●福岡県筑紫野市地域編集長 河 蒸気の記事をご紹介します!
でき過ぎていて信じられないかもしれないが、僕の見たありのままを書く。
いっさい誇張はしていない。
5月の半ば、2度目に『江戸東京そば 源』を訪れた時のこと。
手打ち蕎麦は往々にして高くつくので、僕の安月給ではそう続けて食べに行けないのだ。
午後3時まで営業のところ、あえて2時を回ってから店に出向く。
他の客が先にひけたのを見計らって取材を申し込み、
あわよくばその場で店主から話を聞こうと考えた。
ところが蕎麦までたどり着く前に、思わぬハプニングが。
店の一番奥のテーブルで、五十がらみの着飾った女性が、ヒステリックにまくし立てていた。
その隣に、すました顔の十代後半くらいの女の子。
向かいの席には、大きな体を縮こまらせている青年。
会話は筒抜けで、状況はすぐにわかった。
大学生になって一人暮らしを始めた息子と、生活の乱れを心配して押しかけた母親、
野次馬根性でついてきた妹の図。
目の当たりにして、予想通りの暮らしぶりが母親の逆鱗に触れたのだろうか。
ときどき息子が消え入りそうな声で言い訳。
さらに妹が無責任な合の手をいれることで、店内はますます喧しくなり、
落ち着いて食事ができる雰囲気ではなくなっていた。
その母親の繰り言が止まった。
蕎麦を運んできた賄いの女性から、味が落ちるので早目に食べるように促され、
不承不承といった顔つきで箸を手に。
そして一口たぐった瞬間。
あらっとでもいうように動きを止め、3人分の給仕を終えて
立ち去ろうとしている店員を呼び止めた。
「ちょっと、これ十割なの?」
賄いの女性の顔は完全に引きつっていた。
「十割です」
「ほんとに?」
「はい」
「ちょっと信じられない。なにもツナギを使ってないの?」
「使ってません」
そこから先は予想だにしていない展開。
喜色満面で次から次に蕎麦をたぐる母親と、うつむいたまま黙って口を動かす息子。
納得のいかない面もちの妹。
親子の一挙一動から目が離せず、蕎麦を味わうことすら忘れていた。
肝心の取材許可も貰い忘れて、狐につままれたような気分で店を後に。
あの母親の豹変ぶりは源の十割蕎麦が非凡だという証明でもある。
なにより、これを記事にしない手はない。
ようやく記事にする許可を取り付けたのは、それからさらに1ヶ月後。
取材は終始、和やかな雰囲気で行われた。
いざ核心に触れたときの、この言葉だけが忘れられない。
「うちの蕎麦は茹でたてが命です。お客さんにはすぐに食べるように言います。
それでも箸をつけないときは、叱りつけてでも食べさせます。
セイロ1枚は量的にあまり多くありません。女性でもツルっと入る量です。
逆に言えば、そのくらいの時間で食べきって欲しいんです」
言葉の強さに驚いて、思わず店主の顔を見返す。
笑みこそ絶やさぬものの、目が真剣だった。
3分が経過した時点で、肌理の細かさは半ばほど失われ、表面がでこぼこしてきている。
6分経つとコシはほとんど感じられない。この変わりようは予想の範疇を超えた。
「会話を楽しみたい場合は、そば懐石(2500円)があります。
前日までに予約が必要ですが、ぜひご利用ください」
細麺とコシの秘密は、食べ頃を極短時間に凝縮する蕎麦打ちの技術にあった。
▼江戸東京そば 源
福岡県筑紫野市古賀695-2(地図を表示する)
092-923-6923
昼 11時30分〜15時
夜 18時〜20時
火曜定休
駐車場あり
JR鹿児島本線天拝山駅より徒歩15分

でき過ぎていて信じられないかもしれないが、僕の見たありのままを書く。
いっさい誇張はしていない。
5月の半ば、2度目に『江戸東京そば 源』を訪れた時のこと。
手打ち蕎麦は往々にして高くつくので、僕の安月給ではそう続けて食べに行けないのだ。
午後3時まで営業のところ、あえて2時を回ってから店に出向く。
他の客が先にひけたのを見計らって取材を申し込み、
あわよくばその場で店主から話を聞こうと考えた。

ところが蕎麦までたどり着く前に、思わぬハプニングが。
店の一番奥のテーブルで、五十がらみの着飾った女性が、ヒステリックにまくし立てていた。
その隣に、すました顔の十代後半くらいの女の子。
向かいの席には、大きな体を縮こまらせている青年。
会話は筒抜けで、状況はすぐにわかった。
大学生になって一人暮らしを始めた息子と、生活の乱れを心配して押しかけた母親、
野次馬根性でついてきた妹の図。
目の当たりにして、予想通りの暮らしぶりが母親の逆鱗に触れたのだろうか。
ときどき息子が消え入りそうな声で言い訳。
さらに妹が無責任な合の手をいれることで、店内はますます喧しくなり、
落ち着いて食事ができる雰囲気ではなくなっていた。




その母親の繰り言が止まった。
蕎麦を運んできた賄いの女性から、味が落ちるので早目に食べるように促され、
不承不承といった顔つきで箸を手に。
そして一口たぐった瞬間。
あらっとでもいうように動きを止め、3人分の給仕を終えて
立ち去ろうとしている店員を呼び止めた。
「ちょっと、これ十割なの?」
賄いの女性の顔は完全に引きつっていた。
「十割です」
「ほんとに?」
「はい」
「ちょっと信じられない。なにもツナギを使ってないの?」
「使ってません」
そこから先は予想だにしていない展開。
喜色満面で次から次に蕎麦をたぐる母親と、うつむいたまま黙って口を動かす息子。
納得のいかない面もちの妹。
親子の一挙一動から目が離せず、蕎麦を味わうことすら忘れていた。
肝心の取材許可も貰い忘れて、狐につままれたような気分で店を後に。
あの母親の豹変ぶりは源の十割蕎麦が非凡だという証明でもある。
なにより、これを記事にしない手はない。

ようやく記事にする許可を取り付けたのは、それからさらに1ヶ月後。
取材は終始、和やかな雰囲気で行われた。
いざ核心に触れたときの、この言葉だけが忘れられない。
「うちの蕎麦は茹でたてが命です。お客さんにはすぐに食べるように言います。
それでも箸をつけないときは、叱りつけてでも食べさせます。
セイロ1枚は量的にあまり多くありません。女性でもツルっと入る量です。
逆に言えば、そのくらいの時間で食べきって欲しいんです」
言葉の強さに驚いて、思わず店主の顔を見返す。
笑みこそ絶やさぬものの、目が真剣だった。

3分が経過した時点で、肌理の細かさは半ばほど失われ、表面がでこぼこしてきている。
6分経つとコシはほとんど感じられない。この変わりようは予想の範疇を超えた。

「会話を楽しみたい場合は、そば懐石(2500円)があります。
前日までに予約が必要ですが、ぜひご利用ください」
細麺とコシの秘密は、食べ頃を極短時間に凝縮する蕎麦打ちの技術にあった。
▼江戸東京そば 源
福岡県筑紫野市古賀695-2(地図を表示する)
092-923-6923
昼 11時30分〜15時
夜 18時〜20時
火曜定休
駐車場あり
JR鹿児島本線天拝山駅より徒歩15分

※福岡県筑紫野市地域編集長 河 蒸気の記事はこちらから読めます。