チームラボ代表・猪子寿之さんの連載〈人類を前に進めたい〉。今回は、フィンランド・大阪・お台場……と、様々な場所でもうすぐ始まる展覧会を紹介していただきました。そして中国・深センで行うチームラボ初の「都市開発」の構想についても紹介! その都市で実現しようとしている、「新しいパブリック」のあり方とは――?(構成:稲葉ほたて)
フィンランドの新しい美術館に展示する「巨大な滝」
猪子 今日は最初に報告があるんだ。以前に話したパリのラ・ヴィレットでの展覧会「teamLab : Au-delà des limites」の日にちが決まったよ。まもなく5月15日から9月9日まで開催します。みんな遊びに来てね。
▲2018年5月15日(火)から9月9日(日)まで、フランス・パリのラ・ヴィレット(La Villette)にて、開催されるチームラボの展覧会「teamLab : Au-delà des limites」(意:境界のない世界)
それから二つめ。Amosというフィンランドで一番大きい私立美術館が新しい美術館を建ててリニューアルしていて、その新館Amos Rexが今年の8月30日にオープンするんだけど、そのオープニングエキシビジョンがチームラボなんだよね。8月30日から来年1月6日までの、長い展覧会なんだ。
▲Amos Rex(フィンランド)のオープニングエキシビジョンで展示される作品(Untitled)
【動画】Amos Rex opening with a teamLab exhibition in August 2018 from Amos Rex on Vimeo.
【参考記事】 ・"Aos Rex -museo avaa upottamalla kävijät toiseen todellisuuteen – japanilaiset poikkitaiteilijat täyttävät museon villillä digitaalimaailmalla"(yle , 25 Jan 2018)
・"AMOS REX’ OPENING EXHIBITION PRESENTS THE ART COLLECTIVE TEAMLAB"(Amos公式サイト)
この前、まだ工事中の会場で、新しい美術館の記者会見を、Amos館長とAmos Rexを設計した建築家と一緒にやったんだ。とても光栄なことだよね。
▲2018年1月25日 に行われた記者会見の様子
宇野 これは美術館の地下が展示場所になるの?
猪子 そうそう。すごく不思議な形をしているでしょ。地上は子供たちも遊べるドーム状の広場で、その地下が展示場になるの。今回チームラボは、このドームの内側の天井に、水が逆流する巨大な滝のデジタルアート作品を展示しようと思ってる。天井には地上と繋がっている穴が空いていて、そこに渦を巻きながら地上方向に流れ込んでいくんだよ。つまり、地上の天窓方向に力がかかっている状態で、この美術館の形状によって決定された水の動きで作品を創っているんだ。
▲地上からみたAmos Rexの完成予想図
宇野 なるほど、この巨大な空間全体が滝に包まれるようになっているわけだね。
「波」の迷路で鑑賞者を迷わせたい
猪子 そして夏には他の展覧会の予定もあるんだ。今年の7月14日から9月2日まで、大阪の堂島リバーフォーラムの開館10周年特別企画で依頼をもらって、日本画家の千住博さんとのコラボレーション展をやるの。堂島リバーフォーラムにはずっとお世話になっていて、「Music Festival, teamLab Jungle」もやったし、堂島ビエンナーレ2011ではチームラボは「百年海図巻」を展示したりしているの。そもそも最初の滝の作品である『憑依する滝』のデビューも堂島ビエンナーレ2013なんだよね。
千住博さんは、代表作の『ウォーターフォール」は1995年ヴェネツィア・ビエンナーレで名誉賞を受賞されていて、滝のシリーズが有名なんだ。もちろん、僕も、若い頃、直島にある千住さんの作品を若いころ初めて観て、ものすごく感動したんだよね。
宇野 芸術家一家で知られる千住家の人だよね。千住博さんは日本画家、千住明さんは作曲家で、千住真理子さんはバイオリニストという。
猪子 すごいよね。今回、千住さんの巨大な滝の作品と一緒に、チームラボは『Black Waves』という波の新しい作品を創っているの。北京の展覧会で展示した『花の森、埋れ失いそして生まれる』のように、歩いているうちにまるで波の中で自分を失って作品で迷ってしまうような感覚になったらいいなと思って創っているんだよ。
▲堂島リバーフォーラム開館10周年特別企画 千住博 & チームラボ コラボレーション展「水」で展示される新しい作品
http://10th.dojimariver.com/
https://www.teamlab.art/jp/e/waterness/
宇野 さっきのフィンランドの滝の作品もそうだったけど、空間ごと水に包まれていくような演出になっているわけだね。特に『Black Waves』って平面だからこそ成り立っている作品だったわけで、それが人間を包むように再現されているのは面白いね。つまり、この単純な配置の仕掛けによって、この作品が表現する「平面と立体の中間性」がより明確に伝わってくると思うんだよ。それって、配置を参考にした北京の『花の森、埋れ失いそして生まれる』で目指していた「観客を会場で迷わせることで鑑賞者の空間把握を殺す」というコンセプトとも親和性が高いと思う。
猪子 実は北京の展示中に、夜の時間を使って、会場で色々な実験をしていたんだ。この「波」の迷路もそのときに実験したことがあるよ。他にも色々と試していて、例えば「書」の作品の実験もやってるんだよね。
▲実験中の作品たち
宇野 この実験だと、文字が読めないようになっているんだね。わりとこの「書」の作品って、読めるか読めないかが重要だと思うよ。
猪子 どういうこと?
宇野 これまでの連載で「書というものは立体と平面の中間だ」という話はしてきたけど、その上で、ここに表れている漢字=表意文字って、いわば「言葉と絵の中間の存在」とも言えると思うんだよ。だから、単純に考えれば、文字が読めた方が漢字のその中間的な本質をより表現できるというふうに言える。ただ逆に、漢字から言葉の要素を抜き取る方が、むしろ人間が実空間で描いた痕跡を剥ぎ取られるから良いという見方もできるなとも思ったんだよ。どちらも別の面白さがあると思う。
猪子 なるほどね。実は読める文字ばかりの作品も作ろうかなと思ってたんだよね。
宇野 それにしても猪子さん、ある時期「なんでこんなに北京に行ってるんだろう?」と思っていたけど、夜中にこんなことしてたんだね。
猪子 空間があるうちに色んな実験をしたくてね。『クリスタル ユニバース』の次回作をつくるときとか、わざわざシンガポールに実験しに行ったり、そういうことは結構やってる。
宇野 常に昼が展覧会で、夜は実験場なんだね。なんというか、チームラボらしい戦い方で僕は好きだよ。
深センで実現する「パーソナルなものがパブリックになる」都市とは?
猪子 そして今、チームラボの新しい取り組みとして、中国・深センでの大規模な都市開発があるんだよね。のべ床面積が300万平米と、かなり大きな規模になるんだよ。
▲2018年4月21日に行われた、記者会見の様子。
【参考記事】
・中洲湾C FutureCity 未来城市 发布启航(深圳房地产信息网 szhome, 23 Aril 2018)
・水晶森林 – teamLab与中洲集团在深圳共造个性化城市(goooood, 24 April 2018)
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