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今朝の「ほぼ惑」に登場するのは、「勇者ヨシヒコ」シリーズ、『指原の乱』で有名な放送作家の福田雄一氏。"絶妙に失礼"な指原が可能にした『指原の乱』の面白さに始まり、現在のテレビをめぐる問題へと話は進みました。
▼プロフィール
福田雄一(ふくだ・ゆういち)
1968年生まれ。放送作家、演出家、映画監督。劇団ブラボーカンパニー座長。近年の作品は、バラエティ番組で『ピカルの定理』『いきなり黄金伝説』、DVDオリジナル作品で「THE3名様」シリーズ、テレビドラマで『33分探偵』『東京DOGS』「勇者ヨシヒコ」シリーズ、映画で『大洗にも星はふるなり』『HK/変態仮面』『俺はまだ本気出してないだけ』など。自身も出演し、演出も手がけるテレビ東京系『指原の乱』は、業界視聴率ナンバーワン番組と評判だ。5月30日には指原莉乃主演の監督作『薔薇色のブー子』が、初夏には桐谷美玲主演の監督作『女子ーズ』の劇場公開がそれぞれ控えている。
◎構成・稲垣知郎、稲田豊史
■福田雄一のさっしー観
宇野 AKBファンには『指原の乱』(13年10月~14年3月)でおなじみの福田雄一さんですが、実は僕は福田さんがAKBに関わる以前に、インタビューさせてもらったことがあるんですよね。
福田 あのときの宇野さんのインタビューは本当に気に入っているんです。引っ越ししたとき、妻に雑誌類を全部捨てられたんですけど、あれだけは残してもらいました(笑)。
宇野 そう言ってもらえると嬉しいです(笑)。去年『AKBINGO!』で再会して、そしてまた『ヨシヒコ』あたりのことを聞きたいなって思っていたら『指原の乱』がもう面白くて仕方なくて……。もう福田雄一と指原莉乃のコンビもここまできたか、と。
福田 彼女とは、『ミューズの鏡』(12年1~6月)の撮影初日に初めて会ったんです。そのときに何となくお芝居を付けてもらいながら一日一緒に過ごして、「ああ、この子で『裸足のピクニック』をやりたいって思ったんですよ。
【編集部注】『裸足のピクニック』は矢口史靖監督の初監督映画作品。1993年公開。ある女子高生がどんどん不幸になっていく姿を描いたブラックコメディー。指原主演の『薔薇色のブー子』は本作の内容を彷彿とさせる。
『裸足のピクニック』って、無表情で感情がよく分からない女の子がどんどん不幸に見舞われていく話じゃないですか。無表情で何考えているかわからないということは、よほど佇まいの面白さがないと、その子を中心に映画は回っていかない。で、さっしーって決して芝居が上手ではないですし、表情がうまく作れるわけでもないし、女優としてなんの取り柄もないけど、とにかく佇まいが非常に面白かったんですよ。ポッと立たせた時になんとなくほっとけない、つい見てしまう。それで『裸足のピクニック』がはまるなあと。
宇野 当初さっしーとはどんなコミュニケーションを?
福田 当時の僕は『勇者ヨシヒコ』で話題になったので、けっこう仕事の引き合いがある状況でした。でも指原は、僕の作品は1本も見たことないって言うし、そもそも俺のこと全然知らないって(笑)。
宇野 さすが、さっしーですね。
福田 でも、俺のこと知らないっていうのが逆に嬉しくなっちゃって。好きなんですって言われると背負うものがあるじゃないですか。好かれてるからがんばらなきゃとか。でも、知らないって言われるといい感じでスーって気を抜けるんですよ。これは楽しめるぞって。
宇野 なるほど、これでいじり倒せるぞと(笑)。
福田 あと、あいつが待ち時間にセットの隅に座って、ボーッと考えているのを見ると、いじりたくてしょうがなくなるんですよ。「そんなこと言わないでくださいよー」って困らせてやりたい。生意気なこと言うと、秋元さんもきっと同じ気持ちなんだと思います。その感じが麻薬みたいなもので、さっしーと離れられない(笑)。業界の方は、僕がずっと秋元さんにさっしーと組まされてるって思ってるかもしれないんですけど、すべてのドラマに僕のほうから呼んでいるのが紛れもない事実です。
宇野 さっしーはもう「福田ファミリー」に入ってるんですね。ムロツヨシさんや山田孝之さんと同じで。
福田 彼女の中ではそうなってないですけど(笑)。すごいのは、秋元さんやテレビ局や電通の方たちが集まって喋っているとき、その8割9割は指原の話なんですよ。アイツこんなこと言いやがったよ、ムカつくだろ、とか。秋元さんは「いい大人が集まって指原の話ばっかりするのムカつくから、別の話をしようぜ」って言うんだけど、必ず10分後には指原の話に戻ってて、3時間とか話してる(笑)。そんな女の子ってなかなかいないですよね。
宇野 一昨年の8月に共著で出した『AKB48白熱論争』って、最初は総選挙の後の感想戦から始まっているので、さっしーのスキャンダルの前なんですよ。にもかかわらず、よしりんがさっしーのことを嫌いだっていうのがきっかけで、ずっとさっしーの話ばっかりしてるんですよ。その後、もう1回収録したんですけど、それまでの間に例の文春のスキャンダルがあって、また彼女の話。気がついたら俺たちはさっしーの話しかしていなかった。要するに、世界は指原さんを中心に動いてるんですよ(笑)。
▲「指原の乱」DVD-BOXは7月23日発売予定!
