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アニメーションは日本の戦後をどう描いたか
──「理想」と「虚構」の時代の終焉と、
ロボットアニメが描いたもの・後編
(宇野常寛の対話と講義録)
【毎週金曜日配信】
☆ ほぼ日刊惑星開発委員会 ☆
2016.3.11 vol.539

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今朝の「宇野常寛の対話と講義録」では、昨年大学で行われた宇野常寛の講義の内容をお送りします。戦後日本が抱えた「大人になれない少年」というトラウマが、機械の身体によって「父の力」を代行するロボットアニメを誕生させます。『ガンダム』『エヴァ』――そして虚構の敗北が明らかになる1995年からインターネットの時代までを論じます。

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前編はこちらから。


■特撮ドラマが描いたもの

 「アトムの命題」と大塚英志が呼んだものは、普通には成長できない、大人になることができない日本人の子供たちがどう成熟していくのか、という問題だと言い換えることができます。同時に、この「アトムの命題」の歴史的な背景を説明すると、原作者の手塚治虫は現在の漫画文化の創始者であると同時に、最初にテレビアニメを作り始めた人でもあります。もちろん漫画は戦前からあるのですが、今のような形式でのコマ割りのストーリー漫画を作ったのは手塚治虫だと言われています。コマごとに色々なシーンが連続し移り変わっていく。これは映画のフィルムのコマに酷似しています。言わば、ハリウッド映画を紙に置き換えたものとして、手塚治虫はコマ割りのストーリー漫画を作っていったのです。
 同じように手塚治虫は、ディズニーの劣化コピーとしての国産アニメーションスタジオ「虫プロ」を作りました。つまり日本の漫画やアニメというのは、手塚治虫がハリウッド映画を紙に置き換える、あるいはテレビ向けのリミテッド・アニメーションに置き換えることで生まれていったという歴史があります。しかし、精神的、経済的、技術的な理由からアメリカのものをそのまま輸入することができず、日本の実情に合った形にしなければなりませんでした。そのため少なからず表現の制約や設定の変化が発生し、ストーリーも独特の傾向を帯びるようになっていくわけです。これが日本のアニメーションの基本的な性格のひとつになっていきます。

 これは余談ですが、手塚治虫がアニメを作り始めた頃にテレビシーンにおいて仮想敵となったもののひとつが特撮です。テレビは1960年代に一般家庭に普及していくのですが、それ以前の1950年代から60年代前半は映画が大衆娯楽の中心でした。その中で日本独特のジャンルとして、怪獣映画がありました。その中心として活躍する円谷プロを作った円谷英二は、戦中までは戦意高揚映画を作っていて、日本軍の宣伝のための作品を数多く手掛けていました。そこで様々な特撮技術を確立し、後に『ゴジラ』や『ウルトラマン』を作っていきます。彼の特撮技術は本当にすごくて、戦後にアメリカからやってきた進駐軍が、円谷英二がミニチュアで作ったハワイ・マレー沖海戦の映像を観て、「戦闘中にこんな映像を撮っていたのか」「日本軍はどんなすごい高性能カメラを持っているんだ」とびっくりしたという逸話すらあります。
 円谷英二は職人肌の技術屋という側面が強い人ですが、そういった経緯もあり戦後に公職追放されてしまいます。その後、映画業界に戻ってきて最初に作ったのが『ゴジラ』です。そして独立してTBSと組んで作ったのが『ウルトラマン』です。つまり特撮という技術は戦争が生んだものなのです。
 その結果、ストーリーも戦争から大きな影響を受けています。その一例として、初代『ゴジラ』はアメリカの核実験で遠洋漁業の漁船が被ばくし乗組員が死亡した第五福竜丸事件から着想を得ています。南太平洋でアメリカが水爆実験を行った結果、古代生物が凶暴化して日本を襲うというのが『ゴジラ』の物語です。『ウルトラマン』になるとそれがもっと露骨になっていて、およそ怪獣のイメージソースは東側諸国です。対する科学特捜隊やウルトラ警備隊のベースは自衛隊です。自衛隊は怪獣=ソ連や中国の攻撃に対して何とか抵抗するのですが結局倒せずに、最終的にはウルトラマン=在日米軍が出てきて解決するというのが『ウルトラマン』です。『ウルトラマン』では最終回付近になると、地球人類=日本人は自分たちの手で自身を守れるのか、というテーマが展開しています。


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