新曲発売イベントはAKB48劇場があるドンキホーテの裏にある、秋葉原UDXで行われた。デビューシングルである「会いたかった」のCDをその場で買うと、CD1枚につき握手券が1枚もらえるというものだった。握手できるのは1枚につき、好きなメンバー一人だけ。
その時の緊張と興奮は今でも忘れられない。アイドル現場というもの自体初めての経験で、初めての握手会。相手は小林香菜だ。ぼくが初めてAKB48劇場に訪れてから「会いたかった」発売イベントまでの時期は、インディーズシングル「スカートひらり」の発売イベントが一通り終わった時期で、握手会のなかった時期であった。だからぼくも初めてAKBにハマった7月末から、この10月25日まで実に3ヶ月の間、握手会を経験することができなかったのだ。いずれやってくるとは思っていたが、ついにこの時がやって来てしまった! という気持ちだった。
公演では前述のようにはっきりとそれとわかるようなレスをもらい、この時すでに毎公演後に必ず手紙を書いてインフォ【※1】に提出するということをやっていた。しかし話したことはただの一度もない。果たして彼女はぼくのことをどの程度認識しているのだろうか?
握手会が始まり、しばらく様子を伺っていた。当然の如く、ファンがたくさん並んでいるメンバーもいればそうでないメンバーもいる。初めは賑わっていた握手列も次第にまばらになり、小林香菜の列は列が出来たり途切れたり、ということを繰り返す程度になった。いよいよ決心を決めて、列に並ぶ。ついに順番が回ってきた。ぼくは高なる鼓動を抑えながら、小林香菜に初めて対峙した。手には手紙を持っていった。それは過去に4回ほどインフォを通して送った手紙と同じ封筒で、キディランドで買った「アポロチョコ」のイラストがあしらわれた封筒だった。
ちろう「は、初めまして。いつもこの封筒で手紙を送っているんだけど・・・」