■『指原の乱』がネタにした「電通」と「テレビ」
宇野 さっしーはその後、福田さんの監督作『俺はまだ本気出してないだけ』にも出演し、そしてレギュラー番組として『指原の乱』が生まれるわけですが、あれってすごく変な番組だと思うんですよ。あの企画はどうやって始まったんですか?
福田 僕のドラマも映画も、発想の原点は基本的にはバラエティなので、やってないとすごく不安なんですが、そのとき僕が関わっていたのが『新堂本兄弟』だけだったんです。あれはトークバラエティなのでバラエティ脳を使うってとこまで行き着いていない。それで電通さんとかに、バラエティをやらせて欲しいってことをずっと言っていたんですよ。そうしたら、テレ東の深夜2時くらいだったら全然いいですよって言われて、『水曜どうでしょう』が真っ先に浮かびまして。それで、誰とやりたいかなって考えて出てきたのが、さっしーだったんです。
宇野 福田さんの考える『水曜どうでしょう』の魅力はなんですか?
福田 『水曜どうでしょう』の醍醐味って、大泉洋さんのとめどない文句だと思うんです。この前、大泉さんに直接聞いたんですけど、「俺は正論を言ってるだけなんだ。ただ立場が弱いだけなんだ。俺は常に正論を言う弱者なんだ!」って(笑)。それはすごく良い言葉で、指原にも当てはまる。彼女もずっと正論を言っているんですよ。なんでこうじゃないんだ!
って。それをあの絶妙なブサイク面で言うから、面白い。それを秋元さんに言ったら「たしかにあいつがテレビで、ちょっとそこは電通さんでなんとかなんないですかね~って言ってたら面白いよね」って言ってくれたんです。
宇野 電通(笑)。
福田 じゃあ指原が電通っていうワードを口にできる番組って何だろうと考えたら、やっぱりあいつの絶妙な失礼を駆使して、業界のものすごく偉い人に食い込んでいって、自分の夢を叶える内容かなと。それでタイトルは『指原の乱』が一番良いだろうなと思ったわけです。
宇野 『指原の乱』にはビックリしましたね。構造自体は昔の80年代から90年代にかけての、テレビに勢いがあった頃の「業界の裏側見せちゃいますよ」的なものなんだけど、こういうの、今はやらなくなってるじゃないですか。「裏側見せます」って言ったって所詮はテレビ、ネットでダダ漏れしている情報にはかなわないですし。
でも、この番組ははっきり言って心ある若者からは嫌われている「テレビ」と「電通」を、アイドルがメタ的にいじり倒すことによって、8、90年代のときには触れられなかったものに触れてしまっている。言い換えると、テレビが最後のパンツを脱いでしまっている。だから、2013年に、テレビはここまで来てしまったんだなって思いましたよ。だって、どれだけオーディションの過程を見せても、女の子の涙を見せても、楽屋ネタや内輪ネタを見せても、「電通さん何とかしてくださいよ」って言葉はさすがに出ませんから(笑)。
福田 電通は今まで絶対、表に出てこなかったフィクサーですからね。基本的に僕と指原が喋った部分の8割はカットされているんですけど、そこには電通へのおもしろすぎるメッセージがいっぱい含まれています。ちょっと具体的には言えないんですが(笑)。
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最終更新日:2024-11-13 07:00
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