宇野常寛が火曜日のキャスターを担当する番組「NewsX」の書き起こしをお届けします。6月11日に放送されたvol.39のテーマは「〈よみもの〉とECサイトの関係」。株式会社クラシコム代表取締役の青木耕平さんをゲストにお招きして、『北欧、暮らしの道具店』が開拓した、読み物としてのECサイトの可能性と、クリエイティブとコミュニティの新しいあり方について議論します。(構成:籔和馬)
NewsX vol.39 「〈よみもの〉とECサイトの関係」
2019年6月11日放送
ゲスト:青木耕平(株式会社クラシコム代表取締役)
アシスタント:大西ラドクリフ貴士
読み物をECサイトのコンテンツにするということ
大西 NewsX火曜日、今日のゲストは株式会社クラシコム代表、青木耕平さんで、テーマは「〈よみもの〉とECサイトの関係」です。
宇野 青木さんの会社クラシコムは『北欧、暮らしの道具店』というECサイトを運営されているんですが、僕にはただのECサイトには見えないんですよね。読み物もすごく多いし、単に商品を売っているんじゃなくて、その商品が持つ価値観を売っているところがあると思う。僕自身もずっとウェブで読み物をつくってきた人間なんですよ。実はこの秋に新しくウェブマガジンを立ち上げようと考えていて、その参考になるサイトを探している中で、『北欧、暮らしの道具店』は気になるサイトのひとつだったんです。読み物にテキスト以上の価値を持たせていく。画面の中のテキストとその外側にあるリアルなものを連動させていく。そういう話をいろいろ聞けたらなと思って青木さんを呼んじゃいました。
大西 最初のテーマは「『北欧、暮らしの道具店』とは」です。
宇野 まずは青木さんの会社クラシコムが運営している『北欧、暮らしの道具店』がどういうサイトかを説明していただいた上で、僕がいろいろ質問責めにするセクションから始めたいと思っています。
宇野 『北欧、暮らしの道具店』は、基本的にはECサイトなんですか?
青木 そうです。お店という場所になっていますね。ただ多くのECサイトは基本的には通信販売の事業なので、新しいお客様を広告で獲得して、ポイント制度やセールのような販促を打っていくことで常連になっていただいて、収益を出していくというモデルなんです。でも、我々の場合は広告で集客するというより、僕ら自身が読み物をたくさんつくることで、お客様に自分で来ていただくことを念頭に置いているサービスになりますね。
宇野 まずトップページにある、大人ブラウスのところをクリックして見てみます。
宇野 これは今一番売り出している商品になるんですか?
青木 そうですね。昨日出たばかりの商品ですね。
宇野 僕がこの商品ページを見たときに真っ先に思ったのは、写真と文字が量的に多いことなんですよね。商品ページもひとつのコンテンツという認識なんですよね?
青木 そもそも人が一番楽しんでいるコンテンツって何だろうと考えていたときに、本屋さんで売れている雑誌のコンテンツをみると、ファッションや車、音楽について書かれているんですよ。要は商品の情報を伝えているコンテンツが楽しみのために買われている状況がありました。ECサイトのコンテンツも、商品の情報でしかない。だから、それを売るための情報というより、楽しむための情報として提示したらどうなるんだろうというのが、我々の根本的な発想のひとつなんですよね。
宇野 僕はオタクで、仮面ライダーのフィギュアを集めたりしていて、フィギュアがすごく好きなんですけど、たしかに実際にフィギュアを買って眺めたり、飾ったり、写真を撮ったりしている時間よりも、メディコムトイさんが運営しているサイト「Sofvi.tokyo」などを読んでいる時間のほうが長いですね。
青木 もしかすると買う前のほうが楽しいかもしれない。もちろん僕らはECサイトなので物が売れないと困るんですが、それ以上に物の情報を楽しく編集して、読んでいただくこと自体に価値を見出しています。たとえば、このブラウスは1万円以上するからしっかりページをつくっているんだと思われるかもしれませんが、実は250円の商品でも同じくらいガッチリ作り込んでいるんですよ。つまり、そもそも根本的な目的が、読む人を楽しませるためにつくるというコンセプトなので、ページ当たりの収益性が高かろうが安かろうが、最高におもしろくつくろうという発想です。
宇野 すべての商品でこのようなページがつくられているわけですか?
青木 すべてこういう感じですね。
宇野 純粋に読み物だけのページもありましたよね?
青木 新しい読み物の記事の投稿は、だいたい1日5記事ぐらいですかね。
宇野 朝ごはんの記事を見てみましょうか。
青木 これはいろんな人が朝ごはんを、どういうふうに効率よく快適につくっているのかをインタビューさせていただいている記事です。ライフスタイル誌のような記事を、我々の編集スタッフがつくっているかたちになりますね。
宇野 商品の紹介はわかるんですが、こういう読み物記事はどういう編集方針でつくられているんですか?
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