよ。 だが、なぜそれをはじめから言わなかったかなぁ。 ちっとも知らないものだから、生き肝はつい出がけに、島へ置いてきたよ」
くらげ「え…生き肝を置いてきたって!?」
猿「そうさ。さっきいた松の木の枝に引っ掛けて干してあるのさ」
くらげ「干した!?」
猿「お前知らないの? 生き肝ってのはときどき出して、洗濯しないと汚れるものなんだよ」
くらげ「そんな…」
猿「初めから言ってくれていればなぁ」
くらげ「肝心の生き肝がなくっては竜宮へ連れて行っても仕方がないか…」
猿「あぁ。私だって竜宮へせっかく行くのにお土産がなくっては具合が悪い。 御苦労だけど、もう一度、島まで帰ってもらえるかな。 そうしたら生き肝を取ってくるから。」
くらげ「仕方ない…戻ろう」
~~~~島~~~~
くらげ「猿さん猿さん!いつまで何やっているんだ!早く生き肝を持って降りてきてよ!」
猿「とんでもない!おとといおいで!御苦労さま!!ふはははは」
くらげ「なんだよ!じゃぁ生き肝を取ってくる約束はどうしたの」
猿「馬鹿なくらげだなぁ! 誰が自分で生き肝を持っていくやつがあるものか。 生き肝を取られれば命がなくなるよ。 そんなのごめんだね! そんなにほしいなら上がっておいで! まぁでも、かわいそうに、あがってこられないだろう! あはははは」
~~~~海~~~~
くらげ「くそぉ…猿め…だまされた…」
さかな「おいおいくらげ! 猿はどうした。生き肝はどうした。どうした」
くらげ「それが…」
くらげ「………という理由で、猿に騙されたんだ…(しょんぼり)」
さかな「くらげ…なんで黙ってなかったんだよ」
くらげ「仕方ないだろう、つい喋りたくなっちゃったんだから」
さかな「ばかだなぁ」
くらげ「くぅ……」
さかな「ほら!急いで竜王様に御報告に行こう。俺も一緒に謝るから」
くらげ「ありがとう…」
((雷のSE))
さかな「申し訳ありません竜王様!どうか!どうかお許しを!」
くらげ「竜王様、申し訳ありませんでした」
((雷のSE))
さかな・くらげ「「ひいいぃぃいいいい」」
さかなN「こうして猿に騙され、おいそれと戻ってきたくらげは竜王様のお怒りに触れ、 竜王様の「懲らしめのためにこいつの骨の無くなるまでぶってぶってぶち据えろ」 という言葉通り色々な魚に寄ってたかって、 逃げ回るクラゲを捕まえては真ん中に引き据え、 めちゃめちゃにぶちすえたものですから、 とうとう体中の骨が、くなくなになって、今のような眼も鼻もない、 のっぺらぼうな骨なしのクラゲになってしまったのでした。